Yahoo!ニュース

もしもラグビーでドラフト会議をしたら2023【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
帝京大学の江良主将。副将の奥井とともに1年時からレギュラー入り。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 10月26日にプロ野球のドラフト会議があったのを受け、本欄にて毎年恒例の仮想「ラグビーのドラフト会議」を実施する。

 2023年12月に開幕する「ジャパンラグビーリーグワン」の「ディビジョン1」の計12チームの「ドラフト1位」をシミュレーションした。

 各クラブの状況、特徴、ポジションごとの年齢層をもとに、最適と見られる選手を独自に選んだ。リーグワン発足後の2シーズンの結果は、下記を参照されたい。

 実際のラグビー界では、ドラフト会議は実施されない。

 高校生選手の多くは大学進学を希望しており、大学生選手も卒業後に競技を続ける場合はラグビー専業のプロ選手になるか、社業にもいそしむ社員選手になるかを選ぶ。

 さらに社員選手の業種は、家電メーカー、酒造メーカー、自動車メーカーなどさまざま。つまり対象選手の雇用形態や職種が千差万別となる。

 この現状には、各チームの獲得希望選手が重なった場合にくじでその選手の交渉権を決めるというドラフト会議の形式はなじまない。

 そのため旧トップリーグ時代の2017年に初めて本企画を実施した際は、ネット上で「仮の話なので無意味では」との投稿が散見された。

 もっともこの国におけるドラフトという言葉の訴求力の高さもあり、本企画の閲覧者数は高値安定。将来が期待される若きラグビー選手の名前を広く伝える役目を担っているとの判断から、今年も開催する。

 実際には、下記に出るような実力ある最上級生のほとんどは進路に目星をつけている(厳密に言えば「未定」だが)。そのため、本欄が現実世界の進路選択に影響を及ぼすことは全くない。

 それらを前提に仮想のドラフトを展望すれば、フッカーの江良颯に指名が集中しそう。2年連続大学日本一の帝京大学で主将を張り、強靭な身体と感性をスクラムワーク、突進、こぼれ球への反応に活かす。

 他のポジションへ目を移すなら、同じ帝京大学で副将を務める奥井章仁(フランカー)、明治大学主将の廣瀬雄也(インサイドセンター)、同副将の山本嶺二郎(ロック)ら各チームのリーダーに白羽の矢が立つか。

 2~4巡目まで指名をおこなえば、各クラブが独自の視点でブレイク前夜の逸材を抜擢するか。特に「カテゴリーA」(日本代表資格のある選手)の枠で出場できる、もしくはできる予定の海外選手の動向が注目される。

※見方…チーム名(前年度順位/チームにより入替戦の結果を明記:ディビジョン1残留orディビジョン2より昇格)=選手名 所属先 ポジション 身長 体重

カンファレンスA

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(1)=廣瀬雄也 明治大学 センター 身長179センチ 体重94キロ

 昨季王者のスピアーズは、旧トップリーグから通算して一昨季まで3シーズン連続で新人賞を輩出する。前川泰慶チームディレクターは、採用時代から学生シーンの現場に加えて自軍の練習グラウンドも視察。現場の求める選手像と照らし合わせ、各地の才能を招き入れる。各ポジションにバランスよく人材が揃う。

 明大で主将を務める廣瀬は、立川理道主将が長く君臨するインサイドセンターの有望株だ。キックの飛距離がありスタンドオフもカバー可。将来的に、関係者の考える「(今後)プレーオフで勝つための選手」というピースにはまりそう。

コベルコ神戸スティーラーズ(9)=三木皓正 京都産業大学 フランカー 身長174センチ 体重95キロ

 各国の実力者を擁しながら昨季低迷のスティーラーズは、元オーストラリア代表ヘッドコーチのデイヴ・レニー氏を指揮官に招いて再出発を図っている。

 各ポジションに移籍組、各国代表経験者、「カテゴリーA」でプレーする海外選手を並べる布陣にあって、ボールを持たない時の動きで魅する職人的選手を指名。「2メートル以上の選手がいるなかで170センチ台の選手がプレーしているのって、ロマンがあるじゃないですか」と本人。大男をなぎ倒す強烈なタックルは圧巻だ。

静岡ブルーレヴズ(8)=山本嶺二郎 明治大学 ロック 身長191センチ 体重111キロ

 セットプレーの安定化をベースに工夫した攻めを魅する独自思想のクラブ。小兵選手を抜擢したり、隠れた海外出身選手を台頭させたりし、一芸に秀でた選手に活躍の場を与えてきた。

 元20歳以下日本代表主将の西内勇人氏が採用となってからは、いわゆる「ドライチ」候補と目されるタレントへも積極的にアプローチ。スクラム、ラインアウト、タックルで奮闘する期待の日本人ロックを、競合覚悟で指名か。

東京サントリーサンゴリアス(4)=江良颯 帝京大学 フッカー 身長171センチ 体重102キロ

 学生ラグビー界の綺羅星をハードトレーニングと競争の文化で鍛えるサンゴリアス。強靭さ、運動量、勤勉さを兼ね備える世代の筆頭格に食指が伸びるのは自然だ。

東芝ブレイブルーパス東京(5)=アフ・オフィナ 東海大学 フランカー 身長187センチ 体重107キロ

チームスピリットは「猛勇狼士」。接点の圧倒を伝統的な部是としてリーチ マイケルをはじめハードワーカーを擁する。高校時代から日本でプレーするオフィナは「カテゴリーA」としてプレーできそうで、激しいタックルはクラブのスタイルにマッチしそう。

