【新茶直前!号外②】今年の新茶は早い?京都の茶産地「和束」からレポート
わぁ!絶景!!!
京都から届いた茶畑風景の写真に思わず声がでてしまいます。
前回の鹿児島(記事はこちら)に続き、茶産地の新茶直前情報!
今回は、こちらの絶景写真を送ってくださった京都の茶産地、和束(わづか)の生産者さんと、宇治の茶商さんにお聞きしました。
歴史ある茶産地、京都
京都のお茶、といえば全国的にも有名な「宇治茶」です。
京都府南部に位置する宇治は、日本における茶の栽培の歴史の始まりとも言える場所です。
平安時代に中国から伝わったお茶。
その後、鎌倉時代には、禅宗の僧「栄西」が中国で学んだお茶の良さを日本に広めます。そして、栂尾(とがのお)高山寺の「明恵上人」にお茶の実を贈り、京都で茶の栽培が始まったと伝えられています。
その後、宇治が茶の栽培に適していることがわかり、宇治が一大産地となります。
16世紀後半には宇治で「覆い下栽培」と呼ばれる栽培法が開発され、鮮やかで、濃い緑色でうまみの強い茶が生まれ、これが今の日本特有の抹茶や玉露の栽培に繋がっています。
宇治がなかったら今の日本茶はなかった、と言っても過言ではないでしょう。
では、「宇治茶」はどんなところで生産されているのでしょうか?
※覆い下栽培・・・被覆(ひふく)栽培とも呼ばれ、茶畑に覆いをかけて日陰を作ることで、抹茶や玉露、かぶせ茶などの原料となる茶葉にうま味や鮮やかな色を持たせる栽培方法。
意外と広い「宇治茶」の産地
昨年、子どもと一緒に宇治茶のオンラインイベント「親子で宇治茶レンジ」に参加した時のこと。
その中に「こども宇治茶検定」と呼ばれるテストがあるため、事前に『宇治茶大好き』という冊子で親子で準備していました。
冊子を読んでいると「あれ?京都だけじゃなくて奈良県、滋賀県、三重県のお茶も宇治茶になるの?」と子どもがびっくりして聞いてきました。
ん?そういえば・・・と京都府茶業会議所のホームページをみると、
とあります。
今は、それぞれの県の産地として商品になっているものも多いですが、「宇治茶」と一言でいっても産地は様々。意外に思われる方も多いかもしれません。
京都のお茶は宇治市だけじゃない
京都では宇治市だけでお茶が作られているイメージがあるかもしれませんが、京都には沢山の茶産地があります。
今回ご紹介する、和束町(相楽郡)のある京都府南部は、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市、久世郡久御山町、綴喜郡の井手町・宇治田原町、相楽郡の笠置町・南山城村と広範囲です。
和束を含むこちらの地域は、近年とても有名なのですがご存知でしょうか。
2015年に文化庁により和束町を含む山城地域が「日本茶800年の歴史散歩」として日本遺産に認定され、注目が集まりました。(詳しくは日本茶800年の歴史散歩 公式ウェブサイトをご覧ください)
今回、和束の細井農園の細井さまにご協力いただき、茶畑の写真を撮影していただきましたが、どれを見ても絶景です!
綺麗に整えられている茶畑の数々。これだけ沢山あるということは、茶畑を管理している方々が目を配り日々努力されている証でもあります。
小学校の音楽の教科書の「茶つみのうた」のページにも、和束町のある京都府相楽郡の茶畑風景の写真が掲載されています(この写真と同じだー!と親子で感動♪)。
そして、この地域のみならず、京都市や京都府北部の福知山市、綾部市、舞鶴市、京丹後市などでもお茶は生産されています。
京都の和束(わづか)のお茶について
和束のお茶の特徴を、細井農園の細井さんに伺いました(和束自慢をどうぞ!)。
そうなんですね!「Aさんの茶葉は1kg当りこの値段が付いた、B さんの茶葉はこうだった」、と日々生産者のみなさんが切磋琢磨している様子が目に浮かびます。
この急斜面の多い茶畑、足腰がかなり鍛えられそうです(運動不足の私にはかなりきつそうな・・・)。それが生産者のみなさんの元気の秘訣でしょうか。
この景色を見ると、空気もお水も、環境全てが人にもお茶にもきっと良い影響を与えているのだろうと感じられます。
京都のお茶の特徴
和束を含む京都のお茶について、宇治市で茶の販売をされている利招園茶舗の利田さんにお尋ねしました。
宇治茶ならではの栽培方法のノウハウが各生産者さんごとにあるとのこと。生産者さんごとのお茶の違いを飲み比べるのも楽しそうです!
