【山田孝之&キヨサク対談】沖縄の音楽フェスで無農薬の野菜で作った料理を提供した理由
【山田孝之さん&MONGOL800 キヨサクさん対談】
「これからの時代に生きる力を身につけたい」と俳優・山田孝之さんが全国にいる様々な分野の達人の元を訪ね、そこで得た知識をメンバーへと共有するコミュニティ『原点回帰』。その活動のひとつとして、“帰長”である山田さんがメンバーと取り組んでいるのが自然農栽培だ。
2021年の春に『原点回帰』がスタートした時点では山梨の畑でひとり黙々と畑を耕していた山田さん。あれから2年以上が経ち、現在は石川、山梨、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、京都、香川、広島、山口、佐賀、鹿児島、沖縄など国内14箇所の畑をメンバーと共に耕し、その土地や気候にあった作物を育て収穫している。
これまでメンバーだけでシェアしていた作物を「いろんな人に食べてもらいたい」と『原点回帰』が選んだのが、山田さんが懇意にしている、MONGOL800のキヨサクさんらが地元沖縄で開催する音楽フェス『MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!! 23』(以降:『モンパチフェス』)への飲食ブースとしての出店だった。
筆者は11/3〜5に宜野湾マリーナ・トロピカルビーチに特設された会場へ足を運び、山田さんとキヨサクさんに話を聞くことができた。
開催の3日間、朝から晩まで仲間と共に働く
『モンパチフェス』が開催されたのは11/3〜5の3日間。実はこの期間中、『原点回帰』の文字が大きく貼られた飲食ブースには山田さんの姿があった。お客さんから注文が入る度にフィッシュ&チップスにタルタルソースをかけたり、焼き芋アイスをスタッフに差し出したり、『原点回帰』メンバーと一緒になってお客さんたちに料理を提供していた。
その様子を見ながら『原点回帰』のメンバーに話を聞いてみると、「帰長(山田さん)は前日の仕込みから後片付けまでされているんです。ああいう姿を見ると、僕たちも頑張ろうと思います」とのことだった。
『原点回帰』の飲食ブースを訪れるキヨサクさん
キヨサクさんが『原点回帰』のブースを訪れたのはモンパチフェスの開催2日目だった。その時の様子を紹介。
山田孝之さん(以下:山田さん)「いらっしゃいませ。『原点回帰』でございます(笑)」
MONGOL800 キヨサクさん(以下:キヨサクさん)「何が美味しいんですか?」
山田さん「『フィッシュ&チップス』『ヴィーガングルテンフリーカレー』『焼き芋アイス』の3種類、どれも全部手作りのメニューです」
キヨサクさん「じゃあ最初に2つ、デザートに焼き芋アイスを。3つ全部ですね(笑)」
キヨサクさん「『フィッシュ&チップス』、美味しい。このお魚は自分たちで釣ったやつ?」
山田さん「そうですよ。沖縄の海で釣ったカンパチとかマグロとかカジキとか」
沖縄で繋がる二人
対談の冒頭で、山田さんとはどういう仲なのかを尋ねると「もう、こっちでは夜な夜な(笑)」とキヨサクさん。
お二人の出会いから教えていただいた。
キヨサクさん「一回、モンパチ主催のカウントダウンライブに遊びに来てくれて。それからはプライベートで会うようになったりしてますね」
山田さん「あと、実は僕が過去に一瞬だけバンドをやったことがあって、その時に『ミュージックステーション』に出させていただいて」
キヨサクさん「そうだそうだ(笑)」
山田さん「東京ではライブ以外でお会いしてないですね」
キヨサクさん「そうだね、『ご飯行こう』『飲みに行こう』って言ってるけど、東京では会えてない。本当に沖縄だけで会ってるね」
『原点をもう一度見る』ことが先に繋がっている
キヨサクさん「『原点回帰』で無農薬の野菜作りなどの活動をしていることについては話を聞いていて。Instagramとかで動きをチェックしてるんですけど。やっていることが壮大すぎて、追いつけてない部分があるというか。めちゃくちゃ先を見てる、先を行ってるという感じがしています」
山田さん「違いますよ。原点に回帰してるんです(笑)」
キヨサクさん「そうだね。『原点をもう一度見る』というのが言葉的にはあるんだろうけど。それがぐるっと回って、今の時代ではその活動の方が先に行っていることに繋がっているというか」
沖縄の文化を「チャンプルー」した音楽フェス
今ではすっかり沖縄の風物詩になっている「モンパチフェス」が始まったのは2009年。キヨサクさんにこの音楽フェスを始めたきっかけについて教えていただいた。
