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NASAが光の99%の速度を出せるエンジンを考案!?無限に加速を続けるヘリカルエンジンとは?

イオンエンジン©JAXA

光は1秒で地球を7周半できるほどの速度を持っています。全ての物質は光速に近づくにつれ無限大のエネルギーが必要となるため、光速を超えることはできないと言われています。

しかし、もし限りなく光速に限りなく近づけるとしたら?もしかしたらタイムマシンも実現できるかもしれません。本記事では、NASAが考案した夢の推進器「ヘリカルエンジン」をご紹介します。

無限エンジン「EMドライブ」原理は不明だが、燃料なしで半永久的に加速し続けられる!?

■物理法則を超えた「ヘリカルエンジン」

ヘリカルエンジンは、NASAのデイビッド・バーンズ氏が考案したエンジンです。驚くべき特徴として、推進剤を必要とせずに半永久的に加速ができるのです。

原理をわかりやすくご説明すると、まず摩擦のない平面の上に箱がおかれていると想像してください。中央には赤い重りが入っており、前後に滑ることができます。この状態で箱が前後に動いた場合、重りも箱の前後の壁にぶつかるのみで、どちらか一方に進むことはできません。これは、皆さお馴染みの作用・反作用の法則ですね。

摩擦のない平面に設置された箱と重り©NewScientist
摩擦のない平面に設置された箱と重り©NewScientist

しかし、仮に箱の壁にぶつかる時に、重りの質量を調節することができたら?一体何が起こるでしょうか。例えば、前方の壁にぶつかる時は質量を重く、後方の壁にぶつかる時は軽くできた場合、結果として箱は前へ進むことができるのです。

重りが箱の前方にぶつかったとき、箱全体が前方へ移動する©NewScientist
重りが箱の前方にぶつかったとき、箱全体が前方へ移動する©NewScientist

重りの質量が軽いと箱の後方にぶつかっても移動量が少なく、結果として前方へ進む©NewScientist
重りの質量が軽いと箱の後方にぶつかっても移動量が少なく、結果として前方へ進む©NewScientist

■原理はわかったけど、そんなこと本当にできるの?

重りの質量を魔法のように変えることなんてできるのだろうか?と疑問に思った方もいらっしゃると思います。NASAのデイビッド氏は、物体が光速度に近づくと質量を得るという「特殊相対性理論」を利用しこれを実現しようと考えています。

ヘリカルエンジンではイオンを使い、重りが前方に衝突する際に強力な磁場をかけます。イオンは加速し質量を増やす一方、後方に衝突する際はイオンを減速させて質量を減らすことで、推力を得るという仕組みです。これを長時間駆動すれば、光速の99%の速度を実現できるとのことです。

しかしこのヘリカルエンジン、小さな力を生み出すだけでも莫大な電力を必要とするという欠点があるのです。例えば、100gの力(=1ニュートン)を生み出すのに、165メガワットもの電力を必要とするのです。更に、ヘリカルエンジン自体も長さ200メートル、直径12メートルという超巨大な宇宙船である必要があるのです。

更に、摩擦のない環境を用意することが必須であり、光速の99%に到達するためには長い年月をかけた加速が必要になります。

H3ロケット打ち上げの様子©JAXA
H3ロケット打ち上げの様子©JAXA

ヘリカルエンジンの実現には解決しなければならない課題が多くありますが、このようなアイデアがたくさん生まれ、着実に一歩づつ人類の技術が発展していって欲しいですね。

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