東京の下町、両国・錦糸町・亀戸エリアで未来派コンパクトマンションが続出。なぜ?
東京23区のうち「城東エリア」と呼ばれるのが、中央・江東・台東・墨田・葛飾・江戸川の6区。江戸時代から多くの人が住んでいた場所で、現在も下町のイメージを残しているところが目立つ。
1年ほど前から、この古き良き東京の風情を残す城東エリアに、これまでにない工夫を凝らした最先端マンションが次々と登場するようになった。最先端の工夫を採用するのは、1人暮らしや2人暮らしを対象にしたコンパクトマンション。分譲でも賃貸でも先進のコンパクトマンションがつくられているのだ。
特に最先端コンパクトマンションが目につくのは、JR総武線の両国・錦糸町・亀戸の3駅。なぜ、生粋の下町エリアが未来派マンションのメッカになっているのか。理由を探った。
つくりのよいコンパクトマンションが続々誕生
両国・錦糸町・亀戸の3駅は、下町のイメージが強いが、東京スカイツリーの膝元でもある。スカイツリーのモダンなフォルムにマッチする未来派マンションには、次のような事例がある。
まず、錦糸町駅近くに三井不動産レジデンシャルがこの4月、「パークアクシス錦糸町スタイルズ」を完成させた。シェアキッチンや家具のサブスクリプションが付くなど、これまでにない工夫を備えた賃貸マンションだ。
住戸内にキッチンを設けず、居室部分を広げる。居室内で使う机や椅子はサブスクリプションで利用でき、共用のオープンダイニングでは、テーマで選べる朝食や栄養バランスに配慮した夕食がそれぞれワンコイン未満で提供される。
また、共用部にリモート会議用の個室やブース席などが用意され、テレワークにも対応。1人暮らしで問題になりやすい「食事」と「テレワーク」をスマートに解決するマンションになっている。
亀戸駅では、三菱地所レジデンスが賃貸マンションの「パークハビオ亀戸」を建設中だ。このマンションについては、「ついに学生向けも。23区内に続々登場するwithコロナ対応賃貸マンションの斬新さ」でも紹介した。簡単にいうと、限られた居住面積を少しでも広げようと、システムキッチンと洗面台を融合させたり、浴室の代わりにシャワースペースを設ける、というもの。これも画期的な工夫だ。
また、両国駅では、昨年3月に賃貸マンションの「ブランシエスタ両国」(長谷工グループ)が完成している。これは、入居者専用のフィットネスルームを備え、1LDKタイプは3つの内装スタイルを提案。ワンランク上の住み心地を提供する賃貸マンションになっている。
分譲マンションでは、「サンウッド錦糸町フラッツ」(昨年夏に竣工、すでに完売)や、両国駅近くでこれから販売が始まる「オーベルアーバンツ両国」(大成有楽不動産)がある。いずれも、1LDKであってもシューズインクローゼットやウォークインクローゼットといった大型収納が付き、小さな物入れも多く設置されて収納が充実。「オーベルアーバンツ両国」は、高速インターネットの「NURO光Connect」をいちはやく導入し、浴室にミストサウナ、リビングにガス温水式床暖房を標準設置するなど、設備仕様のレベルが高い。
これまでのコンパクトマンションよりも格段に工夫が多いのだ。
独特の立地特性が凝ったマンションを生む理由か
なぜ、両国・錦糸町・亀戸の3駅周辺に、最先端の工夫を採用したり、設備充実のコンパクトマンションが続出するのか。その理由は3駅の立地特性にありそうだ。
両国・錦糸町・亀戸の3駅は、同じJR総武線の沿線。そして、東京駅に近いのも共通する特徴だ。
最も近いのは両国駅で、東京駅から約3キロ圏。最も遠い亀戸駅でも、東京駅から約7キロ圏だ。
東京の中枢部に近いのだが、港区の南青山や千代田区の番町エリアのように、「いつかは住んでみたい」と憧れを集める場所というわけではない。
おかげで、東京駅から近いのに地価が安く、家賃や分譲マンション価格の相場は抑えられている。
賃貸の1Kタイプならば新築マンションでも月額家賃は10万円前後。新築分譲マンションの1LDKは3000万円台、4000万円台で購入可能となる。
便利な都心部で、そのくらいの価格水準の物件を探している、という人は多いのではないか。まさに、理想的な場所……と言いたいのだが、ここで問題になるのが、エリアのイメージ。現実的に東京駅まで近く、便利な立地なのだが、下町のイメージが強い。
両国駅には、全国的に名前が知られている施設として、大相撲が行われる国技館と江戸東京博物館がある。そこから、街並みが古いのではないか、よそ者が溶け込みにくい街ではないか、と思ってしまう人もいる。
実際の両国・錦糸町・亀戸の3駅周辺は他の23区内駅周辺と変わらない。しかし、街のイメージで敬遠する人もいるため、地価や不動産価格が抑えられている側面がある。
地価が抑えられているので、1Kや1LDKの賃貸マンション、分譲マンションを抑えた価格で提供できる。
この状況は、不動産会社に2つの動きを促す。
1つは、最新の工夫を積極的に採用したり、設備仕様のレベルを上げて、マンションのイメージアップを図ろうとすること。建物を最新式にすることで、エリアに生じがちな「古い」イメージを吹き飛ばそうとするわけだ。
最新の工夫を凝らすと、当然ながら建物にお金がかかる。しかし、地価が抑えられている場所なので、建物にお金をかける余力がある。
つまり、建物にお金のかかる工夫を採用しやすい……それが、2つめの動きだ。
コンパクトマンションが建設されやすい事情も
両国・錦糸町・亀戸は東京駅に近い都会であるため、ビルが建て込む場所が広がっている。そのため、再開発でもない限り、大型のマンション用地は出にくい。マンションやビルの建て替えで、10階建て程度の中規模、小規模のマンションが多くなる。
規模の小さいマンションは1Kや1LDKのコンパクト住戸で構成されることになりやすい。それも、両国・錦糸町・亀戸の立地特性である。
以上が、両国・錦糸町・亀戸に最先端のコンパクトマンションが続々登場する理由。まとめると、次のようになる。
3駅周辺では抑えた価格のマンションを提供できるが、街に魅力を感じない人がいる。だから、魅力を感じてくれるように建物に最先端の工夫を凝らす。
そして、実際はビルが建て込む都心部なので、コンパクトマンションが増える。
だから、両国・錦糸町・亀戸には先進的なコンパクトマンションが続出している、というわけだ。
今増えている先進的コンパクトマンションが注目を集めれば、やがて両国・錦糸町・亀戸の評価は改まるだろう。エリアの人気が高まれば、不動産価格が上がる可能性も……。
新しい動きが出はじめの今が、未来派の賃貸マンション・分譲マンションの借りどき・買いどきなのかもしれない。