3LDKの半額で買える新築マンション1LDK、シニアを含むシングル女性に人気上昇
横浜市内で9月から販売開始されたマンションで、用意された6戸の1LDKが早々に完売。3倍で抽選になった住戸もある。
価格は4000万円台と5000万円台なので、ものすごく安かったわけではない。
それでも、駅から徒歩2分で3つのスーパーマーケットに近い便利な場所であり、1LDKとはいえ約51平米とゆったりしていて、収納スペースが充実している。そして、全戸宅配ロッカー付きだし、省エネ性能が高い「ZEH-M Oriented」でセキュリティも強固であるなどシングル女性に好ましい条件がそろっていた。
このマンションの名前は、「ブランシエラ横浜瀬谷」。相鉄線瀬谷駅から徒歩2分の場所で、建物が完成してから販売が開始された新築分譲マンションだ。
同マンションの1LDKは51平米の広さがあったので、5000万円を超える住戸も生じたが、他のマンションで30平米台、40平米台の広さであれば、1LDKの販売価格はもっと安い。
たとえば、東京23区内の「パークホームズ浅草橋」では約31平米の1LDKが4120万円からの価格で販売され、千葉県の「ウエリス南行徳駅前」では、駅から歩いて2分の1LDKが2998万円からの設定。3LDKの半額程度で購入できる1LDKが多い。
今、首都圏では、シングル女性に魅力的と思われる新築分譲マンションが続々登場している。
ここまで取り上げた事例は、私が定期的に調査し、発表している「マンション人気指数」の最新版で人気マンションと認定された物件。そのなかでも、シングル向けの1LDKを用意している(一部、完売してしまったマンションを含む)物件のものだ。
今、人気を集める新築マンションには、3LDKだけでなく、1LDKも購入可能なケースが多い。そのなかには、シングル女性にとって魅力的な事例が目立つということが今回調査で明らかになったのである。
指数調査で浮かび上がった人気マンション
「マンション人気指数」は、全国の新築分譲マンションを対象に調査を行い、年4回公表し続けている私の独自データである。
最新調査では、今年7月から9月までの販売中マンションを対象に、資料請求数と販売センターへの来場者数を調べて「人気指数」を算出。人気マンションと認定された全国の物件リストと計算方法は私のオフィシャルサイトの記事独自調査で注目物件が判明 全国新築マンション「人気指数」 2024年7月〜9月で大きな動きがわかったで詳しく説明させていただいた。
その概要を説明すると、次のようになる。
今年7月から9月に販売された新築分譲マンションで、人気が高かった物件を集めたら、全国で115物件あった。
そのうち、極めつきの高人気マンションと判定されたのが、以下の5物件。
1位 ブランズ白金台五丁目(東京都港区・人気指数9.0)
2位 プレミスト世田谷梅丘(東京都世田谷区・人気指数7.9)
3位 プレミスト代々木大山(東京都渋谷区・人気指数7.0)
4位 ローレルコート近鉄奈良ザ・レジデンス(奈良県奈良市・人気指数6.8)
4位 Brillia 西宮北口 The Residence(兵庫県西宮市・人気指数6.8)
いずれも総戸数が50戸未満の小規模マンションだった。そのなか、総戸数522戸の大規模で「人気指数3.5」となった物件がある。戸数規模の大きさからすると、驚異的な人気物件と評価されるのは、東京の都心部で分譲されている「リビオシティ文京小石川」だ。
同マンションは定期借地権方式を採用している。いわゆる定借マンションだ。最新のマンション事情をよく知らない人は、「定借マンションは2割以上安い」と考えがちだが、それは以前の話。現在、都心部で分譲される定借マンションは、「納得感のある価格で、建物の質を高める」方向で開発されている。
結果として投資家向きではなく、自ら住む目的でマンションを購入する実需層向きとなる。その実需層向き定借マンションが高人気になっている……これは注目すべき現象だろう。
隠れた人気物件が浮かび上がる調査結果
マンション人気指数の調査を始めたのは2011年夏から。東日本大震災の影響を調べることが目的だったが、年に4回(3回のときもあった)続けているうちに、市況の変化を読み取る装置にもなっていることが分かり、以後、ずっと続けている。
今回調査でも、いくつか新しい動きが判明。そのひとつが、都心の定借マンションが注目されているということ。そして、首都圏新築マンションに1LDKが増えており、そのなかには1LDKが勢いよく売れるケースがある、ということだった。
首都圏では2015年以降、新築分譲マンション価格が上がり、現在は東京23区内なら1億円以上、首都圏全域では平均8000万円ともされている。が、1億円以上とか平均8000万円というのは、「70平米3LDK」に換算した推定価格。40平米前後の1LDKであれば、もっと安く販売される。4000万円台で販売されるケースが多く、なかには3000万円台の1LDKもみつかる。
3000万円台ならば、シングル女性にとって好ましい価格帯だ。しかし、4000万円以上は高すぎる……そう考えるシングル女性はこの数年、中古マンションを積極的に探していた。
しかし、中古マンションも値上がりを続け、安い物件は省エネやセキュリティの面で劣るケースが多い。さらに、築20年以上になると、35年の住宅ローンを組みにくいという問題もある。
住宅ローンを組むことができない、もしくは貸してくれる金額が少なく、返済期間が短くなると、住宅ローン控除のうま味が減る(もしくはなくなる)。それはシングル女性にとって、マイホームを買う楽しみがひとつ減ることを意味する。
できることなら、新築マンションの1LDKを買いたい。それも、省エネで防犯性能を高めた高機能マンションを……。その願いを叶える新築マンションが都心部だけでなく、郊外部でも増えだした。
個々の物件を取材してみると、郊外で、駅から歩いて10分程度のマンションでも1LDKの住戸が販売され、それを購入するシングル女性がいることがわかった。
さらに、70歳以上のシングル女性が新築マンション1LDKを購入するケースにも出会った。シニアのシングル女性は部屋の広さや収納の多さを重視する傾向が強く、広めの1LDKでその分価格が5000万円を超える物件も厭わない。
「1LDKを買うシングル女性」の幅が広がっているわけだ。
この動き、物件取材、購入者取材を重ねることで、引き続き追いかけて行きたい。