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週明けは日本海側を中心に梅雨末期豪雨・その後の早い梅雨明けか長めの梅雨の中休みの可能性は

饒村曜気象予報士
ドライアイスの煙(写真:アフロ)

日本海で低気圧が発達

 西日本から東北まで梅雨に入っている令和6年(2024年)6月30日は、梅雨前線上の低気圧が発達しながら東進しました(図1)。

図1 地上天気図(左:6月30日9時)と予想天気図(右:7月1日9時の予想)
図1 地上天気図(左:6月30日9時)と予想天気図(右:7月1日9時の予想)

 梅雨明けをしている南西諸島は晴れましたが、低気圧に向かって暖かくて湿った空気が北上した西日本~北日本は、くもりや雨となり、雷を伴った激しい雨が降りました。

 6月30日に全国で一番気温が高かったのは、香川県・高松の34.6度で、最高気温が35度以上の猛暑日の地点はありませんでした。

 しかし、北海道・女満別で33.4度を観測するなど、最高気温が30度以上の真夏日は209地点(気温を観測している全国914地点の約23パーセント)、25度以上の夏日は795地点(約87パーセント)でした(図2)。

図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月1日以降は予想)
図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月1日以降は予想)

 今年は、6月14日に真夏日418地点(約46パーセント)、6月12日に夏日825地点(約90パーセント)を観測していますが、このときの暑さは、大陸育ちの高気圧におおわれたところに、強い日射が加わってのものですので、湿度が比較的低い暑さです。

 しかし、6月30日の暑さは、北上してきた太平洋高気圧におおわれる湿った暑さです。

 熱中症になりやすい湿った暑さですので、今後は、今まで以上に熱中症対策が必要です。

 南西諸島を除いて、ほぼ全国的に雨となる7月1日は、真夏日や夏日の観測地点数は6月30日より減るものの、天気が回復する7月3日は、真夏日が478地点(52パーセント)、夏日が883地点(97パーセント)と予想されており、今年最多となる見込みです。

梅雨末期らしい大雨

 今年の後半初日の7月1日は、梅雨前線上を低気圧が発達しながら北日本を通過し、その後、前線は本州付近に南下し、2日にかけて西日本から東日本に停滞する見込みです。

 全国的に梅雨入りが遅れ、梅雨に入ったばかりですが、日本周辺の海域では、海面水温がすでに高くなっており、水蒸気をたくさん含んでいます。

 つまり、梅雨末期の豪雨が発生しやすい状態になっています。

 低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込むため、北日本は7月1日に、西日本から東日本は1日~2日にかけて大気の状態が不安定になり、雷を伴った非常に激しい雨が降る所がある見込みです。

 気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までに大雨警報を発表する可能性について、「高」「中」の2段階の情報を発表しています。

 この早期注意情報によると、7月1日は北海道から九州まで、日本海側を中心に「高」や「中」となっており、特に北陸や中国地方、九州北部は「高」となっています(図3)。

図3 大雨に関する早期注意情報(上:7月1日朝~夜遅く、下:7月2日)
図3 大雨に関する早期注意情報(上:7月1日朝~夜遅く、下:7月2日)

 また、7月2日は島根県で「高」のほか、中部地方から九州北部まで「中」が発表されています。

 24時間で200ミリ以上の大雨となるところがありますので、各地とも土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に厳重に警戒してください。

関東甲信地方の梅雨明けは

 関東甲信地方は、6月21日に梅雨入りしましたが、梅雨入り後の東京は、雨の日が少なく、晴れて気温の高い日が多くなっています。

 ウェザーマップが発表した16日先までの天気予報によると、7月1日~2日の雨のあとは、しばらく傘マーク(雨)がありません(図4)。

図4 東京の16日先までの天気予報
図4 東京の16日先までの天気予報

 黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が多く、降水の有無の信頼度が5段階で一番低いEや、二番目に低いDが含まれている予報です。

 この予報が、晴れ寄りに変われば、「7月になると梅雨の長い中休みに入る」か、「7月早々に早い梅雨明けとなる」ということになりますが、天気予報のもととなっている数値予報と呼ばれるコンピュータの予測が日によって変わっており、気象庁の関東甲信の梅雨を担当する予報官は、非常に難しい判断を迫られると思います。

 これは、太平洋高気圧が強まってくるものの、梅雨前線を東北地方まで押し上げるほどではないと考えられるからです。

梅雨入り・梅雨明けの速報値と統計値

 気象庁では、梅雨のない北海道を除いた日本を12の地域(沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、北陸、東海、関東甲信、東北南部、東北北部)に分け、気象予測をもとに「○○日頃梅雨入りしたと見られます」とか、「○○日頃梅雨明けしたと見られます」いう速報値を発表しています。

 そして、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討をし、9月の初めに梅雨入りと梅雨明けを統計値として確定しています。

 速報値と統計値は異なります。

 梅雨入りの日がはっきりしないと、梅雨入りを特定しません。

 統計資料が整備されている昭和26年(1951年)以降では、昭和38年(1963年)だけ、四国地方と近畿地方について梅雨入りを特定していません。

 梅雨明けの日もはっきりしないと、梅雨明けを特定しないこともあります。平成5年(1993年)の関東甲信地方は梅雨明けを特定しませんでした。

 梅雨明けは、夏を迎えるという意味があることから、秋の気配が表われてくる頃とされる立秋(8月8日頃)を過ぎると日の特定はしません。

このため、梅雨明けを特定しないことは、それほど珍しくはなく、梅雨明けが遅い北日本ほど梅雨明けを特定しない年が多くなります。そして、近年増加傾向にあります。

 梅雨明けを特定しなくても、梅雨明けがなかったわけではありません。関東甲信地方は、平成5年(1993年)5月30日に梅雨入りし、特定できなかったものの、どこかの時点で梅雨明けしたので、翌6年(1994年)6月7日に梅雨入りがあったのです。 

 関東甲信地方の梅雨明けの平年は7月19日ですが、これまでに、一番早く梅雨明けしたのは平成30年(2018年)の6月29日です。

 記録的に早い梅雨明けにはなりませんが、8月に梅雨明けという年も少なくないことから、しばらくは、蒸し暑い梅雨に注意が必要です。

関東甲信地方の遅い梅雨明けと速い梅雨明け(1951年~2023年)
 遅い梅雨明け(1993年を除く)   早い梅雨明け
1位:8月4日(1982年) 1位:6月29日(2018年)
2位:8月2日(2003年) 2位:7月 1日(2001年)  
3位:8月2日(1998年) 3位:7月 4日(1978年)
4位:8月1日(2021年) 4位:7月 5日(1973年)
5位:8月1日(2007年) 5位:7月 6日(2017年)

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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