近年発見されたばかりの超巨大構造「ラニアケア超銀河団」とは何か?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ラニアケア超銀河団とはどんな天体か?」というテーマで動画をお送りします。
私たちが属する天の川銀河は、「おとめ座超銀河団」と呼ばれる巨大な銀河の集合体に属しており、さらにおとめ座超銀河団は「ラニアケア超銀河団」と呼ばれるより巨大な銀河の集合体の一部なんだそうです。
今回は私たちが属している、超巨大な銀河の集合体である超銀河団、特に「ラニアケア超銀河団」について掘り下げていこうと思います。
●宇宙の階層構造
私たちが住む地球は太陽系に属しており太陽系は天の川銀河と呼ばれる銀河に属しています。
そして宇宙には膨大な数の銀河が存在していて、それらは銀河の集団を形成しています。
自身の重力で拘束された数十個程度の銀河の集団を銀河群、より大規模な集団を銀河団といいます。
太陽系が属している天の川銀河も40ー50個ほどの銀河とともに局部銀河群、英語で言うとローカルグループと呼ばれる銀河群に属しています。
また局部銀河群も、より大きなスケールで見た時にさらに大きな銀河の集団の一部にすぎず、銀河群や銀河団の集合体である超銀河団を形成しています。
そして宇宙は、膨大な数の銀河が集まった「銀河フィラメント」と呼ばれる領域と、銀河がほとんど存在しない「ボイド」と呼ばれる領域が複雑に入り組んだ構造をしており、その構造は泡に例えられます。
泡の表面が銀河が密集している領域で、泡の中の空洞にあたる部分がボイドです。
このように非常にマクロなスケールで宇宙を見たときに現れる、泡状構造を「宇宙の大規模構造」と呼んでいます。
●おとめ座超銀河団
○超銀河団とは?
今回の本題でもある「超銀河団」とは、自身の重力で拘束された銀河の集合体である銀河群や銀河団が、さらに大規模に集まった、より巨大な銀河の集合体です。
超銀河団は銀河群や銀河団のように、自身の重力で束縛されているわけではありません。
そのため超銀河団は宇宙膨張と共に広がっています。
また超銀河団は銀河群や銀河団と異なり、明確な定義が存在しません。
そのためどこまでを一つの超銀河団とするかの線引きは難しいものがあります。
実際には例えば近くにある銀河の集合体や、同じ重力源から引っ張られる銀河の集合体で一つの超銀河団としてまとめられる場合が多いようです。
○おとめ座超銀河団とは?
おとめ座超銀河団とは、天の川銀河が属する局部銀河群を含む超銀河団です。
局部超銀河団とも呼ばれています。
おとめ座超銀河団は不規則な形状をしていますが、直径が1億光年以上もあります。
100個程度の銀河群や銀河団を含んでおり、その総質量は太陽1000兆個分とも言われています。
おとめ座超銀河団の中心付近には、天の川銀河からおとめ座の方向に約6500万光年彼方にある「おとめ座銀河団」と呼ばれる、約2000個もの銀河が重力的に拘束し合っている巨大な銀河団が存在します。
おとめ座銀河団の中心付近には、「M 87」と呼ばれる巨大な楕円銀河が存在します。
そしてM 87の中心には、なんと太陽の65億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在し、このブラックホールは2017年に人類史上初めて直接撮影されたブラックホールとして大きな話題を呼びました。
おとめ座超銀河団を構成する全ての銀河は、なんと超銀河団の中心部ではなく、超銀河団の外にある特定の重力源から引かれるような運動をしていることが知られています。
おとめ座超銀河団全体を引っ張る巨大重力源は、「グレートアトラクター」と呼ばれています。
●真の超銀河団「ラニアケア」
グレートアトラクターに引っ張られている天体は、おとめ座超銀河団を超える範囲にまで分布していました。
天文学者たちが個々の銀河の運動を詳細に調べた結果、なんと直径5億光年以上、おとめ座超銀河団の100倍以上も広大な領域にわたって存在するあらゆる天体が、グレートアトラクターに引き寄せられていました。
この2014年に新たに発見された、グレートアトラクターに引き寄せられる全ての銀河の超巨大な集合体は、「ラニアケア超銀河団」と命名されました。
ラニアケア超銀河団はおとめ座超銀河団を拡張した概念なので、当然おとめ座超銀河団を内包しています。
さらにはグレートアトラクターも、ラニアケア超銀河団に内包されています。
ラニアケア超銀河団では直径5億光年を超える広大な範囲に10万個以上もの銀河が存在しており、その総質量は太陽の10京倍とも言われています。
ラニアケア超銀河団の内外では天体の運動の方向性が全く異なっているため、このラニアケア超銀河団こそが「真の超銀河団」と呼ばれることもあるようです。
●グレートアトラクターの正体
では広大なラニアケア超銀河団に属するあらゆる天体を引き寄せる巨大重力源「グレートアトラクター」とは、どのようなものなのでしょうか?
グレートアトラクターは非常に巨大な質量を持っており、超巨大な銀河の集合体であると考えられるため、十分な明るさで輝いていそうですが、実は現在でもその正体がよくわかっていません。
その原因は、グレートアトラクターが地球から見て天の川の方向に存在しているためです。
天の川とは、私たちが属する天の川銀河の中心部方向です。
天の川銀河は円盤状の構造をしているため、太陽系が位置する天の川銀河の内部から、星が高密度に集まって明るい銀河中心部方向を見ると、線のように見えます。
天の川の方向には無数の恒星だけでなく、ガスや塵などといった星間物質も大量に存在します。
これらはその背後にある天体から地球に向けて放たれた光を吸収してしまい、地球からの観測を困難にしています。
この可視光で観測困難な領域を「銀河面吸収帯」と呼びます。
具体的には全天のうち10~20%の領域が観測困難であり、天の川銀河外の天体がほとんど発見されていません。
背後に何があるのかわからない、「未知の領域」です。
そんな可視光で観測が困難な領域でも、赤外線や電波を活用すれば、背後の天体からやってきた情報を得ることができます。
近年はそのような観測で銀河面吸収帯方向の新たな銀河団が発見されたりと、グレートアトラクターの手掛かりが徐々に掴めつつあります。
今後も研究成果が楽しみな分野です。