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山田孝之&水原希子/「好きなこと」を大事にする二人が佐賀県・神埼の畑で有機農業を楽しむ 

秋吉健太編集者

【山田孝之さん&水原希子さんインタビュー】

俳優・山田孝之さんが“生きるためのスキル”を学び、それをメンバーにシェアするというコミュニティ『原点回帰』。

筆者は昨年4月、山梨県の畑を訪れ『原点回帰』のスタート時から彼の活動を紹介してきた。

あれから一年が経ち、この春から佐賀県・神埼のとある場所で新しい畑をスタートさせるという山田孝之さんと、一緒に農作業をするために畑に来ていた水原希子さんに話を聞くことができた。

日本を代表する俳優として活躍する山田孝之さんと、ファッションモデル・女優として絶大な人気を誇る水原希子さん。なぜ、今回この二人が佐賀県の畑で農業を行うのか訊ねてみると、水原さんは山田さんの生き方に感銘を受けからなのだそう。

今回、『原点回帰』のメンバーと山田孝之さんが新しく畑を始めた場所は九州・佐賀県の神埼。今回は山田さんの友人である水原希子さんも参加となった
今回、『原点回帰』のメンバーと山田孝之さんが新しく畑を始めた場所は九州・佐賀県の神埼。今回は山田さんの友人である水原希子さんも参加となった

「近しいものを感じる」という二人

水原さんが「やってみたいことを全部やる!」とさまざまなことにチャレンジする番組『キコキカク』で一緒に滝行を行った二人。映像の中ではお互いに『近しいものを感じる』と話していたのが印象的だった。

水原さん「雰囲気。なんだろう、言葉にするのは難しいですね」

山田さん「確かに言葉にするのは難しい。何か感じるというか(笑)」

極寒の中、一緒に滝行を行ったことでお互いの距離が近くなったのだそう。

山田さん「その前はドラマで共演したけれど、そんなに喋ることもなくて。希子ちゃんの番組で久々に会ったと思ったら、いきなり一緒に滝に打たれるという(笑)」

水原さん「私はそれで心の距離が縮まったと思います。あの時は3回滝に打たれたんですけど、最後は結構辛くなっていたんですね。寒さを必死に耐えて、体も震えてきて勝手に動き出すし、どうしようもない状態になっているんです」

二人で一緒に体験した滝行の話を振り返る
二人で一緒に体験した滝行の話を振り返る

番組では3月の冷たい水が流れる滝に打たれる二人の姿が映し出され、3回目は二人一緒に滝に打たれる様子が紹介されていた。

水原さん「3回目の滝に入って、最後に『ふうっ』て力が抜けた時に最後に隣にいてくれている山田さんの魂じゃないけど、温もりみたいなものを感じたんですね。その時にあったかい気持ちになって。この感覚を共有できる人はいないので。それはやっぱり特別だなと思いましたね」

山田孝之は不思議な人

水原さんに山田孝之さんの印象について訊ねてみた。

水原さん「動物的なカンをお持ちでらして」

山田さん「はははは(笑)」

水原さん「私も割とそういう風に『人に何を言われようが、自分の好きなことをやらずにいられない』んですが、内なる情熱、パッションのようなものを沸々と感じるというか。唯一無二ですよね。不思議な人だなと思ってます(笑)」

山田さん「あなたもですよ(笑)」

水原さん「そうかな(笑)」

山田さん「多分不思議な人だと思われてると思うから。他の人からは」

水原さん「芸能界ってある意味すごく特殊な場所で、私は『なんか馴染めないな』とずっと思っていたし、『ここに自分がいていいのかな』という風に何か自分の中で壁を作ったりとか、距離みたいなものを感じていたんですね。業界自体に対して」

水原さんは山田さんの生き方に感銘を受けたのだそう
水原さんは山田さんの生き方に感銘を受けたのだそう

そんな時、山田孝之さんの生き方を知ったことが彼女にとって大きな意味を持ったのだという。

水原さん「山田さんみたいな方が、芸能の仕事と本当に自分のやりたいことを両立されていて、発信されていて、動物的なカンで生きてらっしゃるというのを見た時に、『自分もこのまま好きなことをやっていていいんだな』っていう風に思わせていただきました。いろんな意味で心強い方だなと思って尊敬しています」

