10年ぶりに登場!創業670年以上の「塩瀬総本家」のおはぎは、濃密で贅沢なあんこで嗜む大人の味
大きなおはぎ、まんまるなおはぎ、スプーンで掬うような粒餡がたっぷりかかったおはぎなど、昨今のおはぎは実に多種多様なバラエティ豊かな姿かたちになりましたね。私がまだ幼い頃は3~4種類程でいずれも俵型だったイメージがあります。(田舎育ちというのもありますが。)
そして、お腹を満たせるようなわりとカジュアルな位置づけだったおはぎ。しかし、もとはお彼岸やお盆といった日本独自の暦に則った時節にのみ販売される、特別な存在だったというのもまた事実。
現在は東京都中央区にて本店を構え、創業675年を誇る和菓子屋「塩瀬総本家」さん。日本三大饅頭と呼ばれる塩瀬饅頭も有名なお店ですが、このほど生産体制が整い、今年の春から10年ぶりにとある和菓子がお目見え致しました。今回は塩瀬総本家さんの「おはぎ」をご紹介。
まず一言申し上げるとすれば、これほどまでに品格のあるおはぎと出会えることはなかなかないのでは、ということです。
ご用意されているおはぎは、粒餡・こし餡・抹茶餡の三種類。いずれもしっかりと練り上げられたあんこでして、指先で触れると吸いつくようなキメの細かさとあんこの厚みが伝わります。
エリモ小豆を炊き上げた粒餡は、ズシンと重量感のある滋味深い味わい。皮の軽やかな食感ごと噛みしめながら、その粒の隙間から滲む餡子の部分と糯米がじわじわと絡み合います。
また、こし餡は粒餡に比べるとより一層ザラメ糖特有のまろやかで奥深い飴のような甘い香りが艶っぽく、甘さもそのままにとっても優しい口当たり。しかし、これだけ濃密なこし餡となるとかなりたっぷりの小豆を使用しているに違いありません。ゆっくりゆっくりと口の中で溶かしていきながら、その奥に潜む糯米を探し当ててゆきます。
意外だったのが抹茶餡。開封した途端に小鼻を抱きしめるかのような抹茶の爽やかな芳香はほろ苦さを連想させますが、実際はそこまで苦味がきついわけではなく、白餡のきゅうっと力強い甘露と、その隙間を縫うように踊るエレガントな抹茶の魅力にしばし沈黙しつつ満喫。
砂糖の甘さではなく、質感や手間や材料を惜しげもなくあわせたおはぎということがひしひしと伝わり、カジュアルなおはぎではなく一口ごとにじっくりじっくり向き合うひとときをも楽しむことができたお彼岸の昼下がり。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<塩瀬総本家・本店>
公式サイト(外部リンク)
東京都中央区明石町7-14 塩瀬ビル1階
03-6264-2550
9時~18時30分(日曜 10時~18時)
不定休