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NY1億円超高級コンド内見。「眞子さんをよく見かける」ヘルズキッチン住民の目撃情報も

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) Kasumi Abe

筆者がこのたび訪れたのはニューヨークにある高級ホテル...ではなく、完成したばかりの新築コンドミニアムだ。マンハッタン区ミッドタウンの西端、ハドソン川にほど近いヘルズキッチン地区の一風変わった高級住居用ビル、The West(ザ・ウェスト)。

12階建てのこのビルは、低層階が昔ながらのインダストリアルなこの界隈の空気を受け継ぐウェアハウス風。高層階は一転、近未来的な凹凸が無造作に配置されたファサードが特徴だ。これら相反する2つのエレメントが見事に合体し、唯一無二の造形物として仕上がった。

市内にあるCitizenM HotelsやUrbyなどで実績があるオランダの建築家集団、Concrete(コンクリート)による最新作だ。低層階の外壁に使われているのは普通のレンガではなく、StoneCycling(ストーンサイクリング)による「アップサイクル・レンガ」を使うなど、サステイナビリティ(持続可能性)への配慮が細部に見え隠れする。

219戸のユニットからなるThe West。(c) Kasumi Abe
219戸のユニットからなるThe West。(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

緑が眩いスペーシャスなエントランスに足を踏み入れると、フレンドリーなコンシェルジェが笑顔で出迎えてくれた。外観から予想しなかったヒューマンタッチなおもてなしが、訪問者にひとときの安堵感を与えてくれる。奥のスペースは、リモートワークをしたりゲストを出迎えたりなどさまざまな目的に活用できそうな温室風の明るいライブラリーが広がっている。仕事がサクサクと捗りゲストとの会話も弾みそうだ。そんな生活の1シーンを想像しながら、エレベーターでスタジオタイプ(日本のワンルーム)と1ベッドルームの部屋へ。

ドアを開けると、奥の窓から部屋いっぱいに柔らかい光が射し込んでいる。モデルルームのようにすでに家具や小物が配置されていて、自分がもし住んだら「ここで仕事をして」「休憩はここで外を見ながらコーヒーを飲んで...」などイメージがつきやすい。

インテリアごとお買い上げ?

インダストリアル風な窓から明るい光が射し込む室内。(c) Kasumi Abe
インダストリアル風な窓から明るい光が射し込む室内。(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

「ここにあるものを“丸ごと”購入も可能ですよ」と説明するのは、米不動産会社コーコラン・サンシャインのシニア・セールスディレクター、アンジェリ・ディチキス(Angeli DeCecchis)さん。コンドの購入となると、日本と同様に家具が何もないまっさらな状態が主流だが、The Westでは家具はもちろん壁に掛かった絵画、テーブルに置かれた写真集や照明器具、キッチンツールやカトラリー、ベッドリネンに至るまで、室内にあるものすべて「込み」でユニットをお買い上げすることもできる。

このようなスタイルは、鍵を回せばすぐに住むことができるという意の「ターンキー」物件と呼ばれるもの。

ベッドはもちろん、照明器具や絨毯など「すべて」込みで購入できる。(c) Kasumi Abe
ベッドはもちろん、照明器具や絨毯など「すべて」込みで購入できる。(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

インテリアコーディネートは、プロ集団のASH Staging(ASH NYC)によるもの。

通常、新居に引っ越す場合「壁やカーペットは何色にしようか」「どんな絵を飾ろうか」と迷いながら自分たちの城をクリエートしていく。それも一興だが、ターンキー物件の場合、プロのインテリアコーディネーターが世界中からハイセンスの家具や小物を厳選し配置しているので、あれこれ考え、買い物に出かけてどれにするか迷い、支払って運送を待ち...といった一連の手間暇がいっさいかからない。

「購入の手続きさえ済めば、明日からでもここで生活が始められるんです」(アンジェリさん)。この便利さから、ターンキー物件は州外や国外に住む人がニューヨークを訪問する際の一時滞在としての場所、セカンドハウスとしても人気だという。

プロによってセレクトされたタオル類からスキンケア商品までも、丸ごとお買い上げできる。(c) Kasumi Abe
プロによってセレクトされたタオル類からスキンケア商品までも、丸ごとお買い上げできる。(c) Kasumi Abe

建物内にはライブラリーのほかに、スポーツジム、キッズルーム、コミュニティダイニングルーム(パーティーやイベント用)、犬のグルーミングルーム、倉庫なども完備。また屋上プール、カバナ、バーベキュー設備、ドッグパーク、外ヨガスペースまであり、あらゆるものが敷地内で完結する。

周りに景色を遮る高層ビルがないので、開放感ある見晴らしだ。当地ではパンデミック以降、バックヤードやテラスなど屋外スペースを人々が渇望するようになったが、そのような需要を満たしたアパートメント・コンプレックスだ。

◎ビル内アメニティを見る

ホテル設備と見紛うほどの大きな屋上プール。ハドソン川を眼下に臨む。(c) Kasumi Abe
ホテル設備と見紛うほどの大きな屋上プール。ハドソン川を眼下に臨む。(c) Kasumi Abe

いくらあれば住める?