山田さん「恐れ多い」

水原さん「ふふふ(笑)」

『原点回帰』メンバーが九州エリアで新しく展開するのは佐賀県・神埼にある畑
『原点回帰』メンバーが九州エリアで新しく展開するのは佐賀県・神埼にある畑

芝居をする前のルーティーン

「今年はこれからいっぱい芝居をするんです」と山田さん。『原点回帰』で得た経験は、芝居の方にも何かいい影響を与えるのだろうか。

山田さん「どうなんですかねぇ。どう影響するか。でも、こういうコミュニティをする前から、いつからかわからないんですけど、芝居をする前に僕には必ずルーティンがあって」

水原さん「へぇ、知りたいです」

山田さん「毎回芝居をする前に目を閉じて、今いる場所からブワッと宇宙というか空の方、どこかの星に行くようなイメージなんですけど。太陽の方だな。その時感じる太陽の方にバーっと行って、体を頭の方から真っ二つに割って、その中に光をもらって、体を閉じて元に戻して今いる場所にすっと戻ってきてから芝居をやる、という。あくまでイメージですよ」

水原さん「すごい(笑)」

山田さん「それを何年もずっとやってたんですよね」

水原さん「面白いですね」

山田さんのルーティンに感心する水原さん
山田さんのルーティンに感心する水原さん

『原点回帰』の畑にはいつもそばに神社がある

筆者はこれまで『原点回帰』の取材で山梨県や山口県にある彼らの畑をいくつか訪れたが、近くには必ず神社があった。

神埼の畑から歩いてすぐの場所にある白角折神社
神埼の畑から歩いてすぐの場所にある白角折神社

山田さん「どの神社に行っても必ず同じなんですけど、毎回『いま生きている人も、これから死ぬ人も、死んだ人も、ずっと穏やかでいられるよう、それだけ見守って欲しい』ということしかお願いしていないんですけれど」

畑仕事の合間、休憩時間にみんなで神社へ。途中、道の傍には菜の花が咲いていた
畑仕事の合間、休憩時間にみんなで神社へ。途中、道の傍には菜の花が咲いていた

コロナ禍で訪れた変化

水原さんのインスタグラムを見ると、彼女がスキューバーダイビングをする際に撮影した映像がアップされている。

山田さん「希子ちゃんはいま、海が必要なんだね。希子ちゃんのインスタグラムをしょっちゅう見ていたら、アップされていたあのオレンジの小さな生き物も『あ、確かに可愛いかもな』と思えるようになってきた(笑)」

水原さん「そうなんですよ!(笑)」

本人曰く「私には海が絶対に必要なんです」と水原さん。

水原さん「海は過酷なんです。道具は重いし、やっぱり危険なところもあるし。ある意味修行みたいな部分もあったりするので『なんでこんなキツイことやるんだろう』と思うこともあるんですけれど、海の中に入ったら帳消し、全部チャラになるというか(笑)」

約2年前から世界を覆ったコロナ禍で、水原さんの中にはある変化が訪れたのだそう。

水原さん「山田さんじゃないですけど、『あ、これなら自分の人生の中でやりたいと思えるもの』を大事にするようになりました。仕事かプライベートかということではなく、なんでも『やりたい』か『やりたくない』か、『これは自分の人生に必要か』『このことに自分はピンときているか』ということを、コロナ禍になりめちゃくちゃ考えるようになったんですね」

水原さんはコロナ禍で命の危機を感じたことで、時間に対する考えも変わったのだそう。

水原さん「最初はいまのように情報がなかったので、命の危機を感じたんですよ。その時に『生きなきゃ』という本能というか『時間には限りがある』ということを思い知らされて。例えば超メジャーなドラマや映画のお仕事としても、自分がその物語や役にときめいていなかったら、やったとしてもある意味自分を傷つけているし、いいパフォーマンスができるわけもないので、どれだけ自分が日々パッションを持って生きていけるかということを考えて仕事もプライベートも時間を意識するようになりました」

