なぜ歴史があり、技術力の高い会社ほど、今「営業教育」が必要なのか?【法人営業大学】
■歴史があり、技術力の高い会社ほど営業力が弱い2つの理由
昨今テレワークの浸透や、それに伴う働き方改革などの影響で営業の手法がきわめて複雑かつ多様化している。そのせいもあり、営業生産性を上げられない会社が増えている。
それはなぜなのか? 当社は特別だからか? 疑問を抱えている経営者も多くいることだろう。
現在、営業の生産性が上がらない企業のひとつに「歴史があり、技術力の高い会社」がある。以下の図で記したとおり、事業力(商材力)のある会社ほど営業力が弱い傾向にある。
営業力が弱い傾向にある理由は主に2つだ。
◆引き合い対応で営業目標が達成され、体系的な営業教育の必要性を感じない
◆引き合い対応から営業活動がスタートするため、マーケット視点で物事を考える習慣を身につけづらい
特に後者の理由は大きい。
営業プロセスで違いを見ればわかるだろう。
一般的な営業プロセスは、以下4つに分類できる。とくに営業の本分であるお客様との「関係構築」そして「関係維持」が営業活動の大半を占めるのは周知のとおりだ。(人間が営業をしなければならない理由がここにある)
①見込み客発掘
②見込み客育成
③商談(課題発見・提案)
④顧客維持(契約継続・追加)
この配分はDXの時代になった現代でも同じ。
デジタルツールを使った見込み客発掘(リード・ジェネレーション)、見込み客育成(リード・ナーチャリング)、見込み客選別(リード・クオリフィケーション)の精度はデジタルの力でかなり上がっている。
そのデジタルの恩恵を受けて営業生産性を劇的にアップさせている企業はとても多い。
いっぽう、歴史があり、技術力の高い会社は引き合いが多いため、①見込み客発掘、②見込み客育成のプロセスを十分に経験しない。
③商談のリードタイムが長く、いったん契約したお客様とは長く取引する傾向が強いため、③商談や④顧客維持活動のウエイトが高いのだ。
したがって環境が劇的に変化した際に困る。見込み客発掘し、育成するための知識やスキルが不十分だからだ。
■体系的な営業教育を受けていないマネジャーは、はたして部下育成ができるのか?
それでは、歴史が浅かったり、技術力にさほど自信のない会社の営業はどうしているのか。
事業の差別化要因がなければ、待っていても仕事は来ない。
だから①見込み客発掘、②見込み客育成の精度を高めるため、常日ごろから営業教育を実施している。体系的な営業教育はもちろん、市場の変化やお客様の課題を発見するための顧客検討会、営業トークを鍛えるロープレ実習は欠かさず実施している。
営業力を常に高い水準にしておかないと、会社の存続にかかわるからだ。
いっぽう歴史があり、技術力の高い会社は、こういった顧客検討会やロープレ研修はおろか、体系的な「営業教育」も実施しない傾向にある。
さらに、体系的な営業教育を受けずにマネジャーとなったらどうなるだろうか? 部下育成しようとしても、何をどう教えたらいいかわからない。経験に基づいた心構えや秘訣を伝えるぐらいしかできないのが現状だ。
これでは営業の生産性を上げようがない。
■外部環境が変化してから「営業教育」をしても遅い2つの理由
業績に影響が出ていないから「営業教育」は必要がない……。そう考える経営者も多いようだ。実際に私の耳にも入ってくる。しかしそれは危険な発想である。
業績が落ちてからはもちろんのこと、外部環境が変化してから教育しても遅いからだ。その理由は2つある。
◆ふだんから教育を受けていない人に教育しても、すぐに育たないから
◆環境変化に気づきにくく、その変化量がどれほど自社に影響を与えるのかを予測できないから
ふだんから①見込み客発掘、②見込み客育成の活動をしていればマーケットの変化に気づく。競合他社の動きにも敏感だ。
しかしお客様からの引き合いをメインに仕事をしていると、マーケット感覚が乏しくなる。慌てて教育を受けたりトレーニングしても「時すでに遅し」となることも多い。
実際に当社へ相談に来られるお客様にも、同様のケースがある。
「今から何とかなりませんか?」
と言われても、営業組織、営業活動、営業戦略等の視点でデューデリジェンス(価値やリスクなどの調査)をすると
「正直なところ、もう1~2年はやく相談してもらいたかったです」
としか言えない先もある。どんなに技術力が高くても、だ。
このように、歴史があり、技術力の高い会社ほど、今「営業教育」が必要なのだ。
人的資本経営の時代だから、業績が好調のうちに体系的な営業教育をしておこう。劇的な環境変化に見舞われてからでは遅いからだ。
<参考スライド>