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木曜日の結論を目指して、EUとイギリスが最後の交渉。現状は?:ブレグジット

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
ロンドンで最後の交渉。コロナ感染でリモートから復帰のバルニエ交渉官。11月30日(写真:ロイター/アフロ)

目下、欧州連合(EU)とイギリスは、どのような合意を結ぶのか、あるいは合意なしかで、山場を迎えている。

複数の情報筋によると、交渉は週末にはほとんど進展しなかったが、月曜日以降は激化しており、合意を引き出すための譲歩が提示されている。

木曜日には結論を出したいという日程で動いているという

もし合意するのなら、年内にEUとイギリスの議会で承認されなければならないのだ。これが本当に最後の交渉だ。長かった・・・。

妥協に傾くデア・ライエン委員長

欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、妥協点に到達するために、全力をかたむける決意をしたようだ。

彼女は、腹心の部下であるフランス人女性ステファニー・リゾを、ミシェル・バルニエと一緒に仕事をさせるために派遣した。この事実からも明らかであるという。

そして、現在、議長国を担当しているドイツは、失敗した場合の責任を何としても回避したいとの指摘もある。デア・ライエン委員長はドイツ人なので、利害は一致しているのかもしれない。

辛辣な情報筋は、イギリス側の「あきらめない」という戦略に対して、「現段階では、イギリス人の不動の姿勢が報われるように見えるかも」と苦々しく要約したという。

しかし、ここ数日、デア・ライエン委員長の「合意のためにあらゆることをする」という姿勢には、いくつかの加盟国の間で不安が高まり、懸念を表明し始めている。これは複数のメディアが伝えている内容だ。

中でもフランスは常に断固とした発言をしてきた。孤立しているわけではなく、スペイン、ベルギー、オランダ、デンマークも同様で、ミシェル・バルニエに対して「委任で定められた赤線を越えてはならない」という共通の立場を持つのだという。特に「公正な競争の条件」についてはシビアである。

12月1日、マクロン大統領は、ベルギーのデクロウ首相と並んで、非常にはっきりと「フランスは長期的に我々の利益を尊重しない、劣化した合意を受け入れないだろう」と警告した。

ある関係者は「我々は、起こりうる合意の条件について、深刻な懸念を持っている」と述べた。そして、交渉が失敗するという見通しは、人々の心の中で「より少ない悪(=マシ)」として定着し始めているともいう。

本当に合意できるのか

「合意に達するか、終わりになるかのどちらかだ」と、ある情報筋は説明している。

公正な競争を確保するためのルール、漁業権、紛争の解決方法の3つの問題については、相変わらず解決していない。

漁業権に関しては、問題の交渉方法を別途定めようという案が出たこともあるが、「公正な競争を確保するためのルール」と「紛争の解決方法」に関しては、最初からずっと平行線で動いていない。この2つはセットなので、切り離すことはできないだろう。

交渉官たちは、加盟国が示す超えてはならない「赤線」を知っているという。しかし、「各加盟国は、提案された合意に『ノー』と言う立場になることを恐れており、『分裂のリスク』がある」と別の関係者は説明した。

フランスのボーヌ欧州担当大臣は「我々が利益を明確にもっていて、利益を守るのであれば、とことん守らなければなりません」と説明した。「でも、私たちはいつも逆のことをしがちです。つまり、私たちは弱いが、意地を見せて妥協点や着地点を見つけなければならないーーと思い込みがちなんです」と述べた。これは確かに、27カ国も集まるEUにありがちな様相である。

そして一部の人たちは、交渉担当者間で成された合意が、いくつかの加盟国によって拒否される可能性があるという「黒いシナリオ」の脅威を言い始めているという

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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