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大麻栽培免許が申請された 申請はどうやって行われるのか

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(ペイレスイメージズ/アフロ)

11月28日、時事通信より「大麻栽培免許を申請=しめ縄など材料で-三重県神社庁長ら」と題する記事が報じられた。

大麻に関する犯罪が紙面を賑わす中、それでも栽培に踏み切ろうという覚悟だ。はっきりいって、栽培する大麻は、いわゆる麻薬成分をほとんど含まない品種である。それでも農地には、フェンスで囲いを設け、見回りを行う方針だ。吸ってもハイにはなれない。薬物乱用などはできない。ゆえに近づいても無駄である。ようするに、ハイリスク、ノーリターンなのである。

かねて神事には大麻が使われていた。しかし戦後、大麻取締法により栽培が禁止され、許可された農家だけが栽培することになる。現在、我が国の栽培農家は、およそ30である。十数年前には100はあったのだが、ここまで減ってしまった。そのため近年では、9割を中国産の輸入品や化学繊維に頼っている。我が国の精神的支柱である神道の儀式が、中国産や化学繊維によって行われているのである。由々しき事態である。

10月、鳥取県から栽培許可を受けた男が大麻所持の疑いで逮捕される事件が発生した。それを受けて厚生労働省は、「ご注意ください! 大麻栽培でまちおこし!?~大麻の正しい知識で正しい判断~」というパンフレットを発行している。まるで大麻にはビジネス的価値はないといいたげな内容だ。しかしパンフレットの9ページにもあるように、大麻取締法は「国内に存在する麻農家を保護するため」に制定された法律である。そのため許可を受けた者は「大麻取扱者免許」によって、大麻を栽培することができる。不正所持、不正利用がいけないのであって、そういうことをした人間をしょっぴけばよいだけである。厳格に。

すでに厚生労働省は、都道府県に対して、栽培許可には「これまで以上に慎重かつ十分な検討」を行うよう要請しているとのことだ。三重県は3週間をめどに可否を判断するようである。

申請窓口は、各都道府県の薬務課か保健所である。薬務課で申請書をもらい、そこに必要事項を記入する。申請書それ自体はいたってシンプルだが、あわせて必要書類を揃えたり、対策を講じたりと、いろいろステップがある。しかし基本的には、許可できない理由がないのであれば、県は免許を発行しなければならない。大麻取締法は「国内に存在する麻農家を保護するため」に制定された法律だからである。

一般社団法人北海道産業用大麻協会は、免許取得に必要な書類をまとめている。協会のHPに書かれているように、「麻を農作物として栽培し、加工し、販売するという一連の流れを考えて事業計画を立てられるかどうかがポイント」となる。

まず必要になる書類は、医師の診断書である。「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」でないことを証明しなければならない。また、申請者の履歴書も必要である。過去に「禁錮以上の刑に処せられた者」は栽培できない。未成年も無理である。

それから、盗難防止策を記載した書類が必要になる。栽培場所を中心とした平面図、施設平面図および現地案内図を書くとともに、いかなるセキュリティ対策を行うかを講じなければならない。加えて、栽培目的と使用目的を記載した栽培計画書、ならびに販売計画書も必要だ。作っても売れないのであれば、許可が下りない。このあたりが厳しく調べられるところになりそうである。

そして、大麻草を抜き取った後の繊維と種子以外の物の処分計画書が必要になる。これらが揃って、ようやく申請を行うことができる。ようするにきっちりやらないと、許可は下りないということだ。

今回の申請に、まったく落ち度がないとしよう。それでも許可が下りない場合はどうすべきか。いうまでもなく、法による判断を仰ぐしかない。法は国民が一定の秩序のもと、自由に振る舞うことができるように制定されている。法や条例に定められていない限り、行政は国民の権利を侵害してはならない。裁判によって、行政裁量の範囲を逸脱していないかどうかが、問われなければならないのである。

べつに『伊勢麻』振興協会は、もめごとを起こそうと思って申請を行っているわけではない。必要だから栽培したいといっているだけである。行政の存在目的は、公共の目的の実現である。良識ある判断が下されることを望むばかりである。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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