なぜ中谷正義は逆転KO勝ちできたのか パッキャオを破った元2階級制覇王者が分析
12月12日、MGMグランドガーデン内のカンファレンス・センターに作られた”バブル”で行われたフェリックス・ベルデホ(プエルトリコ)対中谷正義(帝拳)戦後、この試合をESPNの解説者としてリングサイドで見たティモシー・ブラッドリーが筆者の質問に応えてくれた。
2度のダウンを跳ね返した中谷が大逆転KO勝利を飾り、アメリカでも大きな反響を呼んだ一戦。現役時代はスーパーライト級、ウェルター級の2階級を制し、マニー・パッキャオ(フィリピン)と通算1勝2敗というライバル関係を築いたブラッドリーの目に中谷の戦いぶりはどう映ったのか。
ドラマチックな逆転KO
中谷のハートと心身両面のタフネスはすごかった。人々に勇気を与えたはずだ。
この劇的な逆転劇で、ボクサーに限らず、落ち込んでいたり、苦しい状況にいる人たちにインスピレーションを与えたんじゃないかな。あれだけのハードパンチを繰り返し浴び、ピンチを迎えながら、複数のダウンを奪い返してひっくり返してしまうなんてなかなかあることじゃない。
私も現役時代には激しい試合をした経験がある。苦境下で反撃するのには、意志の強さと決意が必要なんだ。試合後半の中谷は勝つためにはKOしなければいけないとわかっていて、リスクを冒してそれを追い求めた。その意志があったからこそ、逆転KOは可能になったんだ。
ベルデホにあんな勝ち方をしたあとだから、中谷は世界タイトルに挑戦したいだろう。今回の試合でそれに相応しいボクサーであると証明したと思う。
中谷は一度敗北を喫したテオフィモ・ロペス(アメリカ)と再戦したいという希望も話していたね。現在、ロペスが多くのタイトルを保持しているわけで、みんな彼に挑戦したいと願っている。だから、中谷とのリマッチが実現するかは私にはわからない。
ただ、中谷は世界ランキングでも上位に入っていたベルデホに勝ったわけだから、ランキングは上がるはずだし、またライト級のトップ選手と対戦できるだろう。望む舞台に辿り着けるまで、挑戦を続けてほしいと思う。
課題はディフェンス
世界チャンピオンになりたいのなら、中谷はディフェンスを向上させなければいけない。守備面では、基本的な部分で多くのミスを犯していた。相手の正面に立ち、顔面がガラ空きになってしまう場面が何度もあった。
攻撃面では素晴らしい右パンチを持っているけど、打ち気に逸りすぎる傾向が見られた。ジャブを打つ際の距離が近すぎたり、遠すぎたりするために、相手にカウンターを決められてしまっていた。あれだけのサイズがあるんだから、自身のジャブが最大限に生きる射程距離を掴めばもっと有効な武器になるはずだ。
他にもジャブを引いた際の手がガードにつながらないことなど、改良点はたくさんあると思う。今回の試合を振り返り、ジムに戻ってまたハードワークを積んでほしい。
もちろん課題はあるけど、ベルデホ戦での中谷はメンタルタフネス、耐久力、パワーを誇示した。彼が世界チャンピオンに挑む姿を見たいと思うファンはたくさんいるはずだ。私もその中の1人。中谷の次の試合を私も楽しみにしているよ。
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