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日本人メジャーリーガーのポストシーズン出場その3:2011~2014/2年前の上原と田澤はフル回転

宇根夏樹ベースボール・ライター
ボストン・レッドソックス/2013年ワールドシリーズ優勝 10/30/13(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

これまで2回に分け、ポストシーズン(プレーオフ)に出場した日本人メジャーリーガーの足跡を振り返ってきた。1995~2004年2005~09年に続き、今回は2011年から2014年まで。なお、2010年のポストシーズンに出場した日本人メジャーリーガーはいなかった。

<略号>

WCG=ワイルドカード・ゲーム

NLDS=ナ・リーグ・ディビジョンシリーズ(地区シリーズ)

ALDS=ア・リーグ・ディビジョンシリーズ(地区シリーズ)

NLCS=ナ・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)

ALCS=ア・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)

WS=ワールドシリーズ

2011年/斎藤隆(NLDS,NLCS)、上原浩治(ALDS,ALCS)、建山義紀(ALCS)

斎藤隆(ミルウォーキー・ブルワーズ/現・東北楽天ゴールデンイーグルス)は2シリーズ計6試合に投げ、7.0イニングで防御率0.00を記録した。ホームを踏ませたのは、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第1戦でザック・グレインキー(現ロサンゼルス・ドジャース)から引き継いだ1走者だけ。3点リードの7回表、無死一塁の場面でマウンドへ上がり、ヒットを打たれて一、三塁とした後、アルバート・プーホルス(当時セントルイス・カーディナルス/現ロサンゼルス・エンジェルス)を5-4-3の併殺打に仕留める間に生還された。

上原浩治(現・ボストン・レッドソックス)は7月30日にボルティモア・オリオールズからテキサス・レンジャーズへ移り、高校で一緒だった建山義紀とチームメイトに。2人のうち、ディビジョンシリーズのロースターには上原だけが入り、リーグ・チャンピオンシップシリーズは建山も加わったが、ワールドシリーズでは揃ってロースターから外れた。上原は3登板していずれも本塁打を献上。建山は上原の2登板目と同じ試合に投げ、先頭打者に二塁打を打たれたものの、続く2人を討ち取ってイニングを終えた。建山も上原も、ライアン・レイバーン(当時デトロイト・タイガース/現クリーブランド・インディアンス)に長打を浴びた。

2012年/ダルビッシュ有(WCG)、上原浩治(WCG)、黒田博樹(ALDS,ALCS)、イチロー(ALDS,ALCS)

ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)はボルティモア・オリオールズとのワイルドカード・ゲームに先発。7回表に2死二塁としたところでマウンドを降りた。その時点のスコアは1対2。ダルビッシュの残した走者を生還させたデレク・ホランドを挟み、上原浩治は8回表から登板。打順3~5番のクリス・デービスアダム・ジョーンズマット・ウィーターズと対戦し、いずれも三振に斬って取った。デービスは前年に上原が移籍したトレードで、入れ替わりにレンジャーズからオリオールズへ移籍した。

レンジャーズを倒したオリオールズは、イチロー(現マイアミ・マーリンズ)と黒田博樹(現・広島東洋カープ)のいるニューヨーク・ヤンキースとディビジョンシリーズで対戦した。イチローは「2番レフト」としてシリーズ全5試合に出場し、第1戦は先制タイムリー二塁打とタイムリーヒット、第2戦は捕手のタッチを2度もかわすホームイン、第4戦は送りバント、第5戦はタイムリー二塁打。黒田は第3戦に先発し、9回表、1死走者なしで降板するまで、ソロ本塁打2本による失点のみに抑えた。試合は、9回裏に代打のラウル・イバニエスが同点本塁打を放ち、12回裏にイバニエスがサヨナラ本塁打を叩き込んだ。

