バンクオブアメリカのビットコイン関連特許出願について
ここしばらくはFinTechが重要キーワードになりそうです。FinTechの定義は人により様々ですが、ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号通貨、デジタル通貨)(cryptocurrecncy)がその重要要素であることは確かです。
ビットコインというと日本ではマウントゴックス事件によりちょっとうさんくさいイメージがついてしまいましたが、仮想通貨という概念、そして、その基盤技術であるブロックチェーンの重要性は否定しがたいものがあります(とは言え、「ブロックチェーンブーム」により、本来的にブロックチェーンが向かない用途にまで無理矢理適用しようとする動きがあるのではないかと懸念しています(この辺まだ勉強中です))。
日銀もつい最近「"デジタル通貨"の特徴と国際的な議論」というレポートを公開しました。情報がまとまっていて便利ですが、「今後とも注視が必要」というようなちょっと腰が引けたポジションになっています。
よくあるパターンですが、米国ははるか先を行っているようです。昨年暮には、バンクオブアメリカが出願していたビットコイン関連特許が何件か公開されました(参照記事)。
もちろん、ビットコインの基盤技術ブロックチェーンの基本概念やその応用である「分散型元帳」などのアイデアは既に公知になっているので特許化できませんが、新規性・進歩性がある付加的機能や応用であれば特許化可能です。「なくても何とかならなくもないが結構困る」レベルの機能を特許化できれば強力な差別化要素になり得ます。
今までにも何回も書いているように、強力な特許を取得する最適なタイミングは、革新的技術が登場し始めたばかりで、まだ応用のアイデアが世の中に十分出きっていない段階です。そういう点では、一昨年から昨年前半頃までが仮想通貨関連の特許を出願するには最適のタイミングだったでしょう。これからこの分野の特許出願が次々と公開されていくのではないかと思います。
先の記事によると最近公開されたバンクオブアメリカのビットコイン間連特許出願は11件あるそうですが、全部調べている時間はないので、その中で最初に公開された出願の中身を簡単に分析してみましょう。出願番号はUS14215473、出願日は2014年3月17日、発明の名称は"System and Method for Wire Transfers Using Cryptocurrency”(仮想通貨を使用した送金のシステムと方法)です。
発明のポイントは、銀行間の送金において、仮想通貨を経由した方が有利と判断した場合には、一度、交換所においてリアル通貨から仮想通貨への両替を行ない、送金の後、仮想通貨から目的のリアル通貨への交換を行なうという、非常にシンプルなものです。
審査状況を照会してみましたが実質的な審査はまだ始まっていないようです。かなり自明に近いアイデアなので特許化は厳しい気もします(米国のAlice最高裁判決にしたがい「抽象的アイデアをコンピューター化しただけ」という理由で拒絶されることも十分考えられます)。一方、cryptocurrrecyという概念自体が比較的新しいものなので、審査官によっては、先行技術なしということであっさり登録してしまう可能性もあります(これこそが、技術の普及期前夜に特許出願を行なう戦略的な意義です)。
時間ができたら残りの10件についても読み込んでみようと思います。