民間競争11年目の「桜の開花予想」 平年より早い開花でも「人相似」とするために例年と違った花見を
民間競争の桜の開花予想
気象庁が半世紀以上予想を続けてきた「桜の開花」や「桜の満開」の予想を、「国として役目を終えた」として取りやめたのは、今から11年前、平成22年(2010年)のことです。
そして、この年から、予想はウェザーニューズ(千葉県美浜区)、日本気象協会(東京都豊島区)、ウェザーマップ(東京都港区)等の民間会社が行っています。
各社とも、独自の方法で、異なった桜の木を対象としていますので、精度の比較は難しいのですが、使いやすさや満足度などを含めた精度を競っています。
例えば、ウェザーマップによる3月4日(木)の予想(さくら開花予想)によれば、令和3年(2021年)の桜の開花は、平年よりかなり早い所が多い見込みとなっています(図1)。
気象庁ホームページには、「桜の開花」と「桜の満開」の観測方法が次のように記されています。
さくらの開花日とは、標本木で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日をいいます。
満開日とは、標本木で約 80%以上のつぼみが開いた状態となった最初の日をいいます。
(気象庁ホームページより)
なお、令和3年(2021年)1月からの生物季節観測の見直しで、観測方法が少し変わっていますが、大筋での説明は、この通りで昔も今も変わりません。
最も早く咲くのは、福岡で3月13日頃、長崎で3月15日頃など九州北部と予想されていますので、来週末には桜の開花に関するニュースが聞かれそうです。
開花の予想日
3月13日頃 福岡
3月15日頃 長崎
3月17日頃 東京、広島、松山、高知、下関、熊本
桜の開花は、冬に一定期間低温にさらされることで、「休眠打破」という現象がおき、その後の気温上昇によって花芽が急成長します。
今年の冬は、たびたび非常に強い寒気が流れ込みましたが、11月の気温がかなり高かったため、「休眠打破」による開花の加速はあまりないと考えられます。
しかし、2月は気温がかなり高く経過し、この先3月にかけても気温が高い状態が続く見込みで、「休眠打破」による加速がなくても開花が平年より早いと考えられるのです(図2)。
福岡、東京、仙台の日々の最高気温の予報をみると、今週末は北日本を中心に寒気が南下してきますが、そのあとは気温が高めに推移する見込です(図3)。
福岡と東京の16日先までの天気予報
福岡の16日先までの天気予報をみると、桜の開花予想日である3月13日は、降水の有無の信頼度は、5段階で一番低いEとなっていますが、お日様マーク(晴れ)と、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)です(図4)。
翌14日は、お日様マーク(晴れ)で、降水の有無の信頼度が5段階で一番高いAです。
福岡の来週の週末は、桜の開花を探して散策するのに適した天気になりそうです。
ただ、その後は、傘マーク(雨)と黒雲マーク(雨の可能性が高い曇り)の日が続く予報です。
菜種梅雨のような天気の中、満開予想日の22日に向かって開花が進みそうです。
新型コロナウィルスに対する緊急事態宣言は、福岡県では2月28日に解除となりましたが、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県では3月7日まで継続の予定でした。
しかし、3月5日、病床の逼迫状況の改善が不十分だとの判断から、3月21日までの2週間の延長となっています。
東京で桜の開花予想日の3月17日は、福岡と同じく、降水の有無の信頼度は、5段階で一番低いEとなっていますが、お日様マーク(晴れ)と、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)です(図5)。
東京も、福岡と同じく、桜の開花を探して散策するのに適した天気になりそうです。
そして迎える次の週末は、傘マーク(雨)と黒雲マーク(雨の可能性が高い曇り)の日が続き、週明けが、緊急事態宣言が解除予定の3月22日です。
劉希夷の「代悲白頭翁」
中国・唐の劉希夷が詠んだ「代悲白頭翁」という詩は、人生のはかなさを白髪の老人の嘆きにたとえて有名ですが、その一節に次のようなものがあります。
古人無復洛城東
今人還対落花風
年年歳歳花相似
歳歳年年人不同
ここでいう「花」とは桃の花のことですが、日本では桜の花として多くの人に感銘をあたえてきました。
ただ、毎年美しい花は同じように咲きますが、「歳歳年年人不同(花を見る人々は毎年変わっている)」という7字は、今年に関しては、意識して「歳歳年年人相似(花を見る人々は毎年同じように)」の7字にしなければならないと思います。
新型コロナウィルス禍にある現在、桜が咲いたからといって、例年のような花見を行うと、感染がひろがり、長引いて身近な人がどんどん亡くなる可能性が高くなります。
その結果、来年の桜の季節、桜が咲いても一緒に花見をしたい人がいなくなってしまう恐れがあります。
今年、令和3年(2021年)の花見は、間隔をとって密を避け、マスクをしてゆっくり歩きながら鑑賞するなど、例年とは違った花見にしてください。
それが、来年、令和4年(2022年)の「昨年は大変だったね」という話がもりあがる宴会につながると思います。
図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。