ついに学生向けも。23区内に続々登場するwithコロナ対応賃貸マンションの斬新さ
今、不動産会社が運営する賃貸マンションに新しい工夫が次々に登場。「顔認証のオートロック」のように分譲マンションでも珍しい設備を導入している賃貸物件が増えている。
工夫を凝らした賃貸が目立つようになったのは、昨年から。「withコロナ」の生活が模索され、都心の1人暮らしでも家で過ごす時間が増えたことや在宅ワーク・リモート授業が増えたこと、宅配物が増えたことなどが原因だ。
不動産会社が大家さんとなる賃貸マンションは23区内に立地するものが多く、その分、家賃は高め。1人暮らし向け1Kで10万円を超える家賃となりがちだ。一般的な賃貸より家賃設定が高いので、差別化を図るため、時代にマッチした工夫を積極的に採用する傾向が強い。だから、コロナ禍の今、東京23区内で斬新な賃貸物件が増えている、という側面もある。
では、「withコロナの生活にマッチした工夫」にはどんなものがあるのか。
そして、この春から東京での1人暮らしを始める新大学生にも手が届く家賃設定の物件はないのか。
東京23区内・賃貸マンションの新しい動きをレポートしたい。
分譲マンションにもない、最先端の工夫を採用
まず紹介したいのは、2021年2月に完成した「ウエリスアーバン中野坂上」。NTT都市開発が運営する賃貸マンションで、家で仕事や勉強をしやすく、1人暮らしの安全性を高める工夫を盛り込んでいる。
エントランスのオートロックには顔認証システムを採用し、ラウンジにはWi-Fi環境を整えたコワーキングスペースを設置。各住戸の玄関錠は次世代対応のスマートキーで、スマートフォンのBluetooth接続で開閉される。また、宅配業者や来訪者にオートロック解錠と玄関の錠を開ける暗号キーをスマホで送ることもできるなど、設備レベルの先進性は分譲マンションを凌いでいる。
1年前に完成した「ウエリスアーバン中野坂上」は、コロナ禍に対応する賃貸マンションの先駆けとなり、以後、東京23区内では顔認証のオートロックやコワーキングスペースを備え、宅配物を受け取りやすい賃貸マンションが増加してきた。
しかし、23区内に登場する賃貸マンションの工夫はそれだけではない。次に紹介したいのは、限られた住戸面積をより広く活用する工夫……三菱地所レジデンスが建設中の賃貸マンション「パークハビオ亀戸」に導入される予定のRoomot(ルーモット)プランだ。
上の写真で右手側にあるシャワースペースが「Roomot Shower(ルーモット・シャワー)」で、浴室を設けるよりも狭いスペースで設置が可能。そして、写真中央のキッチンは「Roomot MIXINK(ルーモット・ミキシンク)」と命名されており、シンク(流し)が洗面台を兼用。洗面台としても使いやすいよう、鏡が付いている。
浴室と洗面所のスペースを節約し、その分居室面積を拡大させることができるもので、従来7畳ほどだった1K住戸の居室空間を9.3畳に拡大させることが可能という。
2.3畳分のスペースが増えることで、デスク、椅子、書類棚などを設置しやすい。つまり、在宅ワークやリモート授業に対応しやすくなるわけだ。
以上2物件は、大学生でも借りることができるが、メインターゲットとなるのは社会人の単身者である。
これに対し、一部の棟を明確に「学生向け」とする大規模賃貸マンションがこの2月、23区内に完成した。
「マンションのことなら〜」のテレビCMで知られる長谷工グループが運営する「コムレジ赤羽」だ。その工夫は、さらに進んでいる。
カフェテリアの食事は平日朝夕で1ヶ月2万2000円
「コムレジ赤羽」は東京都北区に建設され、総戸数は340戸。賃貸マンションとしては極めてスケールが大きい。参考までに、分譲マンションでは総戸数が200戸を超えると「大規模」と呼ばれることが多くなる。