「てんとう虫がいる」(水原さん)「さっきから足元を行ったり来たりしてるよね」(山田さん)と自然と触れ合うことを楽しんでいた
「てんとう虫がいる」(水原さん)「さっきから足元を行ったり来たりしてるよね」(山田さん)と自然と触れ合うことを楽しんでいた

水原さん「最近、徳之島でクジラを見たんです。いままでクジラの夢を見るとオーディションがある時でも『あ、絶対受かる』と思ったり、『今日は絶対いいことある』『今回の仕事はうまくいく』という風に思わせてくれる、私にとって幸福のシンボルだったんですね」

海のことになると話が止まらない水原さん
海のことになると話が止まらない水原さん

水原さん「何回も夢の中でクジラがはねるシーンを見ていて、先日実際に幸福のシンボルの本物を目の前で見た時に、『人生ってやろうと思えばここまでいけるんだ』と思ったんですね。自分が信じた正しいことをしていたらそれをちゃんと現象として形にして見せてもらえるんだって」

山田さん「この二人の話、大丈夫かね(笑)」

水原さん「なりがち(笑)」

山田さん「『何言ってんだ? こいつら』という風に思われますよね(笑)」

水原さん「こっちに行きがちですね、やばい(笑)」

という同じような感性を持つ二人。ここからは再度『原点回帰』についての話を。

「生きるためのスキルを学びたい」とスタートした『原点回帰』

昨年4月にスタートし、一年が経った『原点回帰』について聞いてみた。

山田さん「芝居の仕事は一年の半分でいいなと思っていて、それ以外の時間で何をするかというので、生きるためのスキルを学びたいと思って『原点回帰』をはじめたんですね」

山田さんは『原点回帰』を通し「帰人」と呼ばれる仲間を集め、畑などのオフラインだけでなく、自分が学んできた生きるスキルを映像としてシェアしたり、帰人メンバーとオンライン上で集まったりもしている。

山田さん「『原点回帰』を通して人や場所との繋がりがどんどん増えていっています。やったことがないことばかりだから、色々と大変だったりはするんですが。本当はもっと仕事を減らしたい(笑)。去年はほとんど芝居の仕事をしてなかったから、今年はいっぱいあるんですけど。だからこそ、こういう風に土に触れたりすることが大事だと思っています。抜きどころというか。抜くし、もらえるし。『原点回帰』は僕にとって、とても大事な場所だと感じています」

「常に助け合いですしね。サポートがないとできないから」(山田さん)「確かにやりたいと思っててもできるもじゃないし」(水原さん)
「常に助け合いですしね。サポートがないとできないから」(山田さん)「確かにやりたいと思っててもできるもじゃないし」(水原さん)

取材当日、畑には地元九州エリアの帰人メンバーだけでなく、遠くは東京から参加されている人の姿もあった。

山田さん「今日も初めて畑にいらっしゃった方に『場を作ってくれてありがとうございます。じゃなきゃ農業に触れるなんてことはなかったから』と言われたりして。僕ら場を作っているだけなんですけど、みんな感謝しあえる状態になってます。『みんないてくれてありがとう』、みたいな(笑)。全国に畑ができてきているから、その土地土地で作ったものをみんなで送りあえたら最高だなと思ってますけどね」

『原点回帰』の帰人メンバーと一緒に汗を流す山田さん
『原点回帰』の帰人メンバーと一緒に汗を流す山田さん

この日、神崎で新しくスタートする畑にはこれから作物を育てるための畝(うね)を作るべく、帰人メンバーが集まっていた。水原さんは農作業をするのは今回がほぼ初めて。

水原さん「私はここには『畑仕事をする』ということだけを聞いて着替えを持って来たんですけど、それ以外なにも聞いてなかったです(笑)」

山田さん「俺も希子ちゃんが『一緒に畑仕事をしてみたい』ということを聞いたので、いいんじゃないかということで」

畑で初めてのトラクターを操る水原さん
畑で初めてのトラクターを操る水原さん

モデル・女優として活躍する水原さん。いつ頃から農業に興味があったのだろうか。

水原さん「自分が食べる物について考えるようになった時に、どういう風に野菜が育って、どういう風に運ばれてくるのかをこの2年くらいで考えるようになって。自分でやる勇気はまだないけれど、体験させてもらえる機会があるんだったらすごくいい体験ができると思って今日ここにやってきました」

