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繰り返される悲劇…エンゼルスの勝ち頭が遠征先で死去の衝撃

菊田康彦フリーランスライター
6月23日のカージナルス戦で今季7勝目を挙げたスキャッグス。これが最後の白星に…(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 なんともいたたまれない気持ちになった……。メジャーリーグの公式サイトなどが、ロサンゼルス・エンゼルスのタイラー・スキャッグス(27歳)が遠征先のテキサス州で死去したと伝えたのは、7月1日(日本時間7月2日)のことだった。

前日にはカウボーイ姿で遠征先に移動

 今季でメジャー7年目を迎えていた左腕のスキャッグスは、ここまで15試合に先発してチームトップの7勝(7敗)を挙げ、防御率4.29を記録。前日は大谷翔平らチームメイトとともにカウボーイ風のファッションに身を包み、テキサス・レンジャーズとの対戦に向けてテキサスに移動したばかりだった。

 カリフォルニア生まれのスキャッグスは、2009年のドラフトでエンゼルスから1巡目(全体40番目)指名を受け、プロの道に進んだ。翌2010年のシーズン中にアリゾナ・ダイヤモンドバックスへトレードされ、2012年にメジャーデビュー。2013年オフにシカゴ・ホワイトソックスを絡めた三角トレードでエンゼルスに復帰するも、2014年に左ヒジのじん帯再建手術を受け、翌2015年シーズンを棒に振った。

 しかし、2016年にメジャーのマウンドに返り咲くと、昨年は自己最多の8勝をマーク。今季は6月23日のセントルイス・カージナルス戦で7勝目を挙げるなど、初の2ケタ勝利も視野に入っていた矢先の訃報だった。

2ケタ勝利6回のカイルも遠征先で急死

 エンゼルスでは、昨夏まで所属していた内野手のルイス・バルブエナ(享年33歳)が、オフのウインター・リーグ出場のために戻っていた故郷ベネズエラで、交通事故に巻き込まれて死去。バルブエナはその時点では“無所属”だったが、メジャーリーグでは21世紀に入って現役選手の訃報が相次いでいる

 スキャッグスの場合は、滞在していたホテルで遺体となって発見されたのだが、死因は現時点では明らかになっていないものの、事件性はないという。この話を聞いて真っ先に思い出したのは、2002年6月に遠征中のシカゴのホテルで、就寝中に心臓発作を起こして死去したカージナルスのダリル・カイル(享年33歳)だ。

 カイルは当時メジャー12年目で、2000年の20勝を含め2ケタ勝利6回、オールスター選出3回。前年は16勝を挙げ、この年も亡くなるまでに5勝をマークしていた。筆者とは年齢が近かったこともあり、個人的にも大きな衝撃だったのを今でも覚えている。

日本でもダイエー藤井らがシーズン中に死去

 なお、エンゼルス在籍中に死去した選手は、過去に2009年のニック・エイデンハート(享年22歳=投手、自動車事故)、1978年のライマン・ボストック(享年27歳=外野手、他殺)、1977年のマイク・マイリー(享年23歳=内野手、自動車事故)などがいる。エイデンハートとボストックの場合は、いずれもシーズン中に起きた悲劇だった。

 日本でも2000年に福岡ダイエー(現福岡ソフトバンク)ホークスの藤井将雄(享年31歳=投手)が日本シリーズ前に肺がんで、1969年にはアトムズ(現東京ヤクルトスワローズ)のルー・ジャクソン(享年33歳=外野手)がペナントレース真っ最中の5月にすい臓壊死でこの世を去っているが、シーズン中に他界した現役選手というのは多くない。(独立リーグでは2016年8月にベースボール・ファースト・リーグの兵庫ブルーサンダース、薬師神真之が25歳で突然死)。

 もちろんいつ亡くなろうとも悲しい出来事に変わりはないが、スキャッグスのように先発ローテーションで回っていた投手がシーズン中にいきなりこの世を去るというショックは、ナインやファンにとっては計り知れないものがある。あらためて故人のご冥福をお祈りします。

(文中敬称略)

・関連リンク

メジャー通算114本塁打のバルブエナが事故死。21世紀に入って続く現役選手の死

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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