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どう調理するのが最もおいしい? 品川の上空で上海蟹を丸ごと堪能できるレストラン!

東龍グルメジャーナリスト
ストリングスホテル東京インターコンチネンタル「チャイナシャドー」 (C) 東龍

上海蟹の季節

秋も深まってきて、東京では10度以下を記録する日もでてきました。フランス料理ではトリュフがだんだんと色濃くなり、香りが強くなっていく時季。ジビエも出回ってきて、自然からの贈り物が味わえます。

中国料理では、ある旬の食材が登場するということで、特別コースが提供されることが少なくありません。その非常においしい食材とは上海蟹です。

上海蟹は正式にはチュウゴクモクズガニといわれる淡水蟹。中国で広く生息していますが、江蘇省昆山市巴城鎮の陽澄湖でとれるものが最上とされています。他のカニに比べて味わいが深く、濃厚な蟹味噌も印象的です。9月から翌年1月くらいまでが季節ですが、一般的に10月は産卵前で卵を有する雌、11月はたっぷりと白子を抱える雄が最旬であるとされています。

旬を迎える上海蟹は、日本でも大いに盛り上がりをみせるところです。

ホテルの上海蟹コース

チャイナシャドー (C) 東龍
チャイナシャドー (C) 東龍

街場では上海蟹の名店がいくつもありますが、ホテルの中国料理となると、多くのゲストによる様々なリクエストに応えるため、上海蟹に特化することはできません。したがって、東京のホテルに上海蟹の専門店はありませんが、上海蟹のシーズンに特別なコースを提供するレストランはいくつかあります。

上海蟹を体験できるホテルのレストランの中でも、特に注目したいのが、品川駅からペデストリアンデッキで直結する、ストリングスホテル東京インターコンチネンタル26階の「チャイナシャドー」。なぜならば、上海蟹の身も味噌も存分に堪能できる上海蟹のフルコースを、ランチにもディナーにも堪能できるからです。

2022年11月1日から12月22日まで提供されている「上海蟹を味わいつくす美食の饗宴」(ランチ 8,800円、ディナー 19,800円、共に税込・サ別)では、上海蟹の身や味噌を余すところなく堪能できるコースに仕上げています。

料理長を務める安藤秀和氏は、横浜にある中国料理の名店で20年以上も研鑽を積み、2020年8月に「チャイナシャドー」の料理長に就任。五味(甘味、酸味、塩味、苦味、辛味)の調和による複雑な味わいに長けています。伝統を尊重しながらも、アジアのスパイスやフランス料理、和食の技法を取り入れた料理が食通に注目されているのです。

では、安藤氏による「上海蟹を味わいつくす美食の饗宴」のディナーコースを詳しく紹介していきましょう。

上海蟹内子の姿蒸し紹興酒風味

上海蟹内子の姿蒸し紹興酒風味 (C) 東龍
上海蟹内子の姿蒸し紹興酒風味 (C) 東龍

上海蟹の雌の味噌と内子を堪能できる一品。紹興酒で臭みを消して、旨味だけをギュッと引き出しました。味噌の香りと内子の食感が出色。黒酢と針生姜が添えられているので、共にレンゲにのせて小籠包のようにいただくのもおいしいです。

上海蟹と燕の巣入りスープ

上海蟹と燕の巣入りスープ (C) 東龍
上海蟹と燕の巣入りスープ (C) 東龍

炒めて香りを深めた上海蟹の殻から出汁をとり、その油と味噌を加えて、4時間煮込みました。上海蟹の佳味をじっくりと堪能できます。なめらかな燕の巣、サクサクとした歯触りの衣笠茸も印象的です。

大海老と生帆立貝の上海蟹味噌煮込み ミルクパン添え

大海老と生帆立貝の上海蟹味噌煮込み ミルクパン添え (C) 東龍
大海老と生帆立貝の上海蟹味噌煮込み ミルクパン添え (C) 東龍

大根と帆立貝に、殻付きの大海老を合わせました。上海蟹の味噌のソースは非常にコクがあり、妙妙たる味わい。ミルク、バターに加えて、隠し味に加えられた豆板醤のピリ辛さが食欲をかきたてます。添えられたミルクパンでソースをぬぐって食べるのがオススメです。

