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北朝鮮の固体燃料コールドランチ式新型ICBMの衝撃

JSF軍事/生き物ライター
軍事パレードに登場した北朝鮮の新型ICBM(重野戦機動トラック型発射機)(写真:ロイター/アフロ)

4月15日、北朝鮮で故金日成主席生誕105年記念式典が行われ、軍事パレードで新型ICBMが登場しました。それはキャニスター(収納筒)に収められたもので、この事からコールドランチの固体燃料式であることが分かります。従来知られていた北朝鮮のICBMのKN-08やKN-14はミサイルを剥き出しに搭載したホットランチの液体燃料式であるのに比べて、着実に技術が進歩している事を見せ付けました。

  • コールドランチキャニスター(収納筒)の中にミサイルを入れ、圧縮ガスによって打ち上げて、空中で推進剤に点火して上昇する。
  • ホットランチミサイルを剥き出しで搭載し、その場で推進剤に点火して上昇する。

またパレードではSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の北極星1号(KN-11)のミサイル本体とこれを地上発射型に改造した北極星2号(KN-15)の自走発射機も登場。北極星もまたコールドランチの固体燃料式弾道ミサイルであり、北朝鮮は北極星の技術を発展させてICBMを開発したのでしょう。

そして新型ICBMは自走発射機が2種類ありました。16輪の重野戦機動トラック型のものと、単純なトレーラー牽引型のものです。トレーラー型は一般的なトレーラーと同じく舗装路の上しか移動できませんが、重野戦機動トラック型は野外の不整地でも走ることが出来ます。これまで確認されてこなかったトレーラー型が出て来たのは、16輪重野戦機動トラックが北朝鮮にとって数の限られた貴重なもので足りず、補完する為ではないでしょうか。この16輪重野戦機動トラックはKN-08が初めて登場した2012年の軍事パレードから知られていますが、中国製を不正輸入したものと推定されており、継続した入手が出来ずに複製の製造も進まなかったのだと思われます。

今回のパレードではKN-08長距離弾道ミサイルも登場したのですが、搭載する自走発射機が従来の16輪型ではなくムスダン中距離弾道ミサイル用の全長が短い12輪型のものに変更されていました。この事からも数の少ない貴重な16輪重野戦機動トラックを新型ICBMに回したのでは、と推測できます。

(※後に同ミサイルはKN-08ではなく新型の中距離弾道ミサイル「火星12号」と判明。ムスダンの性能が不安定で射程も足りないと判断されたと推測され、ムスダンに代わる後継ミサイルと思われます。)

北朝鮮のICBMが着実に進化を続け、即時発射可能な固体燃料式となったことはアメリカにとって大きな衝撃です。発射前に撃破することがほぼ不可能になったことを意味するからです。ただしこれら北朝鮮のICBMはまだ一度も試射をしておらず、兵器としての信用性はゼロのままです。ムスダンに付いてはあれだけ頻繁に発射試験を繰り返したにも関わらずICBMに付いては発射試験に慎重なのは、ICBMの試射はアメリカの先制攻撃を招きかねないと北朝鮮が理解している為でしょう。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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