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ツイッターは滅び、村本は微笑む

ラリー遠田作家・お笑い評論家

ツイッターの勢いに陰りが見えている、というのをいろいろな人が口にするようになりました。たしかに、最近のツイッター界隈ではあまり明るいニュースがありません。コンビニの店員がバカなことをする写真を自ら公開して炎上するとか、芸能人のちょっとした書き込みに対して非難の声が殺到するとか、有名人がスパムリンクを踏んで問題になるとか、負の側面ばかりが目立つようになっています。

また、インターネット文化に精通した著名人や文化人の中でも、ツイッターと距離を置く人が少しずつ増えてきています。

そんな状況の中で、ツイッターを己の武器として巧みに活用して名を上げているのが、ウーマンラッシュアワー村本大輔さんです。

村本さんは、ツイッターで意図的に炎上騒ぎを起こして、それを面白おかしくネタにすることで、どんどん支持を集めています。そのやり方は巧妙かつ斬新。次々に新しいスタイルを開発して、ツイッターの可能性を広げています。

たとえば、最近ではこんなことがありました。村本さんはまず、意図的にファンを挑発するツイートをしました。その後、「トークライブのチケットが急激に売れている」「事務所にクレームの電話が殺到している」という内容をツイート。

そして最後に「チケットが急激に売れている、抗議の電話が殺到しているというのはウソでした」という内容の衝撃的なネタばらしをしました。しかも、この一連のツイートの結果、トークライブのチケットを即日完売させることができた、と喜んでみせたのです。

つまり彼は、偽の炎上騒動をでっち上げることでトークライブへの期待をあおり、それを利用して多くの人にチケットを買わせることに成功したのです。

ただ、これができるのは、村本さんがたぐいまれなる知性とユーモアを兼ね備えているからです。彼は綱渡りをするようにして、絶妙なバランスを保ちながら反則ギリギリのところでツイッターをしたたかに活用しています。一般人であれ芸能人であれ、これはなかなか容易に真似ができるものではありません。

逆に言うと、このぐらいずる賢い人でなければ、ツイッターをうまく生かすことはできない時代になってきているのです。知性もユーモアも足りない普通の人が手を出せば、ふとしたことでトラブルに巻き込まれ、痛い目を見るだけ。いつのまにかツイッターの世界は、おそるべき「弱肉強食」の世界になりつつあるのです。

この調子でいくと、ツイッターは近い将来、滅びてしまうかもしれません。その頃には、村本さんのような人だけがツイッターからおいしいところをしぼり取って、カラカラにしていることでしょう。村本さんだけが肥え太り、あとには何もない荒野が広がるばかり。たとえツイッターが滅んでも、村本さんは無人の荒野でほくそ笑んでいることでしょう。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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