任天堂が対パルワールドで使用した特許の番号が明らかに
ちょっと前に書いた「任天堂が対パルワールド訴訟で使用した特許はたぶんこれ」という記事が、今頃になってXで引用され始めたのでどうしたのかと思ったら、パルワールド提供元であるポケットペア社がプレスリリースで特許番号を公開していたのですね。当該特許番号は7545191号、7493117号、7528390号です。また、損害賠償の請求金額が任天堂とポケモン社に対してそれぞれ500万円であることも明らかにされました(少ないと感じる方もいると思いますが、特許登録が最近なので侵害期間が短いため、および、「損害の一部」と書かれていることから、まずは一部金額だけで訴訟提起したためと思われます)。
原告側が特許番号を公表しなかったのに被告側が公表したのは、セガが「メメント・モリ」提供事業者(バンクオブイノベーション社)を訴えた時(関連過去記事)と同じパターンです(セガの時は原告側は訴えた事実すら公表していませんでしたが)。個人的見解ですが、特許権侵害訴訟は当事者だけではなく、第三者にも影響がある(「そんな特許があるなら回避のために設計変更しよう」とか「うちも侵害のリスクがあるからライセンス交渉しよう」と考える企業がいるかもしれません)ので、特許番号は最初の段階から明らかにしてほしいと思います(理想を言えば、米国のように、訴訟関連情報は(離婚や相続等の当事者内の話であるものを除いて)全部ネットで閲覧できるようになってほしいですが)。
また、特許番号を公開することには、ユーザーや投資家の不安を解消するという意味、および、IRの適時開示の要請もあるでしょう。特に、被告にとって特許権侵害が致命的なものではなく、仮に侵害が認定されても、設計変更で差し止めは回避でき、過去の行為に対する損害賠償支払いで済むという読みがあれば特許番号を公表する意味はさらに大きくなります。
ところで、冒頭で引用した私の記事で予測した特許番号は「当たり」でしたが、特許実務をやられている方であれば誰でも思い付くことなので大した話ではありません。なお、記事中では別に「伝家の宝刀」的な強力な特許が使われている可能性もあると書きましたが、それは(少なくともこの訴訟では)なかったことになります。
特許の内容については追って別記事で解説していく予定です。
追記:ポケットペア社のプレスリリースで(原出願日ではなく)分割出願日が挙げられていることで、「パルワールド」のサービス開始後に出願された「後出しじゃんけん」疑惑が再燃している可能性があります。この点については、特許の分割出願を解説した私の過去記事「特許の分割出願の基本を解説します」をご参照ください(この2023年の記事が今になってXで引用され出していることから多くの人が気にしているポイントであることがわかります)。