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食事だけじゃない。大腸がんに特徴的な生活習慣も判明。一千名データ解析が明らかにした最新情報。

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

最新の医学論文をご紹介する本シリーズ。前回から1カ月しか空いていませんが、再び大腸がんを取り上げます。

やはり大腸がんは予防が大切

前回もご紹介した通り、大腸がんは大変多く見られるがんです。

2021年のデータでは男性の患者数は前立腺がんに次いで2番目に多く、女性でも乳がんに次ぐ患者数第二位のがんです。

そして経過も良くありません。

同じく2021年、日本人の女性がん患者では、大腸がんで亡くなった方が最多でした。

男性でも肺がんに続く第二位です [国立がん研究センター・がん情報サービス] 。

さらに残念なことに、大腸がんは患者数、死亡者数とも増える一方で減少する気配はありません(図) [国立がん研究センター・がん情報サービス] 。

出典は図中の通り。万国著作権条約にのっとり引用。
出典は図中の通り。万国著作権条約にのっとり引用。

それだけに「予防」が大切なのです。

大腸がん患者に特徴的な食生活や生活習慣を調査

その「大腸がん予防」について興味深い論文が2023年12月20日、「栄養学」という学術誌に載りました。著者は中国・山西大学のムハンマド・トゥファイル氏たち。トゥファイル氏の母国であるパキスタンのデータを解析した結果です [文末文献1] 。

同氏たちは「大腸がん」で入院した約500人のデータと、年齢や性別などを揃えたがんではない約500人のデータを比べ、「大腸がん」発症と関係する因子を調べました。

患者の約5割は「60歳以上」でしたが、「41〜60歳」もおよそ33%を占めています。

その結果、「喫煙」や「ドカ食い」(大腸がんリスク増大)「野菜」や「果物」(リスク低減)など従来から指摘されていた因子に加え、いくつか意外な因子が大腸がん発症リスクと関係していました。

「テレビ/ゲーム」や「不規則な睡眠」でもリスク高?

まず第一は「ファストフード」。大腸がんになった人たちは、ファストフードをたくさん食べていました。

そして「食用油の再利用」。これも、大腸がんの人たちで多く見られた習慣です。

さらに意外だったのが「テレビやゲームに費やす時間」。大腸がん患者では、これらの時間が長かった傾向が認められました。

そしてもう一つ、「不規則な睡眠」。これも大腸がん患者で多く見られた特徴。つまり規則正しく就寝・起床していないと、大腸がんリスクが上昇すると示唆されたのです。

食事だけでなく生活習慣にも気をつけよう

ただこれらの「因子」と「大腸がん」の間に因果関係があるかどうか、この研究からは不明です。これらの因子を持つ人たちに共通する何かが、大腸がんに影響を与えている可能性もあるからです。

さらにたとえば「大腸に問題があるとファストフードを食べたくなる」「大腸がんが潜んでいる人は眠りが不規則になる」可能性も否定できません(「因果の逆転」と呼ばれます)。

しかし因果関係の有無は措くとして、この研究が「大腸がん」に「なりやすい/なりにくい」人の食習慣や生活習慣を明らかにしたのは事実。だとすれば賭けるつもりで「なりにくい」習慣を取り入れてみませんか?

食用油はできるだけ新鮮なものを使う/選ぶ(これでファストフードの回数が減るかもしれませんね)、テレビとゲームはほどほどに、そして規則正しい睡眠習慣を守る——。これくらいのことで大腸がんのリスクが下がるのであれば、結構、お得だと思いますよ。

最後に

いかがでしたか?大腸がんの発症には、食事に関するよく知られた危険因子に加え、生活習慣を含む意外な危険因子も潜んでいるという論文でした。

がんに関しては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 大腸がん患者に特徴的な食生活と生活習慣 [英語]

英語論文で要約までしか無料では読めませんが、DeepLなどの翻訳サイトを使ってご自身でも読んでみてください!

【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも見解形成の「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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