大人の日帰りウォーキング 旅の途中で立ち寄りたい お殿様も眺めた庭園と150年以上の建物は見学無料
次の宿場は、中山道で14番目になる高崎宿である。今、歩いている13番目倉賀野宿からの距離は1里19町(約4,9km)と、1時間半程で歩ける距離であり、様々なお店が立ち並び県道になっている旧中山道を歩き進む。
国道17号の高架下、その先では新幹線の高架下を潜り抜けると、町並みが賑やかになってくると共に、現在の高崎市である高崎宿に入った。
高崎は高崎城がある城下町であったので、諸大名は宿泊を避けていたとあり、本陣・脇本陣がない宿場でもあった。時代は違っても気を使うとは、このことだろうか。
高崎と言えば高崎達磨が有名である。
高崎が達磨の町になったのは、江戸中期に起こった天明の大飢饉の際に、高崎宿にある少林寺達磨寺の和尚が苦しむ農民の副業として張り子だるまの作り方を伝えたのが始まりとある。
達磨は、先ず願いを込めて片目を描き、願いが叶ったらもう片方の目を描いて祝う縁起だるまで、群馬県は達磨の生産量が日本一になっている。そういえば、達磨と言えば高崎だったよね。
中山道は高崎市の街中に入ると、東北・北陸新幹線の停車駅の高崎駅の西側を直進し、その先で西に方向を変えている。旧街道を歩いていると、街道沿いに立つ建物が比較的新しいこともあり、この場所が中山道の宿場であった面影が少ないと感じる。
高崎宿は越後国(新潟県)と佐渡へとつながる三国街道への起点であり、越後諸藩の参勤交代や越後の様々な産物の輸送経路として賑わったとある。
三国街道が越える三国峠は、日本海側と太平洋を隔てる中央分水嶺上にあり、標高が1244mであるが気象条件が厳しい難所でもある。現在では国道17号の新三国トンネル(全長1284m)で三国峠の下を通り抜けている。
群馬県から新潟県に抜けるには関越自動車道の関越トンネルを思い浮かべるが、全長約11kmもある関越トンネルには危険物積載車両に通行制限があることもあり、一般道で三国峠を越える三国街道(国道17号)は昔も今も、関東と新潟間の大動脈の1つでもある。
中山道と三国街道との追分(街道から道が分かれる所)は、高崎市内にある本町1丁目交差点であると言われているが、説明版などは見当たらないので、先へと歩き進んだ。
高崎の市街地にある整備された道路の先は、旧街道を思わせる道幅で右に左にゆったり曲がる街道らしいと感じる道を歩き進むと、古い建物に目が留まった。建物の前に説明版があるので読んでみる。
明治30年(1897年)創業の醤油醸造所の事務所と煙突と書かれており、2024年の127年も前の建物であるが、現在も営業しているのが素晴らしい。映画のロケ地になったこともあると言う建物や煙突を眺めていると、時代をタイムスリップしたような気分になる。
中山道はこの先で利根川の支流である烏川を再び渡っている。穏やかな住宅街を抜けると、橋に向かって立体交差をする国道18号が見えてきた。
歩行者は何処を歩けば良いのかと辺りを見回しながら、車道とは別に造られている歩道を歩いて橋を渡った。交通量が多いので車道と分けられている歩道を歩けるのにホッとした。
橋を渡ると歩道の脇にある階段を降りて旧中山道へと歩き進むと、下豊岡の道標があった。この場所が中山道と草津街道の追分だとある。ここから分かれる街道は信濃国(長野県)へ通じる信州街道で、草津温泉にも通じる道であったので草津みちとも呼ばれていたと、説明版に書かれていた。
明治時代以降、道路拡幅などに伴い2度にわたり移設されたが、平成10年に本来の所在地に戻されているとある。
この辺りは、旧中山道より少し離れた場所を並行するように県道が整備されているので、街道沿いには神社があったり、庚申塔があったりと当時の様子を楽しみながら歩き進んだ。
ここだよね。
今回の歩く旅で楽しみにしていた場所に着いた。上豊岡の茶屋本陣だ。
茶屋本陣とは大名や公家の為のお休み処で、当時の茶屋本陣には宿場の本陣にも劣らない豪華な家もあったとある。先程通った高崎宿に本陣や脇本陣が無かったので、この場所に茶屋本陣が必要だったのかもしれない。現在は高崎市で管理されており無料で見学できるので入らせてもらおうか。
門をくぐると正面に立派な二階建ての建物があるが、こちらは住居として使われていたそうで、右手にある離れが茶屋本陣として使われていた江戸時代後期の建物とある。
係の方に挨拶をして中に入らせてもらうと、立派なお座敷に圧倒された。
お殿様が使われる上段の間。その空間だけでも他と違う空気感が漂っているが、何故か落ち着きを感じる。
外の明るさが障子越しに差し込んでくる少し薄暗いと感じる空間に眼が馴染んでくると、床の間の上にある引き戸がキラキラと輝いているのに気付く。金箔だろうか。畳が敷かれている外廊下にでると、奥にある竹林が描かれているふすま絵の立派さにも驚いた。
お座敷から庭を眺める。何だかホッとして心地よい。
テレビもインターネットも無かった時代に人間の目を楽しませていた風景なのだろうと感じる。
「前の道路は交通量があるのですが、塀を隔てているだけなのにここに居ると静かなのですよ」
職員の方が話しかけてくれた。
何だか違う空間のように感じるのは、静けさかもあるのか。時間の流れさえ穏やかに感じる場所だけれど、もう少し、頑張って先へと歩き進もうか。
今回歩いているコース 約20km
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前回の話はこちら
東京から旧街道を日帰りで歩き繋いで群馬県へ、1日20kmを歩くひとり旅
参考URL:高崎市文化財情報