スコップを手に畑を耕していく
スコップを手に畑を耕していく

「やっぱり土っていいですね。ほっこりするというか」と水原さん。畑を眺めながら、思い出したように自分の幼少期の頃の話をしていただいた。

水原さん「私、子どもの時に変わった幼稚園に行っていて。園児たちは裸でマラソンさせられたり、乾布摩擦をやらされていたんですよ」

山田さん「女の子も?」

水原さん「女の子も」

山田さん「すげえ(笑)」

水原さん「そう。めっちゃ寒い時でも、みんなで乾布摩擦をやるんです。あとは泥団子を作って綺麗な形に並べたり。少し変な幼稚園だったんですけど」

山田さん「あ、でもそれは素晴らしい」

水原さん「いま思えば、幼稚園の園児たちの体を鍛えるためにそれをやっていたんだと思うんですけど」

山田さん「きっとそうだね」

水原さん「当時は『すごく変なことをさせるなぁ』としか思ってなかったんですけど、いま考えると、私体が丈夫なんですよ。風邪とかもう何年もひいてないし。やっぱり子どもの頃どれだけ菌に触れているかということがすごく大事だというのを何かで読んだんですね。その時に私が子どもの頃に土に触れていたことも関係していたのかなぁと思った時に、『なんかすごい土に触れたいな』という、もしこれから家族を作る機会があるとしたら毎日、、、」

山田さん「裸で乾布摩擦(笑)」

水原さん「ははは(笑)。子供には毎日乾布摩擦して土に触れさせたいと思っています」

慣れた手つきでトラクターを操る山田さん
慣れた手つきでトラクターを操る山田さん

水原さん「家族ができるとそういう感覚も変わってくるんじゃないかと思うんですが、どうですか?」

山田さん「以前、家族で沖縄に行った時に、船から海に息子を放り投げましたからね。いつも家の中にいるから『(菌に)触れとけ!』と思って(笑)」

水原さん「自分は海が怖いのに(笑)」

山田さん「そう。自分は足がつかないと『ジョーズに喰われる』と思って怖いんですけどね」

帰人メンバーの話す九州弁が聞こえてきてほっこり
帰人メンバーの話す九州弁が聞こえてきてほっこり

この春から新しく畑をスタートした佐賀県・神埼の印象について二人に聞いてみた。

山田さん「いや、めちゃくちゃいい場所ですよね。それこそ『気がいい』というか」

水原さん「さっき近くの神社に行った時に『あぁ』と思いました。『な〜んだそういうことね』と。最初来た時は建物もあるし、車も沢山停まっていたので『そういう場所なんだ』と思っていたんですけど、でもこの畑からすぐそばに見える山も力強くて『なるほど』と思ったというか」

山田さん「山と神社に挟まれてる」

佐賀県天然記念物白角折れ神社のクスノキ
佐賀県天然記念物白角折れ神社のクスノキ

生きるためのスキルを身につけるということ

今回の作業は畑を耕し、作物を植えるための畝を作るというものだった。途中、ゴミが絡まったトラクターを力強く持ち上げ、ゴミが絡まった刃を清掃するために部品を手際よく取り外していく山田さん。

山田さん「だってシンプルな作りですもん。パソコンじゃないんだから(笑)」

地面に膝をつけ、手際よくトラクターを分解清掃する山田さんの姿に「生きるためのスキル」という言葉が頭に浮かんだ。昨年春に「これから生きるためのスキルを身につけたい」と言っていた山田さんだが、『原点回帰』での一年の活動を通して着実にその力を身につけているように感じた。

山田さん「少ーしずつですね。でも一人じゃできないです」

動きが鈍くなったトラクターを分解清掃して再び元通りに
動きが鈍くなったトラクターを分解清掃して再び元通りに

『原点回帰』の活動のひとつとして、山田さんが全国にいる達人のもとを訪れ、いろんなことを学びそれをメンバーにシェアしている。最近はどんな達人から何を学んだのだろう。