キヨサクさん「その頃はまだ沖縄に音楽フェスがなかったんです。僕たち(MONGOL800)は現在結成25周年で、これまで北海道の『ライジングサン』や、『フジロック』など、全国あちこちのフェスに出させていただいたことで、その土地土地の魅力を感じてきて。『沖縄で僕らが音楽フェスをやったらどうなるんだろう』という考えと、あとは単純に地元沖縄の人に楽しんでもらいたいなと思って始めることにしました」
キヨサクさん「最初は『ライフワークにしたくないな、自分たちも楽しみたい』という思いがあって2年おきにしていたんです。イベントの名前も『なんとかロックフェス』という名前はつけないでおこうと最初に決めて。沖縄の民謡の方々や伝統音楽の方などジャンルを問わず、チャンプルーというか、混ざり合った方が沖縄らしいし、楽しいんじゃないかなという基軸があります」
今回、『原点回帰』が「モンパチフェス」に出店することになった経緯について教えていただいた。
山田さん「僕がお願いしたんです。キヨサクさんが『モンパチフェス』をまたやると聞いて、『そこだ!』と。みんなで全国のいろんな箇所で畑をやっていて、それぞれの畑で採れたものをメンバーで分け合ったり、それぞれの土地で収穫祭とかをやっていたんですけど、何かメンバーで目標を立てるということは重要なことだし、あくまでコミュニティではあるんですけど、僕らがやっていることを知っていただくために、フェスは最適なんじゃないかと思って」
山田さん「あとは、やっぱりみんなでやると楽しいじゃないですか。すぐ隣にも飲食ブースがあったり。『原点回帰』のメンバーは仕事はバラバラですが、みんなで一緒に経験してみたいと思って。僕も、今回のように飲食の仕事をするのは15歳の時にアルバイトしていたハンバーガー屋さん以来です。今年40歳になったので、25年ぶり」
キヨサクさん「しかも、このフェスへの初参加が、“出店”という」
山田さん「そうなんですよね。ステージに立つんじゃなくてフードを出している(笑)」
キヨサクさん「飲食ブースを『ガンガン切り盛りしてる』って周りの人から聞いてびっくりしましたよ」
山田さん「初日は朝9時半に入って、10時間以上店舗にいましたね」
キヨサクさん「すごい(笑)」
山田さん「ブースを離れたのはトイレに1、2回行った時だけで。初日の昨日はキヨサクさんにも会ってないし」
キヨサクさん「そうだ、会ってない(笑)」
食材だけでなく使う調味料にまで製法や原料にこだわる
山田さん「フェスは毎年いろんなところでやるけれど、沖縄って行きたい場所じゃないですか。今回、『原点回帰』のメンバーはスタッフとして3日間通しで働く人もいるし、1日だけ働いてあとはフェスを楽しむ人もいます。フェス開催中の3日間で『原点回帰』のメンバーが100人以上ここに来るんですよ。普通にチケットを買ってフェスを楽しんで、自分たちで育てた野菜で作った料理をお客さんとしてここで食べる」
キヨサクさん「話をいただいて、『是非』と。『出店するのは初めて』と聞いていたので、どんなものを引き出しとして持ってきてくれるんだろうと思ってたんだけど、無農薬の野菜や、自分たちで釣った魚を出してくれたり」
山田さん「メンバーみんなで釣った魚ですね」
キヨサクさん「そういう背景も知っていたので、ちょっと嬉しいですね」
キヨサクさん「誰かがこの魚を獲って、みんなで捌いて、それが目の前に料理として出る。それこそ原点なんだけど、1周2周回ってそれが贅沢というか。獲ってきた人や作り手が見える。それだけでエネルギーが違うと思うし」
今回、『原点回帰』の飲食ブースではフィッシュ&チップス、オーガニックカレー、焼き芋アイスの3種類のメニューが提供された。こだわりは無農薬の野菜や自分たちで釣った魚という食材だけでなく、調理する油や酢、塩、胡椒、砂糖などにも全て自然で無添加のものを使っている。
無農薬の料理を提供する飲食ブースがあるという意義
「モンパチフェス」の主催として、『原点回帰』の飲食ブースが今回参加したことについて聞いてみた。
キヨサクさん「お客さんがこれだけ情報があって選べる時代なので、いろんなフードブースがあっていいと思います。それこそ沖縄の泡盛だったり、伝統的な昔からのものもあるし。その中に『原点回帰』のフードが選択肢としてあることは我々としてもありがたい。プラス、出店だけでみんなが掲げている、大事にしているものをお客さんにここで食べてもらうことによって、考えるきっかけになる。それがたまたまフェス飯だったとしても、すごい嬉しいんじゃないですか。いろんな出合いがあると思うので」
