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ノーベル平和賞の委員長が乳がんで死去 女性政治家リーダーとして活躍した人生

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
Photo: Asaki Abumi

ノーベル平和賞を授与するノルウェー・ノーベル賞委員会のカーシ・クルマン・フィーベ委員長(65)が亡くなった。現地で20日朝、委員会が現地のノルウェー国営放送局NRKを通じて発表した。

フィーベ氏が、乳がんと闘っていたことは現地では知られていた。昨年のノーベル平和賞の授与式では、委員長は欠席しており、別の委員会メンバーがコロンビア大統領にメダルを授与した。委員長が授与式に姿を現さないことは異例だった。

フィーベ氏は、2003年よりノーベル委員会のメンバーとなり、2015年より委員長に就任。ノルウェーの第二の規模の政党である保守党の元政治家であり、1991~1994年に党の初の女性党首、1989~1990年に貿易大臣を務めた。

ノルウェーと欧州との外交関係、平等政策、環境問題などに熱心な人物であり、多くのノルウェーの政治家に影響を与えた。

フィーベ氏が委員長に就任する前は、トールビョルン・ヤグランド前委員長(元・労働党党首)が委員会をリードしていた。しかし、オバマ元大統領やEUに平和賞を授与するなど、政治色が強いことで国内外から批判を浴びていた。また、劉暁波氏に授与したことにより、ノルウェーと中国との関係は悪化した。

現在の右翼政権となった後は、国会は新たにフィーベ氏を委員長として任命。委員会の変化が期待されると同時に、保守的なメンバー構成により、平和賞が「おとなしくなる」のではと懸念されていた。

委員会での10月の受賞者発表 Photo: Asaki Abumi
委員会での10月の受賞者発表 Photo: Asaki Abumi

保守党のアーナ・ソールバルグ首相は、自身のフェイスブックでお悔やみの言葉を寄せた。

昨夜、フィーベ氏が亡くなったという悲しい知らせを受けました。カーシは、保守党の先駆者でした。70年代後半に保守党青年部で初の女性リーダーとなり、91~94年は保守党の初の女性党首を務めました。保守党で最初の女性リーダーであり、新しい世代を代表する存在でした。多くの若い女性にとって、ロールモデルでもありました。知的で、器の大きな彼女と国会で仕事をすることは、私にとって大きな喜びでした

出典:Facebook. Erna Solberg

委員会の新委員長が誰になるかは、まだ発表されていない。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在16年目。ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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