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クリスマスツリー化するサッカー日本代表と悪化するボールを奪われる場所の関係

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 就任以来6年と数か月、森保一監督は目指そうとしているサッカーを具体的に語ろうとしなかった。

「臨機応変」。「賢くしたたかに」。「よい守備からよい攻撃へ」が精一杯。抽象的な表現でその場をやり過ごしてきた。たとえば欧州なら、それは代表監督として許されない振る舞いになる。代表監督のスタンダードが浸透していない日本だからこそ許される、ぬるま湯体質を象徴する事象になる。

 だが、W杯アジア3次予選に入り「ボールを奪ったら素早く相手の最終ラインの背後を突く」という具体的な言葉が飛び出すようになった。よほど自信があるのだろう。特に聞かれてもいないのに、唐突に自ら口を開いた格好だ。

 アジア予選を戦う相手は強豪日本に対し、引いて構えるので最終ラインの位置もおのずと低くなる。背後にスペースはない。数メートルあればいい方だ。森保監督が日本の対戦相手の監督なら分かる。カウンターサッカー。速攻。弱者が強者に対しDFの並びが整う前に少人数で攻めきろうとするサッカーだろうとイメージは湧く。強者に挑む弱者の監督の言葉ならば、好き嫌いはともかく理解できる。

 だが日本は少なくともアジアにおいては圧倒的な強者だ。ボール支配率で相手を常に上回る。3-4-2-1という守備的サッカーの定番布陣を用いても、否応なく遅攻になる。「ボールを奪ったら素早く相手の最終ラインの背後を突く」サッカーがハマる瞬間は限られる。

 それでも最終ラインの背後を突こうとすれば、攻撃のルートは真ん中になる。ボールは3-4-2-1の布陣どおり、ピッチの中央部を迫り上がるように進む。この姿。よくないサッカーの典型だと筆者は閉口したくなる。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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