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7年間放置の高層「幽霊ビル」15棟を一気に爆破という中国の衝撃プロジェクト

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
一度に爆破された15棟の高層ビル=中国新聞網より筆者キャプチャー

 中国雲南省昆明で建設工事が停止して7年間も放置されてきた未完成ビル15棟が今年8月下旬、一度に爆破・解体された。2011年に着工したものの資金繰りに行き詰まって2年後に工事が止まり、そのまま放置されていた。中国各地に似たような「幽霊ビル」が多数あり、今後も同じ方法での爆破が繰り返される可能性もある。

◇わずか30秒で15棟倒壊

 爆破されたのは昆明の「麗陽星城」に放置されていた15棟のビル。

 不動産関連メディア「雲南房網」(2021年7月30日)によると、昆明の住宅開発会社が建設を手掛けたものの、資金繰りがつかなくなり、2013年末に工事が中断、未完成のまま放置された。

 今年1月になって他の不動産業者が事業を引き継いだが、15棟の放置期間が長いため、雨水が流れ込んで地盤が緩むなど安全性に問題が起きていた。併せて、都市景観を損なっているという批判も相次いだため、結局、15棟を一斉に爆破・解体して再開発することを決めたという。

爆破区域を示す地元当局の資料=筆者キャプチャー
爆破区域を示す地元当局の資料=筆者キャプチャー

 爆破計画では、飛散する石を30m以内に制御するとともに、大型スプリンクラー25台を使って10~15分程度で粉塵を抑え込むようにし、事前に小規模な試験発破を実施したという。

 爆破当日の8月27日、ビル付近には交通規制が敷かれ、その外側には大勢の市民が集まったという。中国のニュースサイト「澎湃新聞」が伝えた動画を見ると、同日午後3時半、爆発音とともに各ビルの下層階から煙が上がり、ビルが次々に横倒しになった。莫大な量の粉塵が巻き上がり、周囲の住宅にも到達していた。所要時間はわずか30秒だった。ただ、爆破の威力で近隣の住宅数百カ所で壁や柱にひび割れなどの被害が出た。

 解体後に発生した18万立方メートルほどの廃棄物は無害化処理が施され、リサイクルされたという。新プロジェクトは今年6月に承認されており、計36棟(6~12階建て)のほか幼稚園や商業施設が整備されるという。

◇昨年も上海で4棟爆破

 中国では今もマンション建設ラッシュが続く。一方で、開発業者の資金繰りの行き詰まりや法律違反などによって工事がストップし、そのまま放置される高層ビルも急増している。

 中国には、鉄骨をむき出しにしたビル群が各地にある。こうした未完成のまま放置された“幽霊ビル”を、中国メディアは「爤尾楼」という用語で表現している。

 安全性に問題があるだけでなく、景観も損なうこの「爤尾楼」に周辺住民からの不満の声が絶えない。中国共産党機関紙・人民日報系サイト「人民網」によると、同サイトが設置する党幹部への伝言板には、「爤尾楼」に関連した苦情の件数が2020年9月までの10年間に全国で8000件以上寄せられたという。

 その中でも頻繁に取り上げられる「爤尾楼」が「天津金融117大厦」。香港の不動産会社が2007年、天津に地上117階・地下4階の超高層ビル(596.5m)の建設を計画。「中国で最も高いビル」を目指して2008年9月に工事が始まった。その7年後にはタワー部分の建設が終わった。ところがその後、不動産会社の資金繰りが行き詰まって建設がストップ。現在に至るまで放置され続け、いまでは「中国で最も高い爤尾楼」と皮肉られている。

 中国では今回のように複数の高層ビルを一斉に爆破した例は、過去にもあった。

 上海の中心部に近いエリアで2001年、高さ100m前後の高層ビル計4棟の建設工事が始まった。ところが開発業者が資金難に陥り、20年近くたっても完成を見なかったため、爆破・解体されることになった。爆破は2020年4月20日の深夜に実施され、7トンの爆薬によって4棟の爤尾楼はわずか15秒で解体された。一部の地域ではマグニチュード1.7の揺れが発生し、「地震ではないか」と騒ぎになったそうだ。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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