Studio #718(484ft²、約45平米)

95万ドル(約1億2900万円)

1BR #723(672ft²、約62平米)

135万5000ドル(約1億8500万円)

* ターンキーパッケージ価格

* 当地では購入価格に加え、毎月の共益費と税金が別に必要。例えばStudioの場合22万円ほど毎月かかる(共益費670ドル(約9万2000円)、税金919ドル(約12万5000円))

「スタジオ」と「1BR」のフロアプラン(一例)。コーコラン・サンシャイン提供(筆者が一部加工)。
「スタジオ」と「1BR」のフロアプラン(一例)。コーコラン・サンシャイン提供(筆者が一部加工)。

新築でこれだけアメニティ設備が完備しているThe Westの価格が高いかお得か?

当地のアパートの不動産価格は、立地はどのストリートか、ユニットは何階で方角はどちらか、ベランダの有無など細かい条件によって異なってくるため一概に比較はできないものの、参考程度にマンハッタンの1ベッドルームの販売価格と賃貸の「中央値」も添えておく。

不動産会社のトリプルミントによると、昨年9月の時点で以下の通り。「マンハッタン内」でもっとも高いエリアと低めのエリアも調べた。ヘルズキッチンは、あくまでも「地区」としてはちょうど中間あたりに位置する。

販売価格の中央値

ヘルズキッチン 104万5000ドル(約1億4000万円)

ノーホー 219万7500ドル(約3億円)

フォートジョージ 34万4000ドル(約4600万円)

賃貸(家賃)の中央値

ヘルズキッチン 3903ドル(約53万円)

ハドソンスクエア 7250ドル(約98万円)

フォートジョージ 1750ドル(約23万円)

* 記事内はすべて1ドル136円計算

眞子さんを「よく見かけます」とヘルズキッチンの近隣住民

最後にヘルズキッチン地区と言えば、小室眞子さんと圭さん夫妻が昨年新居を構えたことで、日本での知名度が一気に上がった。

この地区は、中心地タイムズスクエアから徒歩圏内にあり便利な立地。文化施設や観光地がない替わりに、低層の住居ビルと多国籍レストランが連なり、地元の人が普段使いするアーミッシュマーケットやこぢんまりとしたカフェも。昔ながらの車のリペアショップが今でも残っていたりとインダストリアルな雰囲気も漂うリラックスした下町の雰囲気だ。

(c) Kasumi Abe
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(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

「ヘルズキッチンの不動産は今、活況を見せています」とアンジェリさんも太鼓判を押すように、ハドソン川近くの西端エリアがディベロッパーにより再開発され、新築アパートメントが次々に建てられている。この地区に目をつけているのは、投資家というよりどちらかというとミレニアル世代を中心とした若いローカルバイヤーやファミリー層が住居用として購入するケースが多いようだ。

土地柄もあり、内見中は関係者らと自然に小室眞子さんの話にも及んだ。筆者が「ヘルズキッチン地区は日本でも結構知られるようになったんです」と言うと、「(英語の)記事を読みました」と、筆者が説明するまでもなく眞子さんはこの地区の人々にすでに認知されていた。筆者の周りではほとんどの人が知らないため「私にとって、あなたは彼女を知る最初の人です」と伝えると、眞子さんを目撃したのは1、2度ではないと言い「この界隈を歩いているのをよく見るわ。(元プリンセンスとわからないほど)服装は控えめで目立たない感じです」と、その慎ましさに好感を持っている様子だ。「いつもマスクを着けて、1人で歩いているわね。サリヴァンベーカリーでフレンドリーに店員に挨拶しているのを見かけたことも。新天地での生活を楽しんでほしいです」。アメリカ移住から8ヵ月になる眞子さん。筆者の経験からも移住から半年は新生活に慣れるのに必死だが、それ以降は徐々に環境や生活習慣に馴染んでくるもの。眞子さんが近隣住民に迎え入れられこの地に解け込んでいるのが、地元の人の話から伝わってきた。

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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