南海トラフ地震で日本はどうなる!最大で死者32万人、避難者950万人の被害予想は想像を絶する
2024年1月1日に発生した、令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被害を受けられた皆様の安全と、1日でも早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。
元旦に起きた能登半島地震における被害の全貌は、2週間が経過した現在でもつかめていません。
さまざまな支援が行われていますが、支援の格差は状況によってどうしても発生してしまいます。
阪神淡路大震災時にも、救援物資が届かないもどかしさを筆者も経験しました。
能登半島地震発災後の現状を考慮して、防災士として南海トラフ地震を改めて考えると、想像を絶する被害想定に身震いしてしまいます。
南海トラフ地震の被害想定を改めて確認してみよう!
南海トラフ地震が発生した際の被害想定を、改めて確認してみると次のようになっています。
参考にしたのは、内閣府公式サイトにある「南海トラフ巨大地震編 被害想定の全体像編(2分28秒)」の動画です。
- 死者数:最大32万3,000人
- 全壊および焼失棟数:最大238万6,000棟
- 上水道:最大3,440万人が断水で使用不可能
- 下水道:最大3,210万人が利用困難
- 停電:最大2,710万軒
- 都市ガス:最大180万戸供給停止
- 固定電話:最大930万回線が通信不能
- 携帯電話:大部分の通話が困難
- 道路・橋梁等の破損:最大4万箇所
- 鉄道被害:約1万9,000箇所
- 港湾被害(係留施設):約5,000箇所
- 港湾被害(防波堤):126~135km
- 空港浸水被害:中部国際・関西国際・高地・大分・宮崎空港
- 帰宅困難者:京阪都市圏:660万人・中京都市圏400万人
- 避難者(発災1週間後):最大950万人
- 食料不足(発災後3日間合計):最大3,200万食不足
- 飲料水(発災後3日間合計):最大4,800万リットル不足
- 医療機能(入院):15万人が未対応
- 医療機能(通院):14万人が未対応
- 経済的被害:最大215兆円
死者数最大32万3,000人、火葬場の不足は確実
死者数は最大で32万3,000人との予想です。そうなると、ご遺体の火葬が間に合わないのは間違いないでしょう。
被災地域は上図の静岡県から宮崎県までに渡り、広範囲で震度6弱~震度7のゆれが予想されています。近畿エリアでは京都府と兵庫県の中部から北部地域、中国エリアでは岡山県と広島県の中部から北部地域が震度5弱以下なので、この地域の火葬場はかろうじて利用できる可能性があるといえます。
しかし、震度5弱でも必ず火葬場が無事とは限りませんし、火葬場までの搬送が問題となります。そもそも、大丈夫だった火葬場をフル回転しても、32万人以上のご遺体を火葬することは不可能といえます。
避難者最大950万人は阿鼻叫喚の世界といえる
南海トラフ地震による避難者数は、発災から1週間後に最大950万人と予想されています。
今回の能登半島地震では、1月14日時点の公表値で避難者数は1万9,014人と発表されました。東日本大震災時では約3万人といわれていますから、南海トラフ地震では東日本大震災の約317倍、能登半島地震と比較すれば約475倍にものぼります。
公的避難所自体が被災する可能性が高く、避難者の状況を考えると阿鼻叫喚の世界といっても過言ではないでしょう。
国のタイムラインでは発災直後からDMATや先遣隊の派遣が計画されている
これは2023年(令和5年)5月23日付の中央防災会議幹事会による「南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画」に記載されている「南海トラフ地震における各活動の想定されるタイムライン(イメージ)」です。
このタイムラインによると発災から1日目には、DMATや被災地内部の最大動員、広域応援部隊の先遣隊の派遣が計画されています。
被害想定と連動したタイムライン
タイムラインは被害想定を受けて計画されているため、被害状況に連動した計画となっているはずです。
しかしながら、今回の能登半島地震や先の東日本大震災でも分かったように「想定外の状況が必ず起きる」ことは明白でしょう。そのため、計画通りに行かないことも当然起こり得ます。
南海トラフ地震に備えるべく、我々は何をすべきなのか?
