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シリアでの相次ぐ爆発でトルコ軍兵士と中国ウィグル系のトルキスタン・イスラーム党戦闘員が死亡

青山弘之東京外国語大学 教授
YouTube(NeSyria)、2020年5月27日

M4高速道路沿線で大きな爆発、トルコ軍兵士1人死亡

シリア北西部のイドリブ県ジスル・シュグール市に近いガッサーニーヤ村のM4高速道路沿線で5月27日に大きな爆発が発生し、トルコ軍の士官1人と兵士1人が負傷した。

アレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路は、3月5日のロシアとトルコの停戦合意において再開が決定され、両国部隊が合同パトロールを実施するなど安全確保に努めてきた。

だが、現地では、シャーム解放機構、フッラース・ディーン機構といったアル=カーイダ系の組織が反対の意思を示し、アリーハー市以西でのパトロールは難航していた。

負傷した2人はトルコ軍のヘリコプターで、トルコ領内(ハタイ県レインハル市)に搬送されたが、重傷を負った兵士1人は死亡した。

爆発をめぐる解釈の違い

これに関して、英国で活動する反体制系NGOのシリア人権監視団は、爆発が「反体制派諸派」を伴ったトルコ軍の車輌を狙ったものだと発表した。

また、反体制系サイトのEldorarは、トルコ軍パトロール部隊が国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)を随行して通過するのに合わせて爆発が発生、これと前後して同部隊が無差別発砲を受けたと伝えた。

反体制系のEnab Baladiは、この弾薬庫がトルキスタン・イスラーム党のものだと思われるとしたうえで、トルコ軍将兵以外にも国民軍の戦闘員3人が負傷したと伝えた。

トルキスタン・イスラーム党は、中国新疆ウィグル自治区出身者を中心に構成されるアル=カーイダ系の組織(「シリアで中国ウィグル系のトルキスタン・イスラーム党が火力発電所を破壊、M4高速道路以南放棄の前兆か?」を参照)。

しかし、トルコ国防省は事件発生直前に、反体制派の弾薬庫と思われる建物で火災が発生、その後に大爆発を起こす様子を無人航空機(ドローン)で空撮した映像を公開し、爆発がトルコ軍のパトロール部隊が通過した際に「偶然」発生したものだとの見解を示した。

兵士死亡を受けて、トルコ軍は国境地帯上空にヘリコプターを派遣、ロシア軍の戦闘機と偵察機もイドリブ県上空での偵察・監視活動を強化した。

別の爆発でトルキスタン・イスラーム党の戦闘員6人死亡

その後、今度はガッサーニーヤ村近郊のタイバート村で大きな爆発が発生した。

タイバート村は、ジスル・シュグール市やガッサーニーヤ村とともに、トルキスタン・イスラーム党や、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が支配している。

シリア人権監視団によると、爆発はトルキスタン・イスラーム党の武器弾薬庫で起きたもので、戦闘員6人が死亡、多数が負傷した。

爆発発生時、ロシア軍のヘリコプター複数機がタイバート村上空を旋回していたが、爆発がロシア軍による爆撃か否かは不明だという。

(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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