19人の教授らがノルウェー国会に抗議文 ノーベル平和賞の委員会は政治家ばかり
誰がノーベル平和賞の受賞者となるかを決めるのは、「政治家ではなく専門家であるべきだ」。
ノルウェー国会(大政党ら)が選抜するメンバーには偏りがあるとして、ノルウェーの19人の教授はノルウェー国会議長に抗議文を送った。
ノルウェーの9月の国政選挙を終え、国会は委員会メンバーを新たに指名することが可能。
現在の政権は中道右派。元保守党党首であるフィーベ前委員長が今年急死したことにより、委員会の構成は繰り上げ方式で、国会の許可なしに変更された。
アンネシェン新委員長は左派である労働党推薦。委員会は中道左派色が強くなったため、首相らはメンバーの変更を望むだろう。
今、極右で右派ポピュリスト政党とされる「進歩党」の元党首であるカール・I・ハーゲン氏が、委員会のメンバーになることを希望していると連日報道されている。進歩党の推薦で現メンバーのイッテルホーン氏が続投となるか、ハーゲン氏となるか、両者の言い争いは各紙を賑わせている。
ハーゲン氏が委員会に入ることを望むのはこれが初めてではない。移民や難民の受け入れ政策などにおいて過激な言動を繰り返してきた人物であるため、もし委員会に入ることがあれば、世界を驚かせる指名となるだろう。
ノルウェーでは当たり前のように政治色が強い委員会メンバーだが、この体制を批判してきたひとりが、ノーベル平和賞ウォッチ団体を率いるフレドリック・ヘッフェルメール氏だ。
進歩党から誰が推薦されるかという議論に同氏が呆れている様子は、25日のダーグスアヴィーセン紙の報道から伝わってくる。
同氏はオスロ大学、ベルゲン大学、トロムソ大学の19人の教授の署名とともに、メンバーの選考方法において抗議文を国会議長に送った。
現在のような選考では、どうしても受賞者選抜においてノルウェーの国政や政党政策が影響してくるだろうとの懸念からだ。
「問題は、ノルウェーの外交政策において、ある程度意見が一致する代表らが集まる委員会になることです」と、オスロ大学のブテンション教授はダーグスアヴィーセン紙に語る。
ヘッフェルメール氏に問い合わせ、国会に送られた5ページの抗議文を入手した。
前委員長の異例の急死は、委員会の選考方法を複雑にさせている。
現在は労働党・保守党・進歩党の3党からの推薦でなるメンバーだが、左派野党である中央党もメンバーを指名できる可能性がある。
この日、アフテンポステン紙は、中央党からアンネ・エンゲール氏とオーシュラウグ・ハーガ氏が推薦される可能性が高いと報道。両氏ともに中央党の元党首で、複数の大臣職を経験している。
ノーベル委員会のメンバーとしての職は、「最も威信のある肩書き」とノルウェーでは報道されている。各党がお気に入りの人物の推薦に必死になるのは自然の流れとなっている。
教授らの抗議は、国会に届くだろうか。
Photo&Text: Asaki Abumi