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小室夫妻で大注目「ヘルズキッチン」てどんな街?住みやすい?在住者が教える「地元とっておき情報」

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ヘルズキッチンのレストランロー。(c) Kasumi Abe

ニューヨークに移住したばかりの小室眞子さんと圭さん。到着早々、米英のタブロイド紙が2人の新居について報じた。

移住前、2人の新居は閑静な高級住宅地、アッパーウェストサイドにある家賃80万円の2ベッドルームになるのではないかという憶測が飛び交っていた。しかし英デイリーメールの第一報や米ニューヨークポストの続報によると、2人が移り住んだのはヘルズキッチン(Hell’s Kitchen)地区にある、2017年に完成したばかりの高層アパートで、1ベッドルームタイプだという。

その住居ビルの高層階からはハドソン川を眼下に望み、セントラルパークやタイムズスクエアなどが至近の好立地だ。報道によるとビル内には、バーベキューや卓球などができる屋上デッキのほか、ジム、スパ、ヨガスタジオ、ビリヤードやゴルフシミュレーター、書斎なども完備されているラグジュアリーな建物という。

家賃はフロア(何階に位置するか)、間取り、広さなどによって異なるが月4300ドル(約49万円)からあり、1ベッドルームは4809ドル(約55万円)から、2ベッドルームは7085ドル(81万円)からのようだ。

1ベッドルームの物件とは?

通常の1ベッドルームとは、リビングルームのほかに個室のベッドルーム(寝室)のある住居タイプを指す。

ベッドルームがない(壁で仕切られていない)住居をストゥーディオ(スタジオ)と呼び、ベッドルームが2つある住居は2ベッドルーム、3つあれば3ベッドルームと呼ぶ。グレードの高い住居ビルは、来客用とは別に、ベッドルームごとに専用バスルームが併設されていることもある。

ヘルズキッチンってどんなネイバーフッド?

ヘルズキッチンはマンハッタン区ミッドタウンの西側、セントラルパークからは南西側に位置する地区。(当初候補地として噂されたアッパーウェストサイド地区はそれより北方で、セントラルパークの西側に位置する)

ヘルズキッチン地区の位置関係。タイムズスクエアやセントラルパークもすぐ近く。(出典:グーグルマップに筆者が加工)
ヘルズキッチン地区の位置関係。タイムズスクエアやセントラルパークもすぐ近く。(出典:グーグルマップに筆者が加工)

ヘルズキッチン地区にある住居の多くは規制により、ウォークアップ(エレベーターなし)の低層ビルが多い。すぐ南には再開発地区のハドソンヤードがあり、近年新築の高層ビルが周囲に増えつつある。

マンハッタンのミッドタウンと思えないほど、空が広い。(c) Kasumi Abe
マンハッタンのミッドタウンと思えないほど、空が広い。(c) Kasumi Abe

ヘルズキッチン西端にある高層ビルからの眺め(一例)。周囲に視界を遮る高層ビルがないため、見渡しが大変良い。(c) Kasumi Abe
ヘルズキッチン西端にある高層ビルからの眺め(一例)。周囲に視界を遮る高層ビルがないため、見渡しが大変良い。(c) Kasumi Abe

徒歩圏内には(ヘルズキッチン地区ではないが)セントラルパーク、ブロードウェイミュージカルの劇場街、カーネギーホールやMoMA(近代美術館)などの文化・芸術施設、複合商業施設のあるコロンバスサークル、これからの季節はクリスマスツリーで有名なロックフェラーセンターなど、ニューヨークを象徴するものが点在している。

徒歩圏内にあるブロードウェイミュージカルの劇場街。(c) Kasumi Abe
徒歩圏内にあるブロードウェイミュージカルの劇場街。(c) Kasumi Abe

筆者にとってヘルズキッチンと言えば、最初に頭に浮かんでくるのはレストランロー(Restaurant Row)だ。

レストランローとは多国籍な飲食店が連なる、46丁目と8番街と9番街の間にある通りのこと。劇場街に近いため、人々は観劇前後にレストランローや9番街に立ち寄って空腹を満たす。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

