Yahoo!ニュース

FIFA会長が26年W杯GL「12組・1組4チーム」案も検討と発表。そうなったら日本はどうなる

坂東太郎十文字学園女子大学非常勤講師
当記事の主人公はメッシでなく右側の会長さん(写真:ロイター/アフロ)

 12月12日、筆者は「26年W杯の出場『32から48』とGL『8組・1組4チーム』から『16・3チーム』」で日本はどうなる」という記事(以下「先の記事」と記す)をアップしました。26年のサッカーFIFAワールドカップ(W杯)本大会(カナダ・メキシコ・アメリカ3カ国共催)からの変更を踏まえての観測です。

 ところが直後に国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティーノ会長が26年大会のグループリーグ(GL)を「12組・1組4チーム」案も再検討すると発表。もしそうなったら先の観測記事の内容も大変更せざるを得ません。

 そこで仮に「12組・1組4チーム」が採用されたらどうなるのかを追記する必要が出てきました。なお12日の記事で使ったFIFAランキングはW杯後に最新版が出て変わっていますが、先の記事と比較しやすいように、あえて10月6日発表のものを使用しているのをご理解下されば幸いです。

GL2位で決勝Tに行ける確率は3分の1に

 FIFA会長が再検討する理由として挙げたのはカタール大会のGL「1組4チーム」が「成功を収めた」からとのこと。混戦の結果、GL最終節が大いに盛り上がったからのようです。としたらインファンティーノ会長の心を一番揺らしたのは日本の善戦かも。

 さて「12組・1組4チーム」としたら決勝トーナメント(決勝T)進出は16チームになると考えた方が自然です。そうしないと、例えばGL2位の12チームで決勝Tチームを決めるプレーオフなどをやるとしたら「開催期間約1カ月。決勝まで7試合」の原則が崩れてしまいますから。

 というわけで最も想定されるのがGL首位12チームと2位12チームのうち上位4チームが決勝T出場という形。今回のGLにおけるレギュレーションを援用するならば2位12チームは勝ち点→得失点差→総得点の順で上位4チームが決まると。

 勝ち点はともかく得失点差や総得点をコントロールするのは難しい。ましてや12分の4つまり確率は3分の1。こうなると「GL1位通過を目指す」以外の目標設定が非常に難しくなります。自チームが属する相手との結果は、ある程度コントロールできても他GLはどうにもなりませんから。

出場チーム24時代のレギュレーション

 本大会の出場チームが「16」でもカタール大会までの「32」でもなかった時期で次回大会と似ているのが1982年大会から94年大会までの「24」。ここを参照してみましょう。

 82年はGL6組で1組4チーム。上位2チーム計12(2×6=12)が2次リーグ4組・1組3チームで争い首位4チームが決勝Tへ。

 ただこの形式で2026年大会で実施すると2次リーグが8組となり、2試合消化して8強が決まるから決勝まで8試合を要し現実的ではありません。

 ゆえに1986年から94年大会までのレギュレーションが当てはまりそうなのです。この間、GL6組・1組4チームで各組上位2チームと同3位チームのうち成績上位4チームの計16チームで決勝Tとなりました。

 2026年の出場国はこの時期の倍。だから上記「GL首位12チームと2位12チームのうち上位4チームが決勝T出場」と予測されるのです。

2位の上位4チームへ潜り込むには多分勝ち点6(2勝1敗)が不可欠

 ただ出場24チーム時代と感覚が大きく異なる点も。24時代は各組2位まで決勝Tで3位6チームのうち4つが決勝に行けました。すなわち「3位で行けてラッキー」&「そのラッキーが3分の2」と高確率で文句をいう余地がほぼありませんでした。

 しかし「2位12チームのうち上位4チームが決勝T」となれば景色がガラッと違ってきます。2位で決勝Tを逃す方が3分の2。

 カタール大会でのGL2位の勝ち点は「6」が3チーム、「5」が2チーム、「4」が3チーム。48へ増やしてもこの数字はあまり変わらないか「弱い16」が加わる分だけ上がる可能性すらあります。2位の上位4チームへ潜り込むには多分勝ち点6(2勝1敗)が不可欠。まして首位通過はGL2勝して無敗でないと。確かに盛り上がりはしましょうが過酷ともいえそうです。

