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日本人メジャーリーガーのポストシーズン出場その2:2005~2009/井口資仁を筆頭に続々と頂点へ

宇根夏樹ベースボール・ライター
松井稼頭央(左)と松坂大輔 October 23, 2007(写真:ロイター/アフロ)

前回は1995年から2004年までのポストシーズン(プレーオフ)に出場した日本人メジャーリーガーの足跡を振り返った。今回は2005年から2009年まで。2002年に始まった日本人メジャーリーガーのワールドシリーズ出場は、途切れることなく8年連続となった。

<略号>

NLDS=ナ・リーグ・ディビジョンシリーズ(地区シリーズ)

ALDS=ア・リーグ・ディビジョンシリーズ(地区シリーズ)

NLCS=ナ・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)

ALCS=ア・リーグ・チャンピオンシップシリーズ(リーグ優勝決定シリーズ)

WS=ワールドシリーズ

2005年/井口資仁(ALDS,ALCS,WS)、田口壮(NLDS,NLCS)、松井秀喜(ALDS)、大塚晶則(NLDS)

井口資仁(現・千葉ロッテマリーンズ)のいたシカゴ・ホワイトソックスは、ポストシーズンで1敗しかせず、88年ぶりのワールドチャンピオンに。井口は12試合すべてに「2番・二塁」として先発出場し、打率こそ.191(47打数9安打)ながら、ディビジョンシリーズ第2戦でデビッド・ウェルズ(ボストン・レッドソックス)から逆転3ラン本塁打を放ち、翌々日の第3戦とワールドシリーズ第3戦ではタイムリーヒット。送りバントも3本決めた。

松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)はディビジョンシリーズ5試合で20打数4安打、1本塁打、1打点。第4~5戦は9打席とも討ち取られた。第5戦では2点ビハインドの9回表、2死一、二塁の場面で一塁ゴロに倒れ、シリーズ最後の打者となった。

田口壮(セントルイス・カーディナルス)と大塚晶則(サンディエゴ・パドレス/現在は晶文)はディビジョンシリーズ第3戦で対戦し、結果は遊撃ゴロ。シリーズは、カーディナルスが3連勝のスウィープでパドレスを下した。田口は3試合とも途中から出場し、打席に立ったのは1度きり。大塚も3試合に登板し、いずれも1イニングを無失点に抑えた。田口は続くリーグ・チャンピオンシップシリーズでも全6試合に出場。「2番レフト」で先発出場した第3戦を含め、6打席とも討ち取られた。

2006年/田口壮(NLDS,NLCS,WS)、斎藤隆(NLDS)、松井秀喜(ALDS)

斎藤隆(ロサンゼルス・ドジャース/現・東北楽天ゴールデンイーグルス)はディビジョンシリーズの第2戦と第3戦に登板し、計2.2イニングを投げて被安打ゼロ、奪三振4。第3戦では前の投手が残した2走者のうち1人を生還させたが、これは三塁手の送球エラーによるもので、斎藤は討ち取っていた。松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)はディビジョンシリーズ第2戦で3安打を放ったものの、それ以外の3試合は12打数1安打に終わった。

田口壮のいたセントルイス・カーディナルスは、サンディエゴ・パドレスを退けたのに続いて、ドジャースを破ったニューヨーク・メッツと、ヤンキース(とオークランド・アスレティックス)を破ったデトロイト・タイガースを倒し、ワールドチャンピオンに輝いた。最初の2シリーズで、田口は計11試合中7試合に出場した。いずれも試合途中から出て、4打席4安打。ディビジョンシリーズ第3戦の代打本塁打を皮切りに、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第2戦で同点の9回表にビリー・ワグナーから本塁打を放つと、第4戦のヒットを挟み、第6戦にもワグナーからタイムリー二塁打を打った。ワールドシリーズは先発出場が3試合、途中出場が1試合。このシリーズは11打数2安打だったが、送りバントを2本決めた。第4戦は1点を追う無死二塁の場面で代打として登場し、初球を転がして成功。これを拾った投手の悪送球により、走者は同点のホームを踏んだ。第5戦の送りバントは無死一塁の場面。こちらも初球で、先制点につながった。

