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なぜ日本代表に久保建英と堂安律が必要だったのか?柴崎のパスミスを責めているだけではダメな理由。

森田泰史スポーツライター
日本対サウジアラビア(写真:ロイター/アフロ)

厳しい現実を、突きつけられた。

カタール・ワールドカップ向けたアジア最終予選、グループステージ第3節で、日本代表はサウジアラビア代表に0−1と敗れた。アウェーの一戦だったとはいえ、日本としては何としても勝ち点をもぎ取りたい試合だった。

この結果、グループBは、全勝のオーストラリア(勝ち点9)とサウジアラビア(勝ち点9)が1位と2位に位置している。それを日本(勝ち点3)、オマーン(勝ち点3)、中国(勝ち点3)が追う展開だ。

「2強化」してきているグループで、ストレートインの2位以内に入るのは、難しくなってきている。プレーオフ権獲得の3位の座を、現実的に意識しなければいけないかもしれない。

■一本のパスミス

サウジ戦では、失点に絡んだ柴崎岳のパスミスが大きくクローズアップされた。

無論、ミスはミスである。ただ、この試合、柴崎と遠藤航のダブルボランチの距離感は悪かった。とりわけ、後半に入ってからは、柴崎が居心地悪そうにプレーしている場面が目立った。

(日本のダブルボランチの距離感)

柴崎は、中盤で、ドリブルでグッと前に運んでいくタイプの選手ではない。故に、彼と吉田麻也のところ、右センターバックと右ボランチがサウジアラビアのボールの奪い所になった。

ドリブルする原口
ドリブルする原口写真:ロイター/アフロ

柴崎は長短のパスを織り交ぜて展開するタイプである。つまり、彼のボールロストが多かったというのは、パスの出し所がなかったという証左でもあるのだ。

結論から言えば、日本代表に、久保建英や堂安律が欲しかった。もちろん、久保や堂安がいれば、あの柴崎のパスミスがなかったのだとは言わない。それほど単純な話ではない。だが柴崎を戦術的な意味でプロテクトするという観点から語らなければ、森保ジャパンはまた同じ過ちを犯すだろう。そのミスをするのが柴崎なのか、吉田麻也なのか、冨安健洋なのかという違いでしかない。

■ライン間でのプレー

久保と堂安の不在で、日本にはライン間を巧みに使える選手がいなかった。

鎌田大地が幾度か顔を出していたが、思うようにそこにパスが刺さらなかった。鎌田自身、ボールが欲しくて下がっていくシーンが徐々に増えていった。

そうなると、鎌田以外にライン間を使う選手がいない。久保や堂安の不在感は、そういったところから感じられた。

(ライン間で受ける鎌田)

ライン間に人が立つ意味――。それを、森保ジャパンは考えるべきである。

ボールが入れば、相手の守備陣は圧縮する。一旦まとめて、散らす。かくして、効果的なパス回しができるようになる。

(相手守備の圧縮)

では、ボールが入らなければ、どうなるのか?それでもいいのだ。人が立っていることで、相手守備陣は警戒する。絞らざるを得なくなる。すると、サイドが空いてきて、そこからの攻略が可能になるのだ。

(ライン間に人が立つ場合)

柴崎が責められるべきは、あのバックパスのミスではない。サイドチェンジの少なさだ。そして、それはチームの問題でもある。柴崎が多くサイドチェンジできているということは、それだけライン間に人が立っていて、相手のディフェンス陣が中央に絞られているということである。そのタスクがこなされていないという事実が、フォーカスされるべきなのだ。

(全2256文字)

■久保や堂安が欲しかった理由

久保と堂安の在・不在を痛感したのは、ライン間のプレーだけではない。

【4−2−3−1】を使用する森保ジャパンにおいて、左利きで突破ができるサイドアタッカーの存在は重要だ。

久保や堂安は、ただのドリブラーではない。連携力の高いテクニシャンだ。サイドでボールを受けての突破もできれば、ハーフスペースで受けてFWやトップ下の選手ともコンビネーションできる。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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