山田さん「野草を食べている方のところに行きました。それからそこらに生えている草にも自然と目がいくようになりましたね」

沖縄在住で草の案内人として活動している、かわしまようこさんを訪ね、食べられる野草について教えていただいた(写真提供/近 秀幸)
沖縄在住で草の案内人として活動している、かわしまようこさんを訪ね、食べられる野草について教えていただいた(写真提供/近 秀幸)

インタビュー中、筆者の足元を指差す山田さん。

山田さん「足元に生えているそちらの草は食べられますよ。野蒜(のびる)ですね」

身近にある食べられる野草たちについて学んだ(写真提供/近 秀幸)
身近にある食べられる野草たちについて学んだ(写真提供/近 秀幸)

山田さん「あとは本も出されている松尾タカシさんというヒップアップアーティストの方の元に歩き方を学びに行ったり。常に歩き方を意識することで、健康寿命と寿命を同じにしていくというもので」

「人間、ずっと歩くわけじゃないですか。生活するためには必要なことですから、食を気にするのと同じように歩き方は大事だなと」(山田さん)(写真提供/近 秀幸)
「人間、ずっと歩くわけじゃないですか。生活するためには必要なことですから、食を気にするのと同じように歩き方は大事だなと」(山田さん)(写真提供/近 秀幸)

山田さん「健康寿命と寿命には日本人で平均で12年くらいのずれがあって。歩けなくなって、寝たきりになって介護が必要となっていくんですよね。生きているけど、ずっとベッドの上みたいな。そうならないために、普段の歩き方を学んでいく必要があるという」

水原さん「いや、でも私も最近同じこと考えてた! すごい不思議。嫌だなと思ってたの」

「歩き方、大事なんですね」(水原さん)。山田さんの学んできた歩き方に興味津々
「歩き方、大事なんですね」(水原さん)。山田さんの学んできた歩き方に興味津々

『原点回帰』を始めたことについて

畑仕事以外でも、『原点回帰』を通してさまざまな生きるためのスキルを身につけている山田さんの話を興味深く聞いていた水原さん。

水原さん「『原点回帰』がどういう内容をするかっていうのはわからなくても、『簡単なことじゃない』っていうのはやっぱりわかるじゃないですか。それを全国いろんな場所で始めてるって聞いたら、もう何か楽しみというか、本当に『どこまで行っちゃうんだろう?』って(笑)」

山田さん「山に帰るかも(笑)」

水原さん「このまま山に帰って出てこなくなっちゃうんじゃないかとか、20年後に出てきた時には毛むくじゃらになっちゃってるんじゃないかとか(笑)」

山田さん「いや、それは20年かからない(笑)」

水原さん「それか狼に育てられて四つ足で歩いてるとか」

山田さん「ありうる」

温かな春の日差しの中、畑には優しい空気が溢れていた
温かな春の日差しの中、畑には優しい空気が溢れていた

今回、水原さんに『原点回帰」の帰人メンバーに実際に会ってみた感想を聞いた。

水原さん「皆さんすごくフランクで、めちゃくちゃ干渉して来られるわけでもなく、何か困っていたら助けてくださったり。『この場所を一緒に作ろうね』という人たち同士で同じ方向を向いているのが伝わってきました。気持ちいいですね、その感覚に触れるっていうのは。なかなかないと思うので」

山田さん「帰人メンバーはみんなブログも書くし、自分達でイベントも企画されるし、ほんとすごい方達です」

『キレイになれる』と思って農作業

「農業は初めて」という水原さんだが、誰かに指示をされるのを待つわけではなく、常に自分からやるべきことを見つけ、鍬やスコップを手に試行錯誤を繰り返しながら作業がどんどん上手くなっていく様子がうかがえた。

水原さん「皆さんのことを見ながら、見よう見真似で始めて入って行きましたけど、思っていた以上に楽しかったです」

「最初は『疲れるかな?』と思ってたんですけど(笑)、大丈夫でしたね」(水原さん)
「最初は『疲れるかな?』と思ってたんですけど(笑)、大丈夫でしたね」(水原さん)