三重ホンダヒート(―/ディビジョン2より昇格)=江良颯 帝京大学 フッカー 身長171センチ 体重102キロ

 人材採用に真面目さを重視する三重ホンダヒートが、リーグワン発足後初の1部昇格。ロックにフランコ・モスタート(南アフリカ代表)、フランカーにパブロ・マテーラ(アルゼンチン代表)と強豪国代表の中核を並べるなか、勝負を左右するセットプレーの核に即戦力ルーキーを指名か。

カンファレンスB

埼玉パナソニックワイルドナイツ(2)=谷山隼大 筑波大学 ナンバーエイトorセンターorウイング 身長184センチ 体重95キロ

 筑波大学主将。ジャンプ力とストライドの大きさ、オフロードパスの多彩さに加え、地上戦での献身ぶりも際立つ万能戦士。初年度はパリ五輪に向け7人制に専念する見込みも、15人制に注力すれば様々なポジションでの起用が見込める。代表選手多数のタレント集団にあっても異彩を放つだろう。 

トヨタヴェルブリッツ(6)=山本敦輝 同志社大学 左プロップ 身長178センチ 体重110キロ

 昨季は序盤にやや足踏みも、ディレクター・オブ・ラグビーだったスティーブ・ハンセン氏が練習の音頭を取り始めてから調子を取り戻した。今季はハンセン氏が総監督となりよりチームにコミット。アーロン・スミス(スクラムハーフ)、ボーデン・バレット(スタンドオフ)という、新加入する現役ニュージーランド代表の力を最適に活かしたい。

 いつの時代も、簡潔なプレースタイルを貫いた際に相手の脅威となる傾向がある。近年は他チームからの補強で各ポジションの層を分厚くするなか、左プロップにスクラムの強い新人を抜擢。公式戦における1、17番のラインナップを安定させる。

花園近鉄ライナーズ(12/ディビジョン1残留)=奥井章仁 帝京大学 フランカー 身長176センチ 体重104キロ

 昨季はレギュラーシーズン1勝で最下位と低迷。かつて日本代表を率いた向井昭吾新ヘッドコーチのもと、チームを再構築する。補強ポジションがどこかを問う以前に、献身的なプレーぶりと年上の選手をも引っ張るリーダーシップの持ち主を指名か。地元大阪出身の選手とあり、クラブの看板を担いそう。

三菱重工相模原ダイナボアーズ(10)=伊藤大祐 早稲田大学 スタンドオフorセンターorフルバック 身長179センチ 体重88キロ

 グレン・ディレーニーヘッドコーチが、猛練習を辞さぬ文化を醸成。昇格初年度の昨季は、堅い防御で上位候補を破って話題を集めた。

 今年は、過去にブレイブルーパスの攻撃組織を変革させたジョー・マドック氏を入閣させている。各地のタレント集団を組織力で凌駕するスタイルをさらに進化させそうだ。

 攻めの中心となるスタンドオフには、元オーストラリア代表のマット・トゥームアが入りそう。ただ、専任スタンドオフの日本人即戦力がいればさらに外国人枠を有効活用できそう。伊藤は世代有数の万能戦士で、このクラブのカルチャーに染まれば新境地を開くか。

横浜キヤノンイーグルス(3)=武藤ゆらぎ 東海大学 スタンドオフ 身長170センチ 体重77キロ

 旧トップリーグラストイヤー前の2020年、沢木敬介監督が就任。「エキサイティング&クオリティラグビー」と打ち出し、常にオーバーラップを作る連続攻撃やイマジネーションあふれるサインプレーを披露。ぶつかる、すぐに起き上がる、正確に球をキープするといった基本の徹底にも妥協せず、いかなる文化圏の選手にも勤勉さを付与している。

 主力組にはベテラン、移籍組、外国人が多く並ぶなか、次世代の顔となりうる若手司令塔を指名。防御網を抜け出す際のきれは秀逸。ホストエリアの横浜で育った選手でもある。

リコーブラックラムズ東京(7)=山本嶺二郎 明治大学 ロック 身長191センチ 体重111キロ

 選手には倒れてもすぐに起き上がる姿勢を求め、2025年の優勝をターゲットに適材適所の補強を重ねている。国内出身の20代の専任ロックはいないとあり、長身ながら低いタックルの得意な山本はマッチしそうだ。

その他の「上位候補」

タニエラ・ヴェア 東洋大学 フッカーorフランカー 身長185センチ 体重118キロ

為房慶次朗 明治大学 右プロップ 身長180センチ 体重110キロ

イジー・ソード 拓殖大学 右プロップ 身長190センチ 体重118キロ

ヴェア・タウモエフォラウ 京都産業大学 右プロップ 身長185センチ 体重120キロ

梁川賢吉 筑波大学 フランカー 身長188センチ 体重100キロ

鄭兆毅 天理大学 フランカー 身長185センチ 体重105キロ

村田陣悟 早稲田大学 ナンバーエイト 身長185センチ 体重104キロ

稲葉聖馬 大東文化大学 スクラムハーフ 身長166センチ 体重74キロ

北村瞬太郎 立命館大学 スクラムハーフ 身長170センチ 体重74キロ

伊藤耕太郎 明治大学 スタンドオフ 身長176センチ 体重86キロ

山田響 慶應義塾大学 スタンドオフorフルバック 身長174センチ 体重81キロ

ペニエリ・ジュニア・ラトゥ 大東文化大学 センター 身長189センチ 体重107キロ

高本とむ 帝京大学 ウイング 身長182センチ 体重90キロ

谷口宜顕 東海大学 ウイングorフルバック 身長172センチ 体重80キロ

杉本海斗 東洋大学 ウイング 身長171センチ 体重76キロ

石岡玲英 法政大学 ウイングorフルバック 身長177センチ 体重80キロ

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事