今年の京都の新茶は早い?
そして一番気になっている、新茶の時期についても伺いました。
と、生産者の細井さん。4月に急に寒くなると茶摘みの時期が遅れるのだそうです。
宇治の茶商の利田さんにもお聞きしたところ、
と、やはり新茶の時期は平年より早くなりそう、とのことでした。
新茶の大敵の「霜(しも)」は生産者さんはもちろん、より良い原料を仕入れたい茶商さんも気が気ではありません。
この時期は急に冷え込んだりするため、油断できない日々が続くそうです。
茶摘みカウントダウン期の作業とは
生産者の細井さんによると、茶摘み前の時期は次のような作業をされているそうです
茶摘み前の今の時期もこんなに沢山の作業があるのですね。
和束ならではの作業としては、天候や茶葉の生育状態を見て、被覆のタイミングや工夫をすることと、その地形による苦労があげられるそうです。
山間地のため茶畑が急斜面で狭く、大きな機械で摘み取ることができません。そのため、2人で持って新芽を刈り取る機械「可搬摘採機」を使っているところが多いとのことです。
私も日本茶インストラクターの研修で、2人で持つ巨大なバリカンのような「可搬摘採機」を何度か使ったことがあります。重い!音が大きい(エンジン音で相手の声が聞こえない)!歩くスピードがわからない!転びそう!と言っている間に、茶畑を一畝、虎刈りにしてしまったことが・・・。すみません・・・。
機械で摘む場合、ちょうどよい速度で、適度な深さで刈らないと、新芽でない硬い葉まで刈り取ってしまい、良いお茶の原料になりません。
研修用に用意して下さった場所なので虎刈りでも問題なかったのですが(それでも申し訳ないです)、実際にやると本当に大変です。私だったら急斜面は転がり落ちてしまいそうです・・・。あの重労働を新茶の時期は毎日何時間も・・・と思うと気が遠くなります。
生産者さんに感謝しつつ、心してお茶を飲まねば!
新茶の時期のスケジュール<生産者さんの場合>
では、新茶がスタートしたら、生産者さんはどのような一日を過ごされるのでしょうか?
細井さんの場合はこんな感じだそうです。
終了時間が「未定」というのがなんとも恐ろしいです・・・。
車中泊ですか・・・睡眠時間をカウントするの、やめます・・・。
このスケジュールを1か月。そして、その後も続くのですね。
新茶独特のフレッシュ感ではなく、うま味や深みが重視される抹茶と玉露は、煎茶とは栽培方法も違うため茶摘みの時期も違うそうです(抹茶と玉露については後で記事にする予定です)。
新茶の時期のスケジュール<茶商さんの場合>
宇治の茶商の利田さんのスケジュールをうかがいました。
荒茶と呼ばれる煎茶などの原料を買い付けしたら、すぐに仕上げ加工に入るとのこと。新茶を早く消費者のもとへ届けるため、スピーディーに商品にしているのですね。
長期間にわたり茶葉の買い付けや仕上げに携わる茶商さんは、また別の工夫が必要なのですね。
京都の新茶が店頭に並ぶのはいつ?
利田さんによると、茶市場の新茶の初取引はまだ決まっていないそうです。平年は4月27日ごろだそうですが、今年は4月22日ごろに早まるのではないかとのことでした。
今年は4月末までには京都の新茶がお店にならびそうですね!
この景色を目に浮かべながら、京都の新茶を飲むのが楽しみです!
では、次回は日本一の生産量を誇る静岡の最新情報をお届けします。お楽しみに!
参考:公益社団法人 京都府茶業会議所ホームページ
『宇治茶大好き』京都府茶共同組合発行
取材協力:「細井農園」細井堅太さま、「利招園茶舗」利田直紀さま
【おまけ写真】後日、細井さんよりいただいた和束の覆下栽培の茶園。
日陰を作りそこで伸びた新芽を手で摘みます。そして玉露や碾茶(抹茶の原料)に加工します。