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世界初!ジェット&ロケット切り替えエンジン、「PDエアロスペース」が開発したデトネーションエンジン

引用:PDエアロスペース

本記事では、世界で初めて燃焼試験に成功した、ジェットとロケットの燃焼を切り替えることのできる新開発エンジンについてです。このエンジンを開発した日本企業「PDエアロスペース」についても解説していきます。

日本が世界で初めて宇宙実証に成功「デトネーションエンジン」

■宇宙開発における最大の課題「燃料と推進力」

H3ロケット打ち上げの様子©JAXA
H3ロケット打ち上げの様子©JAXA

人類を月よりも遠い火星や、さらに遠い宇宙空間にまで到達させるための技術の研究が進められていますが、その最も大きな課題の一つとされているのが燃料の問題です。皆さんも良く知るロケットは、推進剤を燃焼させることで発生するガスを後方に噴射させる反作用として前方への推進力を得ています。遠い宇宙まで十分に速く飛行するには極めて大量の燃料が必要となるため、いかに少ない燃料で大きな推進力を得ることができるか、が大きな課題となっています。

そして、従来のロケットエンジンは酸化剤を搭載し、飛行中に燃料を燃焼させています。そのため、空気中を通過する際も酸化剤を使用する必要があり、重量増加の大きな要因となっています。それでは、空気中で飛行している航空機はどうでしょうか。従来の航空機に搭載されているジェットエンジンは、空気中の酸素を利用するため、酸化剤を搭載する必要がありません。しかし、高度30km以上の空気が薄い領域では燃焼をさせることができず、ジェットエンジンのみでは宇宙空間に到達することができないのです。

そのため大気中と宇宙空間をまたがって飛行するには、打ち上げからロケットエンジンを使用するか、もしくは途中の高度までジェットエンジンで上昇し、それ以降は別のロケットエンジンを使用するしかありませんでした。まさに、飛行中の航空機からロケットを宇宙へ空中発射させる、ランチャーワンのような方式です。しかし、一つのエンジンでジェットとロケットを切り替え、地上と宇宙を往還する完全再利用型宇宙往還機は、いまだ実用化には至っていなかったのです。

■ジェット&ロケット切り替えエンジンを世界で初めて開発!

そして、ジェットとロケットの両方の機能合わせ持つエンジンを開発しているのが、日本の企業、PDエアロスペースです。同社は、航空機のように離着陸し、高度約100kmまで往復する有人宇宙飛行機の開発を行っています。

そして2017年、同社は世界で初めてとなる、大気圏内はジェットエンジン、宇宙空間ではロケットエンジンと、燃焼モードを切り替えることのできる単一のエンジンの開発に成功しています。

そして2022年には、同社は新たに回転デトネーションエンジンを搭載した、ジェット、ロケット切り替えエンジンの燃焼試験にも、世界で初めて成功しました。

デトネーションエンジンとは、火炎の速度が音速を超える爆発的な燃焼現象「爆轟」で発生した衝撃波を推進力とすることで、小型軽量、かつ既存のエンジンよりも低価格で安く高速飛行をさせることができるのです。これにより、これまでの1000倍の推力を発揮することが可能になったとのことです。

このエンジンが実用化されれば、大きな推進力を得られるのはもちろんのこと、搭載する酸化剤を減らすことや、単一エンジンで済むための重量減少が見込まれ、従来のロケットより効率の高い宇宙往還機が期待されます。

有人宇宙飛行機「ペガサス」©PDエアロスペース
有人宇宙飛行機「ペガサス」©PDエアロスペース

同社は、今回開発したエンジンを将来の宇宙往還機に搭載するべく、設立当初から試験機の開発を進めています。2029年には、有人宇宙飛行機「ペガサス」での宇宙旅行の商用化を目指しているとのことです。是非、日本のスペースXとして奮闘して欲しいですね。

次の記事でPDエアロスペースの紹介をさせて頂きます、お楽しみに!

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PDエアロスペース

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