EDLPスーパー・オーケーは何がすごいのか 各社の値上げ動向と「弁当」クオリティの変遷
価格高騰のなか、スーパー各社の動きが鮮明に
軒並み原料が高騰しているなか、スーパー各社は、価格改正という苦渋の決断を強いられている。その改正に際し、顧客にも納得してもらえるように、あらゆる策を講じている。
まず多くのスーパーでは売り場の商品見直しをすることで、粗利をキープすることに懸命である。価格が高騰していないコメを多く使用する弁当のフェース(売り場面積)を積極的に広くしているのだ。事実、弁当アイテム数を増やしているスーパーは、売上、粗利も何とか確保していると言う。
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とはいえ、弁当においても、容器、コメ以外のおかずも当然、高騰しており、原価の調整は難しい。
そのため、弁当の価格も以前よりじわじわと上げざるを得ない状況である。
この図でもわかるように、今年に入って価格がアップしているのだ。
大手スーパーのイオンでは、「価格凍結宣言」を昨年2021年9月13日に宣言し、その後も2022年6月30日まで延長したことで、一時、売上はアップした。しかし、大手企業とはいえ、スケールメリットだけでは、原料、人件費、物流、そして光熱費まで上がっている状況で到底、カバーしきれない。売上がアップしたのは、一過性に過ぎない。
スーパー関係者「398円弁当は厳しいです。他のスーパーは、どのような価格設定なのでしょうか」といった質問も多々ある。
コロナ禍で積極的に出店攻勢をしたライフコーポレーションでさえ、昨年と今では、微妙に弁当価格を上げている。
「仕入れ原価もありますが、これほどまでに光熱費が上がると弁当価格を上げざるを得ない」と言われる。
さて、そのような状況でライフコーポレーションの弁当価格を調査したところ、これまで500円、つまりワンコインで抑えていた弁当価格が原料高騰後、確かに598円、698円、798円となってきている。
一方、消費者の財布の紐も厳しい。10月の消費者物価指数(CPI)は、11月18日の発表では3.6%と40年ぶりの高い水準となっている。
このことから今後、通常のスーパーからEDLP(everyday low price)のスーパーに消費者が流れこむと予想される。
既にアメリカでは、EDLPのスーパーに顧客が流れる現象が起こっている。EDLPで知られるウォルマートが好決算となった主な要因は、年収10万ドル以上の顧客が75%増加し、ウォルマートに顧客が流れこんだ。いわゆるトレードダウンだ。
米小売り大手ウォルマートが発表した2022年8~10月期決算は、売上高が前年同期比9%増の1528億ドル(約21兆円)だった。インフレ下で低価格帯の食料品の売れ行きが高所得世帯でも伸び、市場予想を上回った。値引きによる在庫削減も進んだ。11月25日日経MJ
日本でも同様の流れとなるだろう。しかし、ここまで原料が高騰しているなか、これまでのようなEDLPのスーパーの低価格弁当の設定は、通常のスーパーより厳しい。では今、どのような手立てを弁当に講じているのだろうか。今回、オーケーの弁当価格から考えていきたい。
EDLPで知られるオーケー、果たして関西で互角に戦えるのか
オーケーと言えば、最近、関西スーパーの買収を巡って、H²Oとの熾烈な戦いが繰り広げられたことは、記憶に新しい。最終、関西スーパーの買収は失敗に終わったものの、関西進出は決して諦めていないだろうと予測していた。何故なら既に現金保有額が約1500億円とされ、日本のスーパーで断トツのNO1である。ヤオコーといった優良スーパーでさえ、現金保有額は、その三分の一にも満たない。巨額な現預金額から、虎視眈々と関西出店にむけて、準備されていると考えたのだ。
予想通り、2022年10月7日、オーケーが関西に進出すると発表。
オーケー関西初出店へ…東大阪に24年前半にも
2022/10/07 06:00
首都圏を地盤とするスーパーのオーケーストア(横浜市)は6日、大阪府東大阪市の市有地約3600平方メートルを27億円で落札し、出店用地を取得したと発表した。JR高井田中央駅から徒歩約5分の場所で、関西の旗艦店として2024年前半の開業を計画している。関西1号店になる見通しで、今後も近隣エリアへの出店を増やす考えだ。(読売新聞参照)
このニュースが発表されるやいなや、とある関西の大手スーパーの株価は下がったのだ。
そしてオーケーの約1500億円の現預金額から算出すると、137店舗出店が可能である。関西では、少なくとも50店舗以上から100店舗は出店するのではないかと言われている。
その上、オーケーは経営販管費率17.6%と通常のスーパー25%より極めて低く、CFは約350億円、営業利益は6.3%(2022年3月期本決算内容)と経営は、他のスーパーよりすこぶる盤石である。
関西進出は、関東から進出しているロピアはもちろんのこと、万代、イズミヤ、平和堂などと諸にぶつかることとなる。
関西の弁当について
さて関西は惣菜、なかでも弁当における商品力の高さは、業界内でも定評がある。これは、ひと昔前にとあるベンダーが398円という弁当を各スーパーに入れたことで、それまで498円設定であった弁当価格が一気に下がったことがきっかけで関西のスーパーは、これまでの価格498円より100円下げざるを得なくなったのだ。その状況下で各スーパーは、厳しい価格帯で切磋琢磨で競争をし続けた結果、年々、グレードアップしていったのだ。名古屋のとあるベンダーは「関西の弁当を見ると価格、内容、いずれも他の地方より凄いので商売をしたくない」と言われるほどだ。
