ブラックホールだらけの異質な星団が発見される…
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ブラックホールばかりから成る異質な星団を発見」というテーマで動画をお送りしていきます。
●球状星団「パロマー5」
私たちの太陽系が属する天の川銀河には、星が円盤状に密集した「ディスク」と呼ばれる構造に、その中心部にさらに星が密集した「バルジ」と呼ばれる構造があります。
そしてディスク全体を取り囲むように、球状に広がる「ハロー」と呼ばれる構造が存在しています。
このハローでは星が比較的低密度で分布しています。
このハロー領域には、一般的に数十万個程度の恒星が、お互いの重力で拘束し合って球状にまとまった、球状星団と呼ばれる星団が多く存在しています。
天の川銀河に属する球状星団はこれまでに150個ほど発見されています。
今回の主役となるのは、この球状星団の一つである「パロマー5」です。
パロマー5は地球からへび座の方向に約65000光年彼方にある球状星団となります。
球状星団は一般的にそれを構成する星々が非常に古いという特徴を持っていますが、パロマー5も同様に推定年齢が100億歳以上と、天の川銀河が形成されるかなり初期の段階から存在していたと考えられています。
そんなパロマー5は、他の球状星団と大きく異なる特徴を2つ持っていると言われています。
まず一つは、非常に低密度であるという点で、一般的な球状星団と比べて5倍ほどの直径を持っているにもかかわらず、質量は約10分の1しかありません。
パロマー5での星々の平均距離は数光年程度と、天の川銀河の中心から25000光年ほども離れた太陽系の付近の環境と変わらないほど、球状星団としては星の密度が低いです。
そして2つ目の特異な点は、巨大な恒星ストリームが付随しているという点です。
恒星ストリームとは、矮小銀河や球状星団などがより巨大な銀河全体の力で破壊され、引き延ばされてできたと考えられている、細長い星の集団です。
今表示されているのはパロマー5とそれに付随するストリームの実際のデータですが、実に20度の範囲にもわたって広がっているほど、非常に巨大な構造となります。
近年、天の川銀河のハロー内で実に30個もの恒星ストリームが発見されているようですが、それらのうち球状星団が付随しているのはパロマー5とそのストリームの例だけだそうです。
●ブラックホールだらけの球状星団!?
恒星ストリームは先述の通り、球状星団が破壊された場合でも形成されると考えられていますが、その観測例がパロマー5とそのストリームの例だけなので、これでは確証を持てません。
そこでバルセロナ大学を中心とした研究チームは、パロマー5が形成されてから消滅するまでの進化をシミュレートし、実際に星団と恒星ストリームが持つ特徴と一致する結果を得られる条件を分析しました。
その結果、なんとパロマー5は他の球状星団と比べて「ブラックホールだらけ」であり、最終的には星が全て追い出されてブラックホールだけが残る可能性が示されました!
この結果は2021年7月に発表されています。
パロマー5が形成された当初、ブラックホールの割合は星団全体の質量のうち数%を占める程度だったと考えられています。
これらのブラックホールは、星団内に存在していた大質量星が超新星爆発を起こすことで形成され、それぞれが太陽質量の20倍程度の質量を持っていると考えられています。
ですがブラックホールはその重力で恒星を星団から追い出し、徐々に周囲に恒星ストリームが形成され、星団内のブラックホールの割合が増えていきます。
現在のパロマー5では、星団の中心部に100個以上のブラックホールが存在し、星団の総質量のうちブラックホールだけで20%を占めています。
これは星団内の星の数から予想されるよりも約3倍も多いそうです。
今後も恒星はどんどん追い出され、今から約10億年後には全ての星が消滅し、星団はブラックホールだけで構成されるようになるそうです!
もはや星団と呼べるか怪しいですね。
今回の研究から、恒星ストリームと球状星団の関係性がより詳細に見えてきました。
現在発見されている多くの恒星ストリームで球状星団がセットで観測されないのは、恒星ストリームを形成した星団はブラックホールだけになってしまい、観測が困難になっているからなのかもしれません。
観測は難しいですが、このようなブラックホールだらけの星団が実在していると考えただけで、ロマンがありますね!