右派から左派へ?ノルウェー・ノーベル委員会のメンバー
ノルウェー・ノーベル委員会のカーシ・クルマン・フィーベ委員長が乳がんで2月19日に死去した。ノーベル平和賞を選考する5人のメンバーは、ノルウェー国会により任命されている。
委員会は公には否定するだろうが、委員長のこれまでの背景や人柄、そしてメンバー構成は平和賞の選考に影響を及ぼす。
フィーベ委員長の予期せぬ死去で、関係者が懸念していたことは「次期委員長」が誰になるかだった。15日のノルウェー産業紙DNにはこのような見出しが躍った。「ノーベル委員会で保守党はリーダーと大多数を失う」。
委員会は「独立」機関であり、国会などから政治的な関与は受けていないと主張されているが、メンバーの大多数はこれまで元政治家だった。
トールビョルン・ヤーグラン元委員長(労働党の元党首・ノルウェー元首相)は、一部の政治家にとっては悩みの種だった。オバマ元大統領、EUなどに平和賞を授与し、民主活動家の劉 暁波氏においてはノルウェーと中国との関係に亀裂が入った。
2013年の国政選挙では、保守党と進歩党による右派陣営が勝利。ノーベル委員会のメンバーを交代させるチャンスが訪れた。
結果、ヤーグラン委員長が事実上の「クビ」に。「異例の降格人事」としても世界的なニュースになった。新委員長に昇格したフィーベ氏は、保守党の元党首だった。
5人のメンバー構成は各党が希望を出し、保守党から2人(右派)、進歩党から1人(右派)、労働党から2人(左派)という「右」が色濃いチームとなった。
しかし、フィーベ氏の突然の死で、メンバー構成は左の色が強くなった。
副委員長のベーリット・レイス・アンネシェン氏(労働党政権時代の秘書)は新委員長に昇格。代理のポジションにいた労働党推薦のトーネ・ヨールシュタ氏が新メンバーとして加わった。
この決定に国会からの許可は必要なかった。
これに眉をひそませたのが保守党の党員たちだった。
なぜなら、委員長の死という異例のケースの場合、国会が新メンバーを認定するという明確なルールはなかったからだ。任命手続きの手順に困惑していた人々も多かったとDN紙には記載されている。
保守党の議会メンバーのリーダーであるトロン・ヘッレラン氏(現文化大臣の夫)は、委員会から相談がくるのだろうと何か月も連絡を待っていた。しかし、委員会から連絡がくることはなかった。
結果、保守党は一度に、委員長と右派色の強い大多数を失ったのだ。
これまでの歴史で、メンバーの空席には第一次代理が昇格しており、国会が関与したケースはなかったと、委員会の秘書はDN紙に回答。
国会が蚊帳の外に置かれたことに、保守党議会リーダーのヘッレラン氏や、国会議長(保守党)は落胆の色を隠さない。
「このような場合、明確なルールを設ける必要がある。我々に相談がきていれば、新しい人物を推薦していた」とヘッレラン氏は同紙に語る。
委員会メンバーたちの後ろに隠れる政治色は、平和賞に影響する、と筆者は思う。左派色が強くなった委員会だが、今年の選挙で保守派がまた勝利すれば、来年以降のメンバー構成にメスをいれようとする可能性は高いだろう。
Text: Asaki Abumi