水原さん「私は音楽を聴くのが好きなので、途中から音楽を聴きながらやったんですが、そうするとモチベーションも上がるなと思って自分のことも再確認できました」

途中からヘッドホンを装着して作業を始めた水原さん。何を聴いていたのか訊ねてみた。

山田さん「気になったー、俺も」

水原さん「気になった?」

山田さん「どういう曲を聴いてるのかなと思って」

水原さん「『レゲトン』みたいな曲を聴いてました(笑)」

山田さん「レゲトン? レゲトンって何?」

水原さん「こう、『ドンタドンタ ドンタドンタ』っていう、ちょっとラテンっぽい感じの音楽が今回の農作業には向いているのかなと思って」

山田さん「けっこう速いテンポの曲なんだ」

水原さん「アップテンポのラテンっぽい音楽だとけっこうイケるなぁと思って、踊っているような気持ちでモチベーションを上げて作業してました」

山田さん「同じ動きだから、リズム作った方が作業やりやすいもんね」

ヘッドホンでレゲトンを聴きながら作業する水原さん
ヘッドホンでレゲトンを聴きながら作業する水原さん

水原さん「あとは『身体がキレイになりそう』って思ってやってました」

山田さん「なるほど」

水原さん「『ヒップアップ、ヒップアップ』って思いながら。疲れると『キレイになれるから。キレイになれるから』と思いながら作業してました(笑)」

畝を作るために干した草を土の上に並べていく
畝を作るために干した草を土の上に並べていく

水原さん「でも、本当にこの短時間で今まで知らなかったことを知れたのがとにかく嬉しいのと、あとこの畑が今後どうなっていくかを知りたいです。これからどんな野菜が植えられて、どんな風に育っていくのか」

山田さん「ここの畑は九州の帰人メンバーがメインで自発的に動き出すから、彼らが何を植えたいかによるんですが、例えば春からだとキュウリを植えるんですが、キュウリはやばいですからね。山梨の畑でわかってるから」

水原さん「なんでやばいんですか?」

山田さん「もう、どんどん出てくるから、キュウリは。すごいスピードで大きくなるから早めに収穫しないと。あっという間に大きくなるから。ズッキーニみたいに」

トラクターを操り、畝となる土を形成していく山田さん
トラクターを操り、畝となる土を形成していく山田さん

山田さん「そうなると、スカスカになるから。キュウリは収穫が追いつかないんですよ。空芯菜なんて収穫をやってもやっても追いつかない。『もう食べきれない!』みたいな(笑)」

水原さん「すごい! でもなんか嬉しいですねそれは」

黙々と作業を続ける
黙々と作業を続ける

有機農法の第一人者・菌ちゃん先生

『原点回帰』で農業をする際に、山田さんをはじめ帰人メンバーが有機農法を学んだのが「菌ちゃん先生」の名前で親しまれる長崎県「菌ちゃんふぁーむ」の吉田俊道さん。



取材日、神埼の畑には菌ちゃん先生も訪れ、帰人メンバーにアドバイスをしていた。

山田さん「吉田先生には山梨や大阪の畑にも来ていただいたんですね。『この畑はこういう土だから、こういう野菜を育てたらいいんじゃないか』と教えてくれるので、本当にありがたいです」

「菌ちゃん先生」こと、長崎県で「菌ちゃんふぁーむ」を営む吉田俊道さん。明るいキャラクターで帰人メンバーからも大人気
「菌ちゃん先生」こと、長崎県で「菌ちゃんふぁーむ」を営む吉田俊道さん。明るいキャラクターで帰人メンバーからも大人気

山田さん「もうみんなのアイドルであり、神様です。毎回吉田先生が畑に来られる度に『あー! 菌ちゃんだー!』ってみんな言ってます(笑)」

水原さん「私は全然存じ上げなかったんですが、みなさんが菌ちゃん先生に握手を求められているのを見て、『あぁ、そういう存在の方なんだ、、、』と(笑)。畑で菌に優しく語りかけていらっしゃる姿が可愛くて印象的でしたね」