ヤンキースは続くリーグ・チャンピオンシップシリーズで、デトロイト・タイガースにスウィープを喫した。イチローは第1戦で本塁打を含む4安打、第3戦も2安打ながら、他2試合は、計8打席中、出塁は四球による1度きり。4試合の打順は2番、1番、2番、1番、守備位置はレフト、レフト、ライト、レフトだった。黒田は中3日で第2戦のマウンドに上がり、アニバル・サンチェスと投手戦を演じたが、7回表に内野ゴロの間に先制され、8回表に2死一、二塁としたところで降板。後続が打たれ、打線はサンチェスとフィル・コークに完封された。

2013年/上原浩治(ALDS,ALCS,WS)、田澤純一(ALDS,ALCS,WS)

上原浩治田澤純一は、ボストン・レッドソックスのリリーバーとしてフル回転し、それぞれ13試合に登板した。これは、1997年にポール・アッセンマッカーが作ったポストシーズンの年間最多記録より1登板少ないだけ。レッドソックスのポストシーズン16試合中、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第4戦を除く15試合は、少なくとも2人のどちらかが登板した。

田澤は7.1イニングを投げて1失点。走者がいる場面でマウンドに上がることが多く、2走者以上の登板も6試合あったが、計18走者中、ホームインされたのは3人だった。上原は13.2イニングを投げ、こちらも失点は、ディビジョンシリーズ第3戦でホゼ・ロバトン(当時タンパベイ・レイズ/現ワシントン・ナショナルズ)に打たれたサヨナラ・ソロ本塁打のみ。リーグ・チャンピオンシップシリーズでは5登板して3セーブを挙げ、シリーズMVPを受賞した。また、ワールドシリーズ第3戦のサヨナラ負けは三塁手のエラーによるもので、第4戦は牽制球で一塁走者のコルテン・ウォン(セントルイス・カーディナルス)を刺して試合を終えた。第6戦に優勝を決めたアウトは、マット・カーペンターから奪った三振。ポストシーズン全体では、1996年のジョン・ウェッテランドらと並び、年間最多記録となる7セーブを挙げた。

2014年/青木宣親(WCG,ALDS,ALCS,WS)

カンザスシティ・ロイヤルズのポストシーズン15試合中、青木宣親(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)が出場しなかったのは1試合だけ。先発12試合のうち10試合は途中で交代したが、12試合とも「2番ライト」を務めた。ワイルドカード・ゲームは無安打ながら、1回裏に二盗を決めてホームも踏み、9回裏には同点に追いつく犠牲フライ。ディビジョンシリーズでは、初打席でヒットを打ったものの牽制球で刺され、その後は8打席続けて討ち取られたが、第3戦はタイムリーヒットを含む3安打と四球で、4打席とも出塁した。第1戦では好守も2度。続くリーグ・チャンピオンシップシリーズは、出塁率.429を記録した。

ワールドシリーズは最初の2試合で計7打席とも出塁できず、第3戦は欠場、第4、5戦は途中出場。第6戦にジェイク・ピービー(ジャイアンツ)からタイムリーヒットを打ったが、第7戦は無安打に終わった。このシリーズは14打数1安打、出塁率.188、併殺打2本。レギュラーシーズンの併殺打は5本しかなく、ポストシーズンでもワールドシリーズを迎えるまでは0本だった。

日本人メジャーリーガーのポストシーズン出場その1:1995~2004/初出場は野茂、野手初はイチロー

日本人メジャーリーガーのポストシーズン出場その2:2005~2009/井口資仁を筆頭に続々と頂点へ

さて、今秋は誰がポストシーズンに出場するだろうか。ロースター枠やワイルドカード・ゲームがあるため、前にも書いたように「もしかすると、今年のポストシーズンに出場する日本人メジャーリーガーは皆無かもしれない」が、川崎宗則(文字化けするのでこちらの「崎」で代用)がいるトロント・ブルージェイズと和田毅のいるシカゴ・カブスはすでにポストシーズン進出を決めていて、田中将大のいるニューヨーク・ヤンキースもワイルドカードが有力だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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