黒毛和牛サーロイン 黒胡椒ソース

黒毛和牛サーロイン 黒胡椒ソース (C) 東龍
黒毛和牛サーロイン 黒胡椒ソース (C) 東龍

脂がのった黒毛和牛のサーロインに、しっかりと火を入れました。肉の香ばしさにオイスターソースが調和します。付け合わせは、パプリカ、椎茸、マコモダケ、葉付きの小蕪。

活け蝦夷鮑入り上海蟹醤あんかけご飯

活け蝦夷鮑入り上海蟹醤あんかけご飯 (C) 東龍
活け蝦夷鮑入り上海蟹醤あんかけご飯 (C) 東龍

麺飯類は、惜しげもなく蝦夷鮑がのせられた、あんかけご飯です。餡には上海蟹肉がふんだんに使われており、海の旨味にあふれています。

チャイナシャドーオリジナル杏仁豆腐

チャイナシャドーオリジナル杏仁豆腐 (C) 東龍
チャイナシャドーオリジナル杏仁豆腐 (C) 東龍

口中をさっぱりとさせる上品な杏仁豆腐は、クープ型のグラスで提供されていました。パイナップルなどのフルーツ、クコの実がトッピングされています。

上海蟹にぴったりなお酒

左が「テルモン レゼルヴ・ブリュット」、右が「古越龍山純龍」 (C) 東龍
左が「テルモン レゼルヴ・ブリュット」、右が「古越龍山純龍」 (C) 東龍

上海蟹に最適なお酒も用意されていました。

ハウスシャンパーニュの「テルモン レゼルヴ・ブリュット」(グラス 3,080円、ボトル13,750円)はオーガニックによる栽培と繊細な醸造から紡ぎ出されています。シャープな酸味とフレッシュ感が上海蟹の磯の香りに寄り添います。

「古越龍山純龍(ジュンリュウ)」(ボトル 13,200円)は見た目がワインのようなボトル。カラメルを一切使用しない8年物の原酒を中心にブレンドされており、紹興酒の香りは有していながらも、すっきりとした味わいなので、上海蟹をはじめとした海鮮料理によく合います。

手間をかけた料理

「上海蟹を味わいつくす美食の饗宴」は、上海蟹を味わい尽くせるコースとなっていましたが、安藤氏は次のようにいいます。

「実は昨年も予定していましたが、コロナ禍で提供できなかったので、今回が初めてになりました。今年の上海蟹は質、状態に関しては、例年とあまり変わりませんね。価格は、中国のゼロコロナ政策が関係しているかはわかりませんが、かなり高騰しています」

様々な調理法で提供されていますが、上海蟹の最もおいしい食べ方は次のように考えています。

「上海蟹は蒸して食べるのが一番だと思います。蟹の身、味噌、内子をダイレクトに味わえるからです。紹興酒を振って、黒酢と生姜で臭みもとれます」

特に手間をかけている料理はこちらです。

「手間がかかるのは姿蒸しです。本来なら、お客様に蟹の身をさばきながら食べていただきたいところですが、温かいうちに食べていただきたきたいので、ひとつひとつ丁寧に身をほぐし、内子と共に殻へ戻しました。蟹を自分たちで捌くことで、料理人やサービススタッフのスキルも上がると考えています」

来年も開催する予定

これだけ豪華な料理なので、ゲストの反応も気になるところです。

「提供開始してから間もないですが、予約も含めて多くの注文があります。ランチでも10コース以上が出ていて、とても人気です。今回は初めてなので、さらに改善していき来年以降も継続していきたいと思います」

当初は12月15日までという予定でしたが、好評のため12月22日にまで延長しました。安藤氏が注力する今だけの上海蟹コースを、是非とも味わってみてください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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