菌ちゃん先生から有機農法を学ぶ様子
菌ちゃん先生から有機農法を学ぶ様子

水原さん「菌とか見えないものだけど、この地球に生きていて同じ生命としてちゃんと思いやる、通じ合おうとするという、『そういうことができる』と信じられることが人間として美しい部分だと思うんですね。そういう心を持っていらっしゃる人が私は好きですし、キュンとしました。吉田先生が菌たちに語りかけている姿を見て『ここなんだな』と思いました」

お昼はみんなで一緒にお弁当を食べる
お昼はみんなで一緒にお弁当を食べる

神埼の畑での農作業を終えて

今回、初めての農業体験をした水原さん。とても楽しく、他の人にも味わって欲しいと思ったのだそう。

水原さん「作物を作るためにこういう事をやるんだというプロセスを全て見せてもらえたことが衝撃的でした。次は友達を連れて来たいですね。これを広めたいというか、感じることだと思うので」

山田さん「笑笑笑」

畝が完成!
畝が完成!

水原さん「私は今回参加したばっかりですけど、次は友達を4人くらい連れてきたいと思いました。どんどんこの概念を広めていきたい」

山田さん「(『原点回帰』は)いろんなところに畑があるので、好きな場所に好きなタイミングで行ってください(笑)」

水原さん「そうですね。そういうのに興味を持っている友達がいっぱいいるので。私の大切な人たちにもっとこの世界をシェアしていけたら。この輪が少しずつ広がっていって、とてもいいコミュニティがどんどんできあがっていったら、なんて素晴らしいんだろうと思いました」

「竹と雑草を肥料としたノンケミカルな畑が日本中に増えていって、とてもいいことだと思いますけどね」(山田さん)、「本当にいいことですよね」(水原さん)
「竹と雑草を肥料としたノンケミカルな畑が日本中に増えていって、とてもいいことだと思いますけどね」(山田さん)、「本当にいいことですよね」(水原さん)

インタビューの終盤、突然思いついたように山田さんが口を開いた。

山田さん「わかったぞ俺は。山とか土に俺はこうやって希子ちゃんを呼んでるんだ。それで希子ちゃんは俺を海に呼んでるんですよ」

水原さん「あ、そうそう!(笑)」

山田さん「俺は『海は怖い』って思ってましたからね。地球の7割は海なのに。『海には近寄らない方がいい』って思ってました。でも海に入って小さな生物に出会ったりすることで、その生き物たちと共存するわけですよね。多分『海に入れ』って言われてるんですよ」

そこで二人の名前の話になった。“山田”孝之に“水原”希子。

山田さん「俺は山と田んぼに希子ちゃんを引き摺り込もうとしてるんですよ(笑)」

水原さん「そして私は水に引き込もうとしています(笑)」

そして3月19日(土)より、この佐賀県・神埼の畑など九州・中国エリアで一緒に活動してくれるメンバーを募集するために『原点回帰』の第4期メンバーが募集される。

取材終了後、機材を片付けて帰る挨拶をしようとした際、「九州・中国エリアのみなさんに伝えて欲しい」と山田さんが駆け寄って来られた。あわてて手帳とペンを用意しようとしたが「伝えたいことはこれだけです」と笑顔で山田さん。

「みんなで、一緒に野菜を作って楽しみましょう」

『原点回帰』 第四期メンバー募集

期間/2022.3.19(土)〜3.26 (土)
応募に必要な書類などを添え、「原点回帰」(https://about.gentenkaiki.jp )からアクセス。
問い合わせ:株式会社 原点回帰
担当・伊月(イヅキ) mail:izuki@gentenkaiki.jp


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編集者

編集者としてのキャリアは出版、web合わせて約30年。雑誌「東京ウォーカー」「九州ウォーカー」、webメディア「Yahoo!ライフマガジン」など雑誌・webメディアの編集長を歴任。街ネタやおすすめの新スポットなどユーザーニーズを意識した情報を、それらの合わせ持つストーリーと共にお届けします。

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