三菱UFJのビットコイン戦略とバンクオブアメリカの特許出願について
「三菱UFJ、ビットコインに参入-米コインベースに出資」というニュースがありました。コインベース社はビットコインの決済サービス等を提供するFinTech系スタートアップです。「コインベースは8日、アジア事業の拡大に向け三菱東京UFJ銀行と三菱UFJキャピタルを含む投資家から約1050万ドル(11億円)を調達する。」そうであります。
関連する日経の記事「三菱UFJ銀、仮想通貨使い海外送金~米社と開発へ手数料安く手続き短縮」(リンクには事前承諾が必要なそうなのでリンクは張りません)によれば、仮想通貨技術を海外送金に応用する計画もあるようです。通常通貨をいったんビットコインに交換して海外に送金し、送金先で現地通貨に交換するという方法です。これにより、海外送金に要する時間と費用が大幅に節約されるとされています。
これは、以前に書いたバンクオブアメリカの特許出願の技術的範囲と近いものがあります。当該特許出願は、Track One(早期審査)を請求しているわけではないので、まだ審査結果は出ていません。そろそろなんらかのアクションがあってもおかしくないタイミングではあります。
仮に審査結果が出たとしても、前回書いたゴールドマンサックスの仮想通貨関連出願と同じく「抽象的アイデアをコンピューターで実装しただけ」として拒絶される可能性が高いのでリスクとしてはあまり気にする必要がないように思えます(100%保証の限りではないですが)。
ところで、従来型の海外送金に時間も費用もかかるという問題を、ブロックチェーン技術(を使った仮想通貨)が解決できるという主張がよく聞かれます。しかし、海外送金に時間も費用もかかるのは、特定組織の独占によって競争原理が働いていないという市場の問題によるのであって、ブロックチェーンを使うか使わないかという技術的な話とはあまり関係ないような気がします(ブロックチェーンによって参入障壁が下がるので競争原理が働くようになるという間接的な効果があるというのであればわかります)。
従来型の集中型データベースを使ったシステムでも、リアルタイムでトランザクション処理をし、かつ、市場での価格競争があれば、十分迅速で安価な海外送金ができるのではないでしょうか?たとえば、PayPalは別にブロックチェーンを使っているわけではないですが、海外送金はほぼリアルタイムです。