山田さん「僕は、3日間連続で『フジロック』に参加したり、いろんなフェスに行ってるんです。今回、『原点回帰』で『モンパチフェス』に出店させていただくにあたり、メンバーでどんなメニューを出そうかと話し合いました。『片手でお酒を持つから、片手でも持てるメニューがいいんじゃないか』などの意見も出たんですが、でもそういう考えの人たちは他にもいるから、僕たちとしてはそこは他のみなさんに任せて、僕らは『原点回帰』として何ができるかというと、フェスでの食べやすさよりもモノにこだわる」
山田さん「僕なんか、フェスに行ったら初日は好き勝手に『バーガー食べて』『ポテト食べて』とやるんですよ。お酒も飲むし、疲れてくるんですよ。3日目くらいに絶対カレーとか食べたくなるんですね。今回我々が用意したヴィーガンカレーは1500人分あったので仕込みは大変でしたけど、作っておけば会場ではスピーディーに出せるメニューなので、そういうことも考えて決めました」
キヨサクさん「1500人分!(笑)」
山田さん「焼き芋アイス、フィッシュ&チップスも1200人分とかですね」
山田さん「10/31に仕事を終えて、その日の夜にメンバーが調理をしている厨房に行って、その日はひたすらゆで卵の殻を剥いてました。次の日は朝からひたすらタマネギをみじん切りにする作業をしたり」
キヨサクさん「このフェスに出店しているブースの中で一番苦労してるんじゃないかな(笑)。みんなはオペレーションとか考えてやると思うんだけど、ここは材料もそうだけど、手間暇惜しまずやってますよね。ましてや本人が、タマネギを何個みじん切りにしたんだっけ?」
山田さん「数百個です(笑)」
キヨサクさん「卵も数百個剥いて。それだけ見てもみんなが食べる価値があると思うし」
山田さん「大変でしたけど、楽しいです。『原点回帰』のメンバーも初めてのことばっかりなので」
キヨサクさん「やりがいあるよね。お客さんも楽しむ、お互いの需要と供給がマッチして」
山田さん「『原点回帰』の活動自体、文化祭みたいなものなんですよ。『今回は芋掘り』『今回は田植え』という感じで。特に今回はその集大成みたいなもので、この祭りを盛り上げるために、ここにメンバーで集まって、みんなで調理してお客さんに出して。フェスに携わる皆さんとメンバーでここで一つになれている事が嬉しいですね」
「『モンパチフェス』はこれから毎年開催したい」
これまで2年おきに開催していた『モンパチフェス』だが、「これからは毎年やろうと思っています」キヨサクさん。
キヨサクさん「今まで2年に一度の開催だったのですが、これからはこの宜野湾で毎年定着させていけたらと思っています。これまで、キャスティングのためにイベントをやっていくのは本末転倒だと思っていたのでそうしてたんですけど、ここから毎年やろうかなと」
山田さん「フェスをやるとなると、1年間ずっと当日までの準備がずっと必要ですよね」
キヨサクさん「そう。だからライフワークになってしまうけど、我々もバンドを25年間ずっとやってきて、こうやって地元で1年に1回お祭りやりたいなと思って。是非、毎年『原点回帰』で参加をお願いします」
山田さん「とりあえず3日目が終わってから『こう言ってくださっています』とメンバーに話してみます(笑)。今回、都合があって参加できなかった人がたくさんいたので、みんな『やるぞ!』となると思います」
第9期『原点回帰』メンバーが募集
現在、国内14箇所で無農薬自然農法を行う『原点回帰』。11月18日(土)には第8期となる新しいメンバーを募集する。
対談の最後に、キヨサクさんに『原点回帰』へご自身が参加する可能性について聞いてみた。
キヨサクさん「いや、普通に考えてますよ。それこそ、何か一緒にできないかなぁって思ってます」
『原点回帰』 第9期メンバー募集要項
募集期間/2023.11.18(土)〜11.25(土)
応募に必要な書類などを添え、「原点回帰」(https://about.gentenkaiki.jp )からアクセス。
問い合わせ:株式会社 原点回帰
担当・伊月(イヅキ) mail:izuki@gentenkaiki.jp
<現在畑がある場所は以下の通り>
石川県能登エリア
山梨県富士川町
埼玉県さいたま市
神奈川県横浜市
千葉県柏市
愛知県豊川市
大阪府和泉市
京都府宮津市
香川県高松市
広島県尾道市
山口県萩市
佐賀県神埼市
鹿児島県志布志市
沖縄県中部
沖縄県名護市
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