アンケートでもわかるように、関東、関西を比較すると、明らかに関西が50円低い設定となっている。
関東の弁当購入価格が最も多いのが500円から550円。一方、関西の弁当購入価格が最も多いのが450円から500円。
関西の弁当価格が50円安いのである(erica.company作成)。
関東との違い
確かに関東の優良企業のスーパーは、話題になりやすい。しかし、東京は人口も多く、その上、顧客の年収も高く、都市部は約5%高い設定だと考えて妥当だと言われている。つまり地方のスーパーは、その商品を見て、そのまま自分の地域に落とし込むことは難しい。そして実際、試売しても売れないことが多い。
そこで関西に進出するオーケーの弁当価格を見てみよう。
オーケーでは弁当価格は、2022年は、159円、198円をなくし、299円のアイテム数を約1.5倍増やしている。
他のスーパーのこれまでの398円設定より、約100円安い価格設定であり、398円でも厳しいと言われている状況での設定である。
しかし決して安いだけではない、オーケーストアらしい考えが弁当に凝縮されているのだ。
その1.弁当容器の重量
弁当一つの内容を通常の弁当より約半分の量(300g以下)に仕上げているものの、決して少ないように見えない。ごはんの上におかず1種類を隙間なく敷き詰める形で仕上げている。そのため、貧相に見えない。高齢化が進むなか、全体量の見直しが必要で顧客にとっても有難い。
その2.徹底した定番での勝負
新規の商品も導入しているが、いずれも一目で何の商品かがわかる。
あさりを使ったご飯は、他のスーパーでは398円という設定となっており、299円よりさらに下回る形で販売している。ごはんの上にたっぷりのあさりをのせ、中に海苔がごはんの上にのっており、その香りが程よく放たれる仕上がりとなっている。原料の高騰から、EDLPのスーパーでは、丼に仕上げているのが見受けられるようになった。丼はオペレーションを考えると、盛り付けに時間がかからないからだ。しかしバックヤードでの盛り付けが粗雑になっているところも見受けられるようなった。たとえ398円より安い380円設定だったとしても、きれいに盛り付けていないとたちまち売れなくなる。
その3.弁当容器は同じ
13アイテムある299円の弁当は、容器が一律、同じなのである。手にとりやすい大きさでさっさと購入できる。顧客から売り場を見ると、13アイテムが売り場にズラリと並ぶことで299円という価格がよりわかりやすくなり、売り場は壮観である。
その4.内容 カツ丼の凄み
299円のなかにオーケーのカツ丼が入っている。
以前にも紹介したオーケーの「カツ丼」は、知る人ぞ知る商品であり、その認知度は高く、オーケーと言えば「カツ丼」299円なのである。
そして全体の商品のなかでカツ丼は上位に君臨している。
惣菜部門の上位ではない、全商品のなかの上位に君臨しているのだ。
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それぞれの弁当の内容を見ると、あくまで自社で作りあげた商品であり、よくありがちな「○○スーパーのあの弁当」と言った模倣された商品はない。
関西の弁当 現状
エイチ・ツー・オー傘下3社 統合成果遅れ…関西最強スーパーへ試練
2022.11.03 東京朝刊 11頁 経済面 (全725字)
関西スーパーマーケットがエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングと昨年12月15日に経営統合し、まもなく1年になる。今年2月に発足したH2Oの中間持ち株会社、関西フードマーケットによる傘下スーパー3社の統合作業は緒についたばかり。年間売上高の合計は約4千億円に達するが、名実ともに「関西最大・最強」のスーパーとなれるのか正念場にある。
関西フード傘下の関西スーパー、イズミヤ、阪急オアシスはそれぞれ独自の店舗運営を脱却できず、成果を出せていない。関西フードは来年4月、イズミヤと阪急オアシスを合併させ、統合作業を加速させる。関西フードの林克弘社長は「(企業同士を)リセットして新しい仕事のやり方に変える」と語気を強める。
関西フードは5月に発表した中期経営計画で、富裕層から価格重視の層まで、顧客ニーズに合わせた3つの店舗モデルを示した。4月から管理部門の人材交流を始め、10月から10店ごとに店長経験者らの「エリアマネジャー」を置き全店の指導に当たることにした。林社長は、関西スーパーも含めて「統合効果が出るのは令和6年度から」とする。
飛躍のカギを握るのが、H2Oが昨年7月に発表した、関西大手の食品スーパー、万代(まんだい)(大阪府東大阪市)との業務提携を強化できるかだ。流通アナリストの中井彰人氏は「万代との提携を成功させれば、スーパー事業で他社の追随を許さない地位を手にできる」と指摘する。
その万代の地盤である東大阪市には、関西スーパーの争奪戦に敗れたオーケー(横浜市)が進出する。10月に土地取得を発表し、6年3月までに関西の旗艦店を出すことを明らかにした。オーケーの関西出店は初めて。“スーパー戦争”が激しくなりそうだ。(牛島要平)
産経新聞社
オーケーが出店することで、関西のスーパーはより競争激化していくことは容易に想像がつく。
そしてオーケーが初出店する東大阪市は、平均年収327万円と決して高い地域ではない。しかしこれまでの経営内容、そして価格設定から、関西という厳しい環境でもオーケーらしさを発揮するのではないだろうか。
オーケーの出店に際し、従業員確保ができるかどうかがカギとなるのではと言われている。これは、他のスーパーでも同様のことであり、対岸の火事ではない。
いずれにせよ、いよいよ関西は正念場を迎えるであろう。