ポット1に開催3国のうち2つを入れてみたら

 では先の記事と同様のFIFAランクで12組×4チームに組み替えて一覧を示してみます。ただ先の記事は26年大会開催3国のうち2チームがFIFAランクでもポット1に入ったので結果オーライとみなしましたが12×4だと話が違ってしまいます。そこで便宜上、メキシコとアメリカはポット1に繰り上げてみました。

【ポット1】FIFAランク順です。

1位 ブラジル(南米1)

2位 ベルギー(ヨーロッパ1)

3位 アルゼンチン(南米2)

4位 フランス(ヨーロッパ2)

5位 イングランド(ヨーロッパ3)

6位 イタリア(ヨーロッパ4)

7位 スペイン(ヨーロッパ5)

8位 オランダ(ヨーロッパ6)

9位 ポルトガル(ヨーロッパ7)

10位 デンマーク(ヨーロッパ8)

13位 メキシコ(北中米 開催国)

16位 アメリカ(北中米1)

欧州8、南米2、北中米2。さして驚きはありません。

ポット2・3・4の様相

【ポット2】FIFAランク順です。

11位 ドイツ(ヨーロッパ9)

12位 クロアチア(ヨーロッパ10)

14位 ウルグアイ(南米3)

15位 スイス(ヨーロッパ11)

17位 コロンビア(南米4)

18位 セネガル(アフリカ1)

19位 ウェールズ(ヨーロッパ12)

20位 イラン(アジア1)

21位 セルビア(ヨーロッパ13)

22位 モロッコ(アフリカ2)

23位 ペルー(南米5)

24位 日本(アジア2)

 開催2国をポット1に繰り上げた関係でランク上位の欧州勢が2つ入ります。欧州5、南米3、アフリカ2、アジア2。後述するように日本はギリギリです。

【ポット3】FIFAランク順です。

25位 スウェーデン(ヨーロッパ14)

26位 ポーランド(ヨーロッパ15)

27位 ウクライナ(ヨーロッパ16)

28位 韓国(アジア3)

29位 チリ(南米6)

30位 チュニジア(アフリカ3)

31位 コスタリカ(北中米2)

32位 ナイジェリア(アフリカ4)

37位 アルジェリア(アフリカ5)

38位 オーストラリア(アジア4)

39位 エジプト(アフリカ6)

41位 カナダ(北中米3)※開催国なので扱い未定

 欧州3、アジア2、アフリカ4、北中米2、南米1。

【ポット4】FIFAランク順です。

43位 カメルーン(アフリカ7)

44位 エクアドル(南米7)

46位 マリ(アフリカ8)

48位 コートジボワール(アフリカ9)

50位 カタール(アジア5)

51位 サウジアラビア(アジア6)

54位 ブルキナファソ(アフリカ10)

60位 パナマ(北中米4)

64位 ジャマイカ(北中米5)

68位 イラク(アジア7)

70位 アラブ首長国連邦(アジア8)

105位 ニュージーランド(オセアニア1)

 アフリカ4、アジア4、北中米2、南米1、オセアニア1。

「見えざる手」降臨の鍵は「欧州×欧州」

 ここで「欧州勢以外はGLで同一地域が当たらない」「欧州勢もGLで3つは当たらない」を貫いてみると、欧州勢が16でGL数が12ですから4チームが必ず「欧州×欧州」となります。

 まず「欧州×欧州」がなるべく実現しない組の構成から。ポット1の非欧州が4でポット2の欧州が5であるため、ここで確実に1つ「欧州×欧州」と決まるわけです。

 さらにポット3の欧州勢は3。ポット1・2とも非欧州はゼロ。ゆえに全3チームが「欧州×欧州」とならざるを得ません。

 結果としてポット1~3で「欧州×欧州」4GLで欧州1チームのGLが8つ出来る勘定です。

 反対に積極的に「欧州×欧州」をぶつけたら(ただし3チームは不可)どうなるか。ポット1の8とポット2の5を被せて(8-5)、残りの3をポット3の3チームに当たらせます。「欧州×欧州」8GLで「なし」が4GL。

 なぜこうした計算をしたかというとポット1に開催国の米墨(北中米)を入れているため。通常、開催国がGLで敗退すると盛り下がるため「見えざる手」が降臨するとうわさされているのを一応信じてみようとの思惑が筆者にあるがゆえです。

