硫黄島に自生している珍しいキダチトウガラシ 硫黄島唐辛子を育ててみた 珍しい島とうがらしの栽培
硫黄島唐辛子とは
硫黄島唐辛子(いおうとうとうがらし)は日本の硫黄島(いおうとう)に自生している野生の島唐辛子です。
硫黄島は東京都から南に約1200km離れた太平洋上に位置する絶海の孤島ですが、住所としては東京都の小笠原諸島に属しています。
植物の分類学的には硫黄島唐辛子は木立唐辛子(キダチトウガラシ)の一種です。
木立とは樹木のように立ち上がると言う意味で、成長すると幹は樹木のように固く太くなり背丈も2m近くにまで成長します。
野菜の唐辛子は普通は1年草として育てますが、硫黄島唐辛子は冬の最低気温を10度以上、植え付けた土の最低温度(地温)を15度以上に保てれば多年草として何年も枯れずに成長を続けます。
自生地の硫黄島では多年草の雑草のように他の植物に混じって生えているとのことです。
硫黄島は第二次世界大戦以前は民間人が住んでいた事もあり、当時は島民の人々は島に生える硫黄島唐辛子を香辛料として利用していたとの事です。
第二次世界大戦が始まる頃に硫黄島から小笠原諸島に疎開した人々と共に小笠原諸島にも移植され、現在では小笠原諸島でも道端などに半野生化して生育しているようです。
実はとても小さいですが激辛です。
実の中に含まれる辛味成分に触れた時には石鹸などで直ぐに良く洗い流したほうが良いです。
但し、実を傷つけなければ中の辛味成分は外には出て来ませんので、実の表面に触れる程度では何ら心配はいりません。
尚、この硫黄島唐辛子も島とうがらしと呼ばれることもありますが、島とうがらしと言う呼び方は離島に生える(または古くから栽培されている)唐辛子と言う意味であり、特定の種類を指す言葉ではありません。
島とうがらしで有名なのは同じ木立唐辛子の仲間である沖縄の島とうがらしですが、実の大きさや特徴、植物地上部の大きさや形などの違いから、硫黄島唐辛子と沖縄の島とうがらしは明らかに違う種類の木立唐辛子だと思われます。
硫黄島唐辛子を栽培する
栽培するには種子を入手する必要がありますが野菜や草花の種子を販売する種苗会社では残念ながら扱っていないようです。
自生地の硫黄島には現在でも民間人は行く事が出来ませんが、もう一つの自生地である小笠原諸島には行くことが出来ますので、観光などで訪れた際に入手して持ち帰るという方法はあります。
硫黄島唐辛子は保護種ではありませんし外来種にも指定されておりませんので自生地から持ち帰ること自体に問題はありません。
熟した硫黄島唐辛子の実が入手できれば、この実から種を採取して蒔くのが良い方法です。
極稀にインターネット通販などで種子や乾燥した実が販売されている事もあるようですので、これらを利用することも出来ます。
硫黄島唐辛子は実がとても小さいので中に入っている種子の数も少なく、小さな実だと1個、大きな実でも10個ほどという事が多いです。
熟した実の種子は一度完全に乾燥させると種子の中で発芽の準備が整う(種子が休眠打破する)との事で、取り出した種子は良く乾燥させます。
硫黄島唐辛子の種まきと発芽に関する参考事項
- 種を一度乾燥させると発芽しやすくなる
- 実に含まれる辛味成分は発芽を抑制する作用がある
- 蒔く前に乾燥した種を水に浸し水分を含ませると発芽しやすくなる
- 実を鳥が食べて糞と共に排出された種は発芽しやすい
- 弱酸性の環境を好む
- 発芽には微弱な光が必要
- 種の発芽には30度程の温度が必要
- 発芽時は1日の中で温度が変化する変温環境を好む
実に含まれる辛味成分は発芽を抑制しますので良く洗い流してから蒔くようにします。
種子を指先に乗せて水を付けながら指で挟んで揉むようにして洗います。
指先には辛味成分が付着しますので種子を洗い終えたら直ぐに指や手は石鹸で念入りに洗いましょう。
種を洗ったら半日から一日くらい水に付けておいてから蒔くと発芽率が良くなります。
種を蒔く用土はホームセンターなどで販売している培養土で大丈夫ですが、硫黄島唐辛子は酸性の用土を好みますので弱酸性の用土を用意すると良いでしょう。
酸アルカリはpH(ペーハー)と言う単位の0〜14までの数値で示し、中心値のpH7は中性、7より小さい数字だと小さいほど酸性が強く、大きい数字だと大きいほどアルカリ性が強いと言う意味です。
上の写真の用土はpH6.5プラマイ0.5ですからpH6〜7と言う事で中性からやや酸性と言うことになります。
蒔く時は湿らせた用土の上に種子を一粒づつ間隔を開けて置いていきます。
硫黄島唐辛子の種子の発芽には極微弱な光が必要との事ですので種子を深く埋めてしまわないようにします。
用土の表面に種子を置いてから、種子の上にごく少量の乾いた用土を振り掛ける程度で大丈夫です。
蒔いた種子が流れやすいので水やりは霧吹きで行うか、鉢の受け皿に水を入れて用土に吸い上げさせる腰水灌水で行います。
唐辛子は本来発芽しづらく、発芽まで時間が掛かる植物と言われていますが、野菜として改良がなされていない硫黄島唐辛子はその特徴が顕著です。
とにかく種を蒔いたら温度を高く保ち気長に待つしかありません。
時には蒔いてから数カ月後に発芽する、などという事も稀ではありません。
硫黄島唐辛子の発芽は、一日の中で気温が変化する変温環境にすると発芽しやすくなると言うデータもあるようです。
例えば夜は気温25度だが日中は気温35度などという環境でしょうか。
南国育ちの硫黄島唐辛子はとにかく高温環境を好みますが、一度発芽してしまえば比較的環境順応性が高く、栽培はそれほど難しくはありません。
植木鉢やプランターで比較的簡単に栽培ができます。
本葉が4枚〜6枚ほど出たところで植え替えします。
硫黄島唐辛子はとにかく背が高く育ちますので、安定性のある大きめの植木鉢に苗を1本づつ植えるのが良いと思います。
関東地方での栽培を例に取れば5月頃に種まきして発芽した苗が順調に育てば夏の終わりの9月頃には花が咲き実が成り始めます。
キダチトウガラシの仲間である硫黄島唐辛子の実の成り方は、枝の分岐点にまばらに付くといった感じで木の枝にまんべんなく実ります。
硫黄島唐辛子の実には脱落性があります。
赤く熟した実はしばらくすると自然に柄から離れて落ちてしまいます。
このあたりも野菜として栽培されている普通の唐辛子とは違うところです。
実を収穫したいなら赤く熟したら脱落前に取るのが良いでしょう。
栽培時に注意する点は、とにかく背が高くなりますので、特に植木鉢での栽培は、風などで倒れないよう安定した状態で植えることです。
唐辛子らしからぬ風防と珍しい植物と言う事もあり、グリーンインテリアとして育ててみるのも楽しいものです。
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