62年ぶりの珍事 東京のサクラ開花は積算温度700度超える
今年の東京(靖国神社)のサクラの開花は当初のウェザーマップの予想では3月20日で、平年より4日ほど早くなる予想でした。その後、2月の高温を受けて3月17日の予想に変わり、やはり今年もかなり早い開花になるとみられていました。
ところが3月27日現在、気象庁から開花の発表はありません。おそらく今月中には咲くものと思われますが、2012年3月31日以来の「遅咲き」ということになりそうです。
ふつうサクラは暖冬だと早く咲くとされています。そのため昔は農作業の目安ともなっており、サクラの「サ」は「サツキ」や「サナエ」と同様にお米の神様を意味したという説もあります。
その季節的にぶれないサクラが、今年は1月、2月と記録的な暖冬であったにもかかわらず、まだ咲いていないのです。
600度の法則があてはまらない
サクラの開花でよく知られているのは「600度の法則」です。2月1日からの最高気温を足していって合計(積算)が600度付近になると、サクラが咲くというものです。実際、過去の例でいくと昨年が3月14日で593度、一昨年が3月20日で627度、過去10年の平均で614度と、突出しての異常な値はありません。しかし今年は3月27日15時までで732度で、すでに積算温度が730度を超えています。
ちなみに積算温度が730度を超えての開花は、過去もっとも積算温度が大きかった1962年の768度以来ですから、実に62年ぶりの珍事ということになります。
開花が遅れている理由は暖冬だったからか
ではなぜ開花が遅れているのでしょう。
過去の例でいうと、積算温度が最も大きかった1962年(768度)は冬が寒くて2月になっても最低気温が0度未満の冬日が半月ほどありました。また3月も総じて気温が低く、日照時間も少なかったことから、なかなかつぼみが成長できなかったことが推測できます。
そのほか、過去の開花が遅い年も、だいたい冬から春が寒く、開花までの日数がかかっていました。それが、積算温度が大きくなることの理由でしょう。
ところが今年の冬は全国的に気温が高く、2020年に次いで史上2番目の高温でした。そして東京の場合、3月に入って雪が降るなど「寒の戻り」はありましたが、特別気温が例年より低いというわけではありません。
都市気候で東京のサクラは目覚めが遅い
そこで考えられるのは、「休眠打破」です。
サクラはただ単純に暖かいだけでなく、冬の間に一定程度の寒さがないと開花スイッチが入らないので、冬が暖かすぎると開花が遅れるのです。
実際に、その昔はサクラの開花というと鹿児島や宮崎など九州南部が全国で一番早く開花することもありました。ところが近年は九州南部の冬は暖かすぎて「休眠打破」がうまくできず、サクラの開花が遅れるという事態になっています。今年も九州より先に高知が3月23日開花しました。
これまでの東京は暖冬といってもサクラの開花が遅れるほど暖かくは無かったのに、それがひょっとして都市気候の影響で冬の温度が高すぎて、暖冬すぎて開花が遅れるということになっているのかも知れません。
最新の開花予想と開花直前の気温の推移
すでに開花予想日当日となってしまった東京ですが、現地の様子を見るとあと数日かかるのではと思われます。
そこで、余談ですが東京におけるサクラの開花日直前の最高気温の状況を2000年以降で調べてみました。すると昨年までの23年間中、20年分が最高気温の平均が15度以上(当日を含む前1週間の最高気温の平均)で、15度を下回っていたのはたった3年。どうも、開花間際の気温も関係しているのでは?と思わせるデータが出てきました。
それにあてはめると、今年は3月29日か30日頃になるかもしれません。
参考