スーパーのお弁当価格が高騰 「男弁当」+スープに活路?
あらゆる食材価格が高騰していくなか、弁当からスープへ
令和4年度、コメがじわじわと平均価格のアップから
あらゆる食材価格、光熱費、物流コストなどが高騰しており、令和4年度産米の生産平均価格も令和3年度より上がり、60キロ平均価格12819円より プラス1142円となった。
令和4年度のコメ価格は令和2年度と比較すると
しかし令和2年度のコメの取引価格は60キロ平均価格14529円で令和4年度と比較すると、令和4年度13961円となっており、令和2年度の96%となっている。多くの食品価格がその間、2桁以上高騰しているなか、コメは比較的安定していたため、令和4年は弁当の陳列状況は充実したのだ。
弁当価格が天井 平均価格613円 過去99か月で最高価格
しかしその後、弁当に入っているおかずの価格、人件費、光熱費も軒並み高騰したことから、平均弁当価格は、令和5年3月で613円となった(総務省統計局の小売物価統計調査)。これは以前の記事で記した金額よりさらにアップし、99か月の中で最高価格である。
EDLPスーパー・オーケーは何がすごいのか 各社の値上げ動向と「弁当」クオリティの変遷
ちなみに令和5年3月で地域別を見ると、札幌市が一番高く700円。そして最下位は和歌山市で533円となっている。
地方のスーパーのバイヤー「札幌市が700円、平均弁当価格613円ですか。この地域では高くて売れないですよ」
500円以下の価格設定、死守するための涙ぐましいスーパー弁当提案
確かに、関東、関西の主要スーパーを調査してみると、顧客の財布の紐が堅いことから、本体価格500円までに死守しているスーパーが多く見受けられた。全国的に注目されているヤオコーでは、ボロネーゼドリア298円税込み321.84円を大量発売するようにになった。白飯の上にボロネーゼソースをかけ、チーズを散らし、スチームコンベクションオーベンで大量製造している。全量330gとなっている。
卵のノロウイルス問題以前は、カツ丼を小ポーションにし298円税込み321円で販売している店舗もあった。
300円前後の弁当の内容は、所謂、男弁当、つまりおかずが1種類のみとなっており、原価調整、オペレーションは楽になる一方、栄養面では偏りがちとなる。
来店頻度の減少
最近のスーパーでは、その上、来店頻度も減少し、高齢化に伴い、顧客の囲い込みが大切で、コロナ前とコロナ後で比較すると、毎日スーパーで買い物する人々は2分の1にまで減少している(スナップディッシュユーザー参照)。
弁当の品揃えを売り場に充実させると、一食完結になりがちになり、単価が上がらないし、その上、来店頻度が低いことから売り上げに響くのだ。惣菜の売り上げが全体の売り上げの10%以上のところもあり、全体の売り上げに影響を及ぼすのだ。
客数が減少、単価も上がらないジレンマから
つまり客数が減少、単価も上がらないという売り場になりやすい状況から、スーパー各社は、人口が減少していくことを踏まえ、顧客の財布を考慮しながら、惣菜売り上げを最大限に上げる次なる提案が必須となっている。
2品購入、弁当とセットで購入してもらえる商品、それは・・・
次に1回の惣菜購入品数を見る。
令和4年では、2品目と回答したのが、半数近く(惣菜白書22年)。単純計算して考えると、前述した弁当価格3月の平均価格613円から、ドリアといった弁当の下限価格の300円を引くと、300円前後がついで買いしてもらいやすい価格となる。そして300円前後の商品は男弁当、つまり栄養が偏っているため、「健康」がキーワードとなる。
弁当とのセット、「健康」がキーワードとなるサラダ、スープの価格
弁当に付随しやすい商品として、容易に思い浮かべる商品カテゴリーとして、サラダ、スープが上げられる。サラダに関しては、既に価格設定が幅広く、様々な商品が並んでいる。なかには、弁当価格と同程度の498円のものも陳列されているのだ。
つまりある程度、スーパーにおいて、サラダは価格設定も幅広く、内容も充実していると言えるのだ。
「スープ」について
次にスープの最近の傾向を見てみよう。
・スープを食する人は、高齢に従って、増加傾向にある。
・1日に1回は、スープを飲む人は、回答者の45%を占める。
(いずれもマイボイスコム参照)
つまり今後、ニーズのある商品なのだ。
スーパーの現状、変化の兆しがあるスープ
スーパー関係者「スープは持ち運ぶ際、汁がこぼれるなどの問題が生じやすく、クレームが大変でして、陳列しても豚汁しか売れないのです」
確かにスーパーのスープ商品と言えば、必ずあるのが豚汁であり、他のスープはお飾り程度だった。しかし最近、ようやくスープの陳列状況が変わってきたのだ。
この半年の各スーパーを見ると、これまでよりアイテム数を増加させ、中には1.5倍となっているスーパーもあり、価格も一極集中していた税抜き価格298円の価格設定からばらけてきつつある。
ヨークでは
スープを催事販促している。価格もアップし、鬼除け汁330円税込み356円。
ベニマルでは
ベニマルでは、麺の価格設定と同様のたっぷりオニオングラタンスープ398円税込み429円を陳列。
オニオングラタンスープの汁の量を見ても、粗利がとれる商品設計となっている。
コンビニのスープ
さてコンビニではどうか。
これまでコンビニのスープの税抜き価格は、スーパーの298円より約100円高い設定が主流であった。
最近の2023年2月の調査では
・ローソンはスープの税抜き価格358円から378円
・ファミリーマートはスープの陳列はなし
・ミニストップではスープの価格が税抜き298円から378円
セブン-イレブン、スープに変化 価格ダウン
多くのコンビニが消極的な売り場展開のなか、セブン-イレブンは3月に入り、下から3段目に置かれ、つまりゴールデンゾーンと言われる顧客が目に入る位置に税抜き300円から370円5アイテムを並べ、サンドイッチの近くには、税抜き198円のポタージュが陳列している。以前より増して、スープ、汁物を充実していることが一目でわかり、サンドイッチの併売を考慮した陳列となっていた。
新たに投入したスープの価格は、以前より価格はダウンし、スーパーに対して意識していることが伺える。
これからのスープ
あらゆる食材の嘗てないほどの高騰から、粗利がとれる商品が少なくなってきている。そのように考えると、水を主体としたスープは、中の具材も柔軟に対応でき、食べやすいことから高齢者にニーズがある。数年前まで、バイヤーが「売れない」と端から興味がなかった商品が日の目を見、定番になったことがある。これが麺、ピザであった。しかしこれらの商品は、必ず入れなければならない食材、つまり小麦粉を使用することが大前提となっている。小麦粉の高騰は言わずもがなで、そのように考えるとスープの具材は原料に対し、極めてリスクは少なく、調整可能である。今、まさに注目される商品になるのではないだろうか。