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ブッフェ(バイキング)でタッパーに詰めて持ち帰ると犯罪? 持ち帰りがダメな大きな理由

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

ブッフェ(バイキング)で持ち帰り

ブッフェ(バイキング)を利用したことがありますか。

ブッフェは、ブッフェレストランでは終日にかけて行われていますが、ブッフェレストランではなくてもランチやディナーに行われていることがあります。ほとんどの方はホテルや旅館の朝食でブッフェを利用したことがあるのではないでしょうか。

食べ放題店で「料理を持ち帰る」トンデモ客、タッパーを持参 法的問題は?/弁護士ドットコム

ブッフェは自分で料理をとって食べるスタイルです。もしも勝手に持ち帰ったらどうなるでしょうか。

弁護士ドットコムの記事では、ブッフェスタイルの飲食店で、タッパーやビニール袋を持参して持ち帰ろうとした客について、吉田要介弁護士が、勝手に持ち帰ると窃盗罪にあたる可能性があると述べています。

この話題を基点にして、ブッフェでの持ち帰りについて考察を展開していきましょう。

飲食店とは何か

飲食店とは何でしょうか。

飲食店を営業するには自治体の保健所から飲食店営業許可をとる必要があります。食品衛生法によれば飲食店営業とは「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」のことです。

食品衛生法施行令/e-Gov法令検索

日本標準産業分類によれば、飲食店は「中分類 76 飲食店」、テイクアウトやデリバリーの店は「中分類 77 持ち帰り・配達飲食サービス業」と明確に分類されています。

日本標準産業分類/総務省

行政的にも法律的にも規定されているように、飲食店は店内で食べることが明確にされています。店内飲食する店と持ち帰りする店は、店舗の造りからしても違うので区別は明確です。

ブッフェが店内飲食を前提としていることは明白なので、持ち帰ることがいけないと知らなかったという言い訳も通用しません。

ブッフェの仕組み

通常のブッフェは、どのような仕組みになっているのでしょうか。

ブッフェで必ず示されるのが、値段と制限時間、そして食べられるものです。

時間帯によって制限時間が変わったり、料理とドリンクのラストオーダーが異なっていたり、料金を追加すれば制限時間が延長されたりと、制限時間も場合によって異なります。

さらには全てがブッフェスタイルであったり、メインディッシュだけ1品チョイスになっていたり、フードはブッフェでデザートはアップグレードすればブッフェになったりと、食べられるものについても様々なパターンがあるのです。

こういった条件がエントランスに掲示されていたり、入店時や着席時に案内されたりして、いずれかのコースを選択することになります。食べ残しのペナルティが設けられていることは多くありませんが、設けられていれば、テーブルに注意書きが置かれていたり、スタッフが口頭で説明したりするでしょう。

持ち帰りが禁止であることは、当然という認識があるので、あえて明示されていることは多くありません。日本ではブッフェスタイルではない一般的な飲食店でも、食べ残したものを持ち帰ることができないだけに、自分で取るスタイルのブッフェで、好きなだけ持ち帰ってもよいと誤認するのは難しいように思います。

食品衛生の問題

世界的にSDGsが重要視され、食の業界ではフードロス(食品ロス)削減が求められています。2019年10月1日に食品ロス削減推進法も施行され、日本でもだいぶ意識されるようになりました。

したがって、ブッフェで食べ残した時に、もったいないので持ち帰れないかという話もよく議題に上がります。しかし、客が持ち帰ってどういった衛生状態になっているのかわからない食品を食べて食中毒が起きると、飲食店が困ります。

食品ロス削減推進法基本方針について、御紹介します/農林水産省

外食時のおいしく「食べきり」ガイド/消費者庁・農林水産省・環境省

国の指針によれば、持ち帰りはあくまでも客の自己責任とありますが、日本では食べ残しの持ち帰りが浸透していないので、飲食店は躊躇してしまいがちです。

故意の食べ残し

ブッフェにおける食べ残しの持ち帰りでは、食品衛生とは違う大きな問題があります。

それは、故意ではない食べ残しと故意の食べ残しを峻別できないことです。食べ残したものを持ち帰ってもよいとすれば、わざと食べ残す客も現れるでしょう。もうお腹一杯なのに、帰り際にわざと料理をとってきて、食べ残したからと持ち帰ることも十分に考えられます。そうなると、ほぼ際限なく何でも持ち帰れることになってしまうのです。

もしもブッフェで持ち帰れるようにするのであれば、無料ではなく、持ち帰る飲食物の分量に対してお金を支払う従量課金を導入するしかありません。それと同時に、ひどい食べ残しに対してペナルティを科す仕組みも必要です。

大量の食べ残し

持ち帰りの是非を考えることも重要ですが、そもそもブッフェで大量に食べ残す人がいることも大きな問題です。テーブル一杯に食べ残して退店する客も少なくありません。

必要以上に食べ残すと、飲食店はもちろんのこと、客も損害を被ってしまいます。なぜならば、飲食店が本来想定していた以上に食べ残しが多くなれば、損失が多くなり、値上げせざるを得なくなるからです。一部の行儀悪く食べ残す客のために、他の客が損をしてしまうことになるのは、とても公平であると思えません。

ブッフェで大量の食べ残しが起きるのは、大食いや早食い競技の影響、および、元をとらなければならないという強迫観念が原因のひとつ。どちらとも、ブッフェを扱うメディアによる責任が大きいと考えています。

自分らしく食事を楽しめるスタイル

ブッフェは本来、自分らしく食事を楽しめるスタイル。栄養バランスや好みを考え、コースをつくって食べていきます。自分のペースで適量だけとって最後までおいしく食べられるものです。

食育の一環として、小学校や中学校で「バイキング給食」が行われることがあります。赤(血や肉をつくる食べ物)、緑(体の調子を整える食べ物)、黄(エネルギー源になる食べ物)の栄養バランスを考えながら、自分が食べきれる分量だけを取ったり、次の人が心地よくブッフェ台を使えるように配慮したりすることを学ぶのです。

ブッフェの持ち帰りを議論するのと並行して、そもそも食べ残しをしないようにする食育も非常に重要となるのではないでしょうか。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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