西丹沢の事故は防げたか
神奈川県西丹沢のキャンプ場で、痛ましい事故が起こりました。報道によると、鉄砲水が起きた可能性が強いようですが、事故当時の周囲の状況を見ると、時間雨量は丹沢湖で22.5ミリ、また事故現場に近い上流の神奈川県の雨量計も40ミリ程度で、集中豪雨が起きたというほどの雨量ではありませんでした。
ただ、時間雨量と言っても実際には数十分で降った可能性が高いので、単純に時間雨量だけでは当時の状況を推し量ることは出来ません。
入れ物が大きければ、一気に水を流してもなんでもないでしょうが、入れ物が小さければ少量の水でもあふれてしまいます。
この場合、入れ物に相当するのが河川ですが、今回の河内川も川幅が狭く、テレビの映像で見た感じでは数メートルしかないようでした。
この川幅の狭さが、今回の事故の一因だったのは間違いないでしょう。
いまから15年前、神奈川県玄倉川で、キャンプ中の人々が中州に取り残されてテレビカメラの前で次々と流されるというショッキングな事故がありました。
実はこの玄倉川は今回の事故現場の隣の河川で、やはり川幅が狭く、増水しやすい河川です。玄倉川事故の場合は、ダムの放流というアクシデントが加わりましたが、上流の大雨が原因という事では今回の事故と似ていると思います。
砂利がある所は川の中
報道によると今回の事故の場合、車で避難途中に増水した川を渡ろうとして流されたとのことです。キャンプをしていたテントは、そのまま残っていたわけですから、結果論ですがそのままテントに残っていたら、事故に遭わずに済んだかもしれません。
しかし、おそらく現場では急激に河川が増水(普段は15センチくらい⇒70センチ以上)し、しかも暗闇の中、激しい雨が降っていれば、その場から離れようとするのは当然の行動だとも思えます。
こうした場合、我々はどう考えたらよいのでしょう。私にはこうした方が良いという答えがありません。
ただ、昔からの知恵で言えば、「君子危うきに近寄らず・・ 」という行動原理は、気象災害を防ぐ上では有効だと思います。気象関係者は「早めに避難を」と呼びかけますが、実は激甚な気象現象の中に身を置かないようにすることが、気象情報の役割なのです。
よく言われることですが、情報には価値はありません。その情報をどう利用したかで価値が生まれるのです。気象情報も、「大雨情報」を知っただけでは、何の意味もありません。その情報によって行動を変えてこそ初めて価値が生まれます。
今回の事故でもう一つ気になった事ですが、キャンプ場の立地です。河川に近いキャンプ場では、砂利の多い所と土の所が混在しています。砂利の多い所は、いまは水が無くても昔は水が有ったか、増水すれば水がやってくるところです。河川に近いキャンプ場に行かれる方は、「砂利のあるところは川の中」という認識をお持ちいただきたいと思います。そこは大雨が降れば、すぐに濁流に変わる危険な場所でもあるのです。