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メジャー通算114本塁打のバルブエナが事故死。21世紀に入って続く現役選手の死

菊田康彦フリーランスライター
今季はエンゼルスで大谷翔平(左)ともプレーしたバルブエナ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 またしても海の向こうから悲しい知らせが飛び込んできた。今季途中までロサンゼルス・エンゼルスでプレーし、メジャー11シーズンで通算114本塁打を放ったルイス・バルブエナ(33歳)が自動車事故により12月6日に死去したと、メジャーリーグの公式サイトなどが伝えたのだ。

マーリンズのエースはシーズン中にボート事故で死去

「またしても」と書いたのはここ数年、メジャーリーガーの事故死が相次いでいるからだ。昨年1月22日には、前年まで3年連続で2ケタ勝利を挙げていたカンザスシティ・ロイヤルズのヨーダノ・ベンチュラが、故郷のドミニカ共和国で自動車を運転中に横転事故を起こして25歳でこの世を去った。

 その前年、2016年はまだシーズン中の9月25日に、マイアミ・マーリンズのホセ・フェルナンデスが乗船していたボートが岩礁に衝突。こちらも、まだ24歳の若さで亡くなっている。2013年の新人王で、この年もそこまで16勝8敗、防御率2.86、253奪三振の好成績を残していたエースの死は大きな衝撃をもたらし、球団は当日の試合を中止にしたほどだった。

 さらに遡ると、2014年10月26日にはセントルイス・カージナルスの外野手、オスカー・タベラスも母国のドミニカ共和国で、車を運転中に事故死(享年22歳)。その年の5月にメジャーデビューしたばかりで、ナ・リーグのチャンピオンシップシリーズでは、第2戦で同点ホームランを打っていた。

元WBCオランダ代表外野手は弟と口論の末に刺殺

 事故に遭ったのではなく殺されてしまったのが、シアトル・マリナーズの外野手で、母国オランダの代表として2009年のワールド・ベースボール・クラシックに出場したこともあるグレッグ・ハルマン(享年24歳)。彼はメジャー2年目のシーズンを終え、オランダに戻っていた2011年11月21日に、同じアパートに住んでいた弟と口論になった末に、刺殺されている。

 おそらく「現役メジャーリーガーの死」で最もよく知られているのは、慈善活動などを積極的に行う選手に与えられる賞にその名が冠されているロベルト・クレメンテだろう。プエルトリコ出身のクレメンテは、通算3000安打を達成した1972年のオフに、ニカラグア大地震への救援物資供給のために搭乗していた飛行機が墜落し、38歳で命を落としている。

 筆者がこの手の訃報に初めて接したのは、メジャーリーグに興味を持ち始めて間もなかった1978年のこと。エンゼルスの外野手、ライマン・ボストックが知人女性の夫に浮気相手と誤解され、射殺されてしまったという事件だ。

 当時27歳のボストックは、この年からFAでエンゼルスに移籍したばかり。シーズン序盤は期待とは裏腹にまったく打てず、自らサラリー返上を申し出たという逸話もあった。それが徐々に調子を上げて、8月半ば以降は3割前後の打率をキープしていた矢先のことだっただけに、海の向こうの会ったことのない人物であっても、小学生だった筆者にはかなりショックな出来事だったのを記憶している。

 その翌年、1979年夏にはニューヨーク・ヤンキースの正捕手で、キャプテンでもあったサーマン・マンソンが自家用飛行機の墜落事故で、32歳で死去。だが、1980年代は事故などで現役メジャーリーガーが他界したという話は聞かず、その後は1993年の春季キャンプ中にクリーブランド・インディアンスの3選手がボート事故で命を落とすという悲劇はあったものの、こうした話題は珍しいものだった。

21世紀に入って続く現役メジャーリーガーの死

 ところが21世紀に入ると、先に名前を挙げた以外にもダリル・カイル(2002年、心臓発作=カージナルス、享年33歳)、スティーブ・ベックラー(2003年、サプリメント服用による合併症=オリオールズ、享年23歳)、コーリー・ライドル(2006年、自家用飛行機衝突事故=ヤンキース、享年34歳)、ジョー・ケネディ(2007年、高血圧性心疾患=ブルージェイズ、享年28歳)、ジョシュ・ハンコック(2007年、飲酒運転事故=カージナルス、享年29歳)、ニック・エイデンハート(2009年、自動車追突事故=エンゼルス、享年22歳)など、現役メジャーリーガーの訃報は後を絶たなくなった。

 今回のバルブエナは8月にエンゼルスを解雇されてからはメジャーでプレーすることはなかったものの、このオフは故郷ベネズエラでウインターリーグに参加しており、その最中の悲劇だったという。昨年は東京ヤクルトスワローズにも在籍していたカルロス・リベロが運転していた車には、横浜ベイスターズと千葉ロッテマリーンズでプレーしたこともあるホセ・カスティーヨも同乗しており、この事故により37歳で命を落としている。バルブエナとカスティーヨ、2人の冥福を祈るばかりだ。

※文中の日付はすべて現地時間

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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