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「久保建英」に学べ。慎重さが求められる少年選手の報じ方

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 久保建英が正念場を迎えている。今季途中、マジョルカの監督にハビエル・アギーレが就任したとき、その出場機会は増すと思われた。日本代表監督を半年間、務めた経験があるアギーレに、スペインでよく見かける日本人選手への偏見はないはずだ。久保にとって歓迎すべき監督であるかと思われた。

 ところがアギーレ就任以降、久保の先発は8戦中わずか2試合に終わる。ルイス・ガルシア・プラザ前監督時代より出場機会を大きく減らすことになった。元日本代表監督であるアギーレから評価されなかったという事実は重い。森保一監督もそれに呼応するように、伊東純也に次ぐ、右ウイングの2番手の座を、久保から堂安に置き換えている。

 久保はその結果、今月行われた代表戦4試合のガーナ戦では、4-3-3のインサイドハーフとして先発。FWからMFへ転身する格好になった。代表でインサイドハーフを務めるのはこれが初めてではないが、一言でいえば、ポジションと適性が一致していなさそうなプレーに終始した。楽天的なアタッカーがそのままインサイドハーフでプレーしたという感じだ。ゲームを構成する力、判断力、試合の流れを読む力に欠けた。

 4試合の出場時間は計128分に終わった。カタールW杯の最終メンバーに入れるかどうか、現状ではギリギリの立場にいる。かつての天才少年が、21歳になったいま、こうして頭打ちになる姿を予想した人はどれほどいるだろうか。けっして多くないはずである。

 しかし天才と呼ばれた少年が、年齢を重ねる毎に天才性が薄れ、普通の選手となり、中には表舞台から消えていく姿を、筆者はこれまでいやというほど見てきている。世界に目を向ければ枚挙にいとまがない。サッカー界においては驚くべき話ではない「サッカーあるある」といっても言い過ぎではない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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