無限エンジン「EMドライブ」原理は不明だが、燃料なしで半永久的に加速し続けられる!?(前編)
皆さんは無限に加速できるならどこに行ってみたいですか?天王星や冥王星、少し遠出をして太陽系外にも行ってみたいですね。
もしそんな夢のエンジンがあるとしたら?本記事では、常識破りの推進システム「EMドライブ」をご紹介します。
H3ロケットが描く将来打ち上げ計画、増強型H3ロケットとは?
■半永久的に加速できる「EMドライブ」が完成!?
人類を月よりも遠い火星や、さらに遠い宇宙空間にまで到達させるための技術の研究が進められていますが、その最も大きな課題の一つとされているのが燃料の問題です。皆さんも良く知るロケットは、推進剤を燃焼させることで発生するガスを後方に噴射させる反作用として前方への推進力を得ています。遠い宇宙まで十分に速く飛行するには極めて大量の燃料が必要となるため、どのようにして確保するのか、またどのように地上から打ち上げるのかなど、多くの問題が残されています。
そんな中、なんと燃料なしで半永久的に加速し続けることのできる、EMドライブと呼ばれる型破りな推進装置が注目を集めています。果たして、そんなこと本当にできるのでしょうか。実はEMドライブは物理法則では説明がついておらず、原理が未解明の力であることから大きな議論の的となっているのです。
■原理は良く分からないが、なぜか加速できる!?
EMドライブは、サテライト・プロパルジョン・リサーチ社により2001年に発表されました。テーパー形状の密閉された導波管の中に、マイクロ波を継続的に放射することにより、推進力を獲得できるとのことです。マイクロ波が反射板に衝突すると、圧力が発生し反射板に力を及ぼしますが、ここで内径に差があることで圧力に差が生じ、共鳴効果によって増幅された力を使って推力を生み出すと言われています。
すなわち、密閉された容器の中でマイクロ波を反射させるだけで、自らは何も失うことなく物体に加速度を与えるエネルギーが生まれるということです。これは、太陽電池などで電力を確保できれば、半永久的に加速が続けられることを意味しており、実現するのであれば画期的なエンジンになると考えられていました。しかし、肝心の「なぜ推進力が発生するのか」については、考案者のロジャー・ショーヤー氏からは今まで満足な説明がなされることはなかったとのことです。逆にどうやって考案できたのか非常に気になりますね。
■世界の追試験により、加速性能を実証!?
その後、EMドライブは、複数の研究機関により追試験が試みられました。
まずは中国です。西北工業大学の研究チームは2010年、2.5 kWの電力を使用したEMドライブで、720mNの推力を生み出すことに成功したと発表しています。びっくりですね。また、2016年には、EMドライブの軌道上テストも行っていたとのことです。この中国の思い切りの良さとスタートダッシュは是非見習いたいですね。このプロトタイプの推力は「マイクロニュートン〜ミリニュートン」のレベルであり、決定的な実験結果を得るために少なくとも1000倍程度の力が出るまでスケールアップしなければならなかったそうです。それにもかかわらず、その技術を「できるだけ早く」衛星技術の分野で利用できるようにするべきと発表されたとのことです。少し気が早い気もしますね。
続いてはアメリカです。2014年、NASA のイーグルワークス・チームは、中国と同様のエンジンで実験を行った結果、1kWあたり1.2ミリニュートンの推力が発生したことを発表しました。実験では、振り子状の装置にEMドライブを設置して動作させたところ、持続的な力が発生することを確認したとのこと。2016年には、米国政府がボーイングX-37BのEMドライブ版をテストしているという報道も出ています。これはもうEMドライブは実証できたといってもよいのでしょうか。
次回の記事では、EMドライブが本当の無限システムなのか?という論争の決着について解説します。お楽しみに!
【関連記事】