今回の能登半島地震や東日本大震災を教訓に我々は一体何をすべきなのか、防災士目線で考えてみました。
自宅の津波リスクを把握する
まずは南海トラフ地震が起きた際に、自宅が津波で浸水するのか確認します。今回の能登半島地震で報じられているように、30cmの津波でも命に関わる危険が生じます。
つまり、津波ハザードマップで着色されている地域は「0m~0.5m」であっても避難が必要です。
自宅の耐震化を把握する
1981年以前の建物は建築基準法が改正される以前の建物なので、耐震補強が必要ですが、全ての住宅が耐震補強を施している訳ではありません。高額な費用が必要なため、自治体の補助金で賄うことがむつかしいからです。
従って、耐震補強されていない住宅なら圧死しないように、住宅内に設置できる耐震シェルターの導入の検討をおすすめします。
何も落ちてこない、倒れてこない安全地帯を作る
1981年以降の建物であり新耐震基準を満たし、耐震等級1とみなされる住宅であっても地震時の工夫が必要です。
住宅の躯体がゆれに耐えても、建物内は地震のゆれによってシャッフルされます。そのため、家具の転倒防止は必須ですが、震度6弱以上のゆれなら大型家具や家電は倒れる可能性が非常に高いです。
そのため、寝室には大型の家具を置かず、天井の照明器具の真下から離れた場所をベッドスペースにするとよいでしょう。
つまり、睡眠中に地震が起きても「何も落ちてこない、何も倒れてこない安全地帯」を作ることが重要です!
自宅避難するのか、避難所に避難するか決めておく
地震と津波のリスクを把握して、自宅避難か避難所への避難かを決めておく必要があります。
とはいっても、同じ被災地域では避難所も倒壊して使えないケースや、避難路が破損して避難所に辿り付けないケースも考えられます。津波被害がないなら、車中泊避難やテント避難も考慮すべきでしょう。
避難状況の連絡が重要
自宅避難者や公的避難所以外に避難する方は、避難状況の報告が重要となりますが、これは、地域のコミュニティの強さで連絡先が異なるので要注意です。
つながりが強い地域は自治会の防災担当や役員などに、そうでない場合は自治体の危機管理担当課に、どこに何人避難していて、救援物資はどうすればもらえるか、自らが確認しないといけません。
待っているだけでは取り残されてしまうため、自らが率先してSOSを発信することが重要です。
最低限必要な防災グッズとは?最低3日分の水と食料の備蓄
潤沢な飲料水と食料、カセットコンロ、衣服、生活用品が備蓄できれば理想ですが現実としてはむつかしいでしょう。
先のタイムラインでは4日目以降には「市町村、避難所まで物資を輸送」となっています。そのため、最低限必要となるのは、3日分の飲料水と食料であるといえます。
自宅避難するなら、7日分の飲料水と食料の備蓄が推奨されます。逆に避難所に避難する方が、7日×家族分の飲料水と食料をリュックで持っていくのは不可能ですから、避難所に避難する場合は「安全に避難できるリュック一つ分の飲料水と食料」を確保しておきましょう。
トイレ問題は個人では限界がある!
今回の能登半島地震でも、被災地ではトイレ問題が深刻になっています。しかしながら、個人で用意できる携帯トイレや簡易トイレには数に限界があるため、今回の被災地の現状を教訓に行政側でさらなる拡充した取り組みが必要でしょう。
避難所の施設内に大型の浄化槽を設置するなど、防災公園の拡充を含めてハード面の整備が急務といえます。
まとめ
南海トラフ地震が想定通りなら、避難者は最大950万人にも達し想像を絶する状況が待ち受けています。
恐らく被災した自治体では、計画通りの避難支援はむつかしいでしょう。同時に広範囲が被災するため、避難所がどのようになるのか想像することさえできません。
先ずは自分と家族の命を守るために、自宅の災害リスクを正確に把握し、どこに逃げるのかを決めておきましょう。
そして、自宅避難するなら最低3日分、できれば7日分の飲料水と食料の備蓄が命を守る手段となるのは間違いありません。