 22年大会の開催国カタールはランク49位(選考時点は51位。以下除外)と極めて低く、ポット2・3がどこでも明らかな格上で(結果はオランダ・セネガル)、ポット4からアジア・アフリカ(同一地域)を除いたエクアドルと決定。開催国が弱すぎて「見えざる手」の働き場所がありませんでした。でも米墨はそれなりの強さを持っているから「手」の出番があるかも。

 もし「なるべく実現しない」としたらFIFAランクでアメリカ(16位)より上のドイツ(11位)、クロアチア(12位)、スイス(15位)の欧州勢と同じGLとなる可能性が一挙に高まるのです。さらに南米のウルグアイ(14位)を加えると4チーム。既に述べたように「2位で決勝Tに進めるのは12分の4」しかないため「事実上のポット1」と当たるのは避けたいところ。ここに「カナダをどう扱うか」を含めれば事情はさらに複雑化します。

 ポット1・2が全部「欧州×欧州」となれば米墨の相手はウルグアイを除けばFIFAランク上、同格か格下の主にアジア・アフリカ勢(計4チーム。他に南米2)。後はポット3の欧州勢とポット4のアジア・アフリカ勢(ポット3で当たらない側)あたりの組み合わせが最も良さげです。

日本は24年アジアカップで無双したい

 さて日本。まず12組×4ポットとなると今大会まで、あるいは先の記事に書いた16組×3ポットでもあまり気にしなくてもよかった「どちらのポット」問題が発生しそうです。

 ここで用いているFIFAランクだと日本はぎりぎりポット2。16強進出後の最新ランクでも(12月22日)20位と「ポット2の下位」は変わりません。

 W杯本大会が終わった以上、ランクの上下を当面、決定的に支配しそうなのは24年1月からカタールで開催されるアジアカップ。必ず優勝して、できれば無双してほしいところ。決勝Tを逃すなど「まさか」をやらかすとW杯で上がった分を吐き出しかねません。

 ポット2か3かでかなりの差が出てきます。端的に言えば「2」に止まれば同一の強豪と当たらなくて済むという点。

 どちらにせよポット1に並ぶ本命チームとはやらざるを得ません。実力的にはおいしそうな開催国もW杯8強2回のメキシコは普通に強いし、ホームでアメリカとやるのはどこの国でもいやでしょう。

 もしポット3に転落してしまうとアジア勢以外のポット2とも対戦しなくてはなりません。一覧を見て下さい。「GL1位通過を目指す」が大目標だから避けたいですよね。反対にポット3とは戦わないのですが、一覧でおわかりのように「3に落ちて助かった」というチームはなさそうです。

ベストな組み合わせと怖い怖いパターン

 ではポット2であった場合の日本の対戦相手を予測してみましょう。22年のポット1は開催国を除くランク7位までが該当したのに対してのうち26年は10位までだから、できれば下位と当たりたい。「開催国がなんぼのもんじゃい」派ならば米墨がうれしいかも。

 ポット1の南米2チームと当たりたいという方は「GL1位通過を目指す」だけで推察すれば少ないはず。としたら「ポット1 欧州」「ポット2 日本」となります。するとポット3はアジア2チームを除くすべてと可能性あり。確率がもっとも高いのがアフリカ勢です。そうなると必然的にポット4は北中米(2)、南米(1)、オセアニア(1)のどれか。ベストなのはデンマーク級×日本×エジプト級×ニュージーランドあたりか。

 反対に怖いパターンがポット1上位の欧州×日本×ポット3の欧州(スウェーデン級)×ポット4の南米勢といったところです。

カタールW杯並みの「死の組」も

 アジアカップなどでやらかしてポット3に転落したら大変。ポット1の怖さは変わりませんがポット2のドイツ、クロアチアといった欧州勢やウルグアイあたりとGLを形成する可能性が出てきます。ポット4は対戦相手次第で除外される地域が出てくるものの欧州勢はいないからアフリカ勢の可能性が大となるのです。

 仮にポット1上位級×クロアチア級×日本×アフリカ勢などとなればカタールW杯並みの「死の組」です。今度は2位で決勝Tが保証されないので

十文字学園女子大学非常勤講師

十文字学園女子大学非常勤講師。毎日新聞記者などを経て現在、日本ニュース時事能力検定協会監事などを務める。近著に『政治のしくみがイチからわかる本』『国際関係の基本がイチから分かる本』(いずれも日本実業出版社刊)など。

坂東太郎の最近の記事