日系の居酒屋、寿司屋、ラーメン屋などもある。(c) Kasumi Abe
日系の居酒屋、寿司屋、ラーメン屋などもある。(c) Kasumi Abe

筆者が知らないこともあるかもしれない。大手不動産会社のコーコランに勤務する松村京子(けいこ)さんにヘルズキッチン地区について尋ねてみた。

松村さんは、「ニューヨークの文化を代表するようなところはなく、超便利でも超高級でもなく、なんとなくちょこちょことある感じの地域」と表現する。「特徴としては、気取りのない雰囲気ということかもしれません。人気エリアと違い、好んで移り住む若者はそれほど多くないですが、2人にとってはそれがよかったのかもしれません。フォーダム大学ロースクールも近くですから小室さんがこの辺に慣れているのでしょう」。

松村さんは中でも、9番街が特にオススメと言う。「決しておしゃれな雰囲気はないが、ハイチやタイなど国際色豊かな安くて美味しいレストランがそろっていて、毎年開催されるストリートフェスティバルには必ず足を運ぶほどです」。また余談だが、当地のLGBTQの人々が集まるのはチェルシー地区などだが、「近年ヘルズキッチンは大人のゲイの人々に大注目されているんです」と、地元ならではの情報も教えてくれた。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

実際に住んで見えてくる街の魅力もあるかもしれない。ヘルズキッチンに長年住んでいる日本人にも話を聞いた。

ニューヨーク在住歴30年で、18年住んでいるヘルズキッチンでは子育てもしてきた​​箏奏者の石榑雅代さんは、「とにかくどこに行くにも便利で、非常に生活がしやすい場所です」と太鼓判を押す。

日本人も最近増えていると感じるそうだ。「特に子連れの若い人をやたらと見かけるようになりました。公園でよく見るので、きっと近所に住んでいるのでしょう」(石榑さん)

ニューヨーク在住歴40年、ヘルズキッチン歴8年のコーディネーター、青木はじめさんによると(住んでいる南西部からは)最寄り駅がやや遠く、中には汚くて治安の悪い通りもあるそうだが、それでも「すぐ近くにハドソン川やそれほど店が密集していない場所があって解放感がある。それでいて密集地にも近い利便性が魅力」と語る。

ズバリ、日本人にとって住みやすいエリアかどうかについては、「個人的にはとても住みやすく気に入っています」(石榑さん)。「日本人でも好みは人それぞれでしょうが、日本食レストランも多く日本の食材も調達でき、都会の生活に慣れている人にとっては良いエリアだと思います」(青木さん)

徒歩圏内にはニューヨークを象徴するものがたくさんあり、観光客も多い。(c) Kasumi Abe
徒歩圏内にはニューヨークを象徴するものがたくさんあり、観光客も多い。(c) Kasumi Abe

最後に在住者として、ニューヨークで新生活を始めたばかりの小室夫妻へメッセージを聞いた。

「生活の変化に対応するのは大変なことだと思いますので、周りが静かに見守って差し上げてほしい。素敵な新婚生活をお祈りしています」(青木さん)

「庶民には決してわからない苦労がたくさんあると思いますが、幸せになる権利があるし幸せになってほしいです。自分で決めた人生ですし他人は関係ないです。周りのいろんな意見を気にしすぎず、ただただ自分の目標に向かって進んでほしい。年齢的に自分の子どものような彼らの門出を心から応援したいです」(石榑さん)

「人種の坩堝ニューヨークでの結婚生活、最初は戸惑うこともあると思いますが、在住の日本人も含めニューヨーカーは寛大です。2人でいればさまざまな苦労を乗り越えるエネルギーが必ず湧き出てくる、ニューヨークはそんな街です。ここが2人の第二の故郷となり、人や文化と共に好きになってくれたらニューヨークが大好きな先輩として嬉しい限りです」(松村さん)

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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