340戸は学生棟(112戸)、社会人棟(168戸)、賃貸棟(60戸)の3つの棟に分けて中庭を望むように配置。学生棟と社会人棟は、キッチンと洗濯機置き場を住戸内に設置せず、住戸内をフルに活用できるプランニングだ。
キッチンは各フロアに設けられる「キッチン付きシェアルーム」を使用する。
ほかに、中庭に面したカフェテリアで食事することもでき、学生棟居住者は平日朝夕食利用で月額2万2000円を家賃とは別に支払えばよい。学生以外でも利用できる単独メニューもあり、こちらは朝食600円程度、夕食800円程度をそのつど支払う。
洗濯は各フロアに配置されているランドリールームを利用。コインランドリーのような施設だが、洗濯乾燥機は無料で使用できる。
ほかに、コミュニティラウンジやフィットネスルーム、ゲストルーム(親が泊まることができる)などが共用部に設けられている。
カフェテリアやフィットネスルームを大勢で利用したら、「密」が心配になる。そこで、「コムレジ赤羽」では、スマホのアプリで共用施設の混雑状況を確認できるようにしている。
「建物環境モニタリング技術(CO2センサーなど)」を採用し、建物内の換気を適正に行うといった最先端技術も備えられる。
密にならない状態で食事や運動ができ、それらを通しての交流の機会と楽しみを残しているわけだ。
「コムレジ赤羽」では各共用施設と中庭で他の居住者とふれあうことができ、随時開催されるイベントにも参加できる。
コロナ禍で、人と人との結びつきの大切さを改めて実感した人は多い。その「結びつき」を安全につくり出す賃貸住宅になっている……この発想が何より新しい。
セキュリティに関する工夫も最先端のものに
一方で、「コムレジ赤羽」では、セキュリティに関しても最先端の工夫が採用されている。
エントランスのオートロックは顔認証で解錠される。マスクをしたままでも認識されるようになっているので、手間がかからない。コロナ禍で広まる非接触方式を進化させているわけだ。
学生棟では、エレベーターも顔認証で利用する。エレベーター前に設置されたカメラが居住者を確認してエレベーターを呼び、扉が開く。そして、自分の住戸があるフロアに停止する。
「コムレジ赤羽」の学生棟には女性専用フロアもあり、エレベーターは自分の住戸があるフロア以外停止しない。オートロックに加え、エレベーターでもセキュリティが高められている。
ちなみに、学生棟では、居住者以外が住戸に入ることを禁止している。親としても安心だろう。
このほか、コロナ禍で増える宅配物は、顔認証により着荷を音声で教えてくれるシステムも採用される。
さらに、「コムレジ赤羽」では、自然災害への対策も最先端となる。
気象情報や地震情報をアプリで確認でき、災害時には事前に登録した家族に安否情報が発信される、といった工夫が採用されるのだ。
建物は基本的に頑丈な鉄筋コンクリート造なので、そのことの安心感も大きい。
月額家賃は、8万円からの設定
最先端の工夫を凝らした「コムレジ赤羽」学生棟の家賃は、月額8万円から9万5000円で、別途共益費が月額1万円、電気代7000円で、合計9万7000円から、となる。
日本政策金融公庫が毎年発表している「教育費負担の実態調査」令和3年度版では、東京の大学に通う自宅外通学の大学生への仕送り額は平均で1年間に約96万円。1ヶ月あたり約8万円だ。他の調査では、1ヶ月あたり12万円という結果もあるので、月に8万円から12万円が平均的な仕送り額といったところだろう。
そのうち家賃に費やすことができるのは、6万円から10万円くらいか。そこから計算すると、「コムレジ赤羽」の学生棟は誰でも入居できる家賃設定とはいえない。一部の学生に手が届く家賃水準だろう。
それでも、社会人棟住戸の家賃・共益費・電気代の合計が12万7000円からであることと比べると、学生棟の家賃は抑えられている。
新大学生にとっては、なんとか手が届く、東京23区内の夢の住まい、というべきか。