2007年/松坂大輔(ALDS,ALCS,WS)、岡島秀樹(ALDS,ALCS,WS)、松井稼頭央(NLDS,NLCS,WS)、松井秀喜(ALDS)、井口資仁(NLDS)

松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)がディビジョンシリーズ4試合で打ったヒットは、第3戦の2本だけ。5四球(敬遠1)があり、出塁率は.438を記録したものの、外野へ飛んだ打球は、2安打を含め皆無だった。井口資仁は7月下旬にシカゴ・ホワイトソックスからフィラデルフィア・フィリーズへ。移籍の理由となったチェイス・アトリー(現ロサンゼルス・ドジャース)が8月下旬に復帰したため、ディビジョンシリーズでも出番は少なかった。3試合とも代打で、四球、四球、遊撃フライ。第2戦はそこから三塁を守ったが、守備機会はなかった。フィリーズは松井稼頭央(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)のいたコロラド・ロッキーズに、3連敗のスウィープを喫した。

松井稼頭央はディビジョンシリーズ3試合に「1番・二塁」として出場し、12打数5安打、出塁率.500。第2戦は二塁打、逆転グランドスラム、タイムリー三塁打の3安打、第3戦は内野安打とタイムリー三塁打を放った。計2本の三塁打はディビジョンシリーズの年間最多記録(2011年にラファエル・ファーカルも2三塁打)。第3戦の7回裏、2死二塁の場面では、オンデック・サークルにトロイ・トゥロウィツキ(現トロント・ブルージェイズ)がいたにもかかわらず、敬遠四球で歩かされた。リーグ・チャンピオンシップシリーズは4試合とも「2番・二塁」、ワールドシリーズは第1、2戦が「2番・二塁」、第3、4戦は「1番・二塁」。両シリーズとも出塁率は2割台だったが、リーグ・チャンピオンシップシリーズでは第1戦と第4戦にタイムリーヒット、ワールドシリーズでは第3戦に3安打を記録した。

ロッキーズが敗れたボストン・レッドソックスには、松坂大輔(現・福岡ソフトバンクホークス)と岡島秀樹(現・横浜DeNAベイスターズ)がいた。松坂はディビジョンシリーズ第2戦、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第3戦と第7戦、ワールドシリーズ第3戦に先発。すべて6イニング未満だったが、チームは3勝を挙げ、後ろの2試合は松坂に白星がついた(2登板目は黒星)。松井稼頭央との対戦は3打数1安打。岡島は、松坂が登板した4試合を含む8試合に登板し、最初の6試合は計9.2イニングを投げて失点を許さず、引き継いだ走者を生還させることもなかった。イニングまたぎも5試合。一方、残る2試合はどちらも本塁打を浴び、1点差に詰め寄られた。この2登板を含め、4ホールドを記録。松井稼頭央とは1度対戦し、三振を奪った。

2008年/岩村明憲(ALDS,ALCS,WS)、松坂大輔(ALDS,ALCS)、岡島秀樹(ALDS,ALCS)、黒田博樹(NLDS,NLCS)、斎藤隆(NLDS)、田口壮(NLCS)、福留孝介(NLDS)

福留孝介(シカゴ・カブス/現・阪神タイガース)はディビジョンシリーズ3試合で10打数1安打。最初の2試合は8打席で4三振を喫し、第3戦は途中出場となったが、黒田博樹(ロサンゼルス・ドジャース/現・広島東洋カープ)からヒットを放った。黒田は福留に打たれて降板するまで6.1回を無失点に抑え、リーグ・チャンピオンシップシリーズでも第3戦に先発。7回表に2点目を失うまで投げ、ディビジョンシリーズに続いて白星を挙げた。こちらでは、6回表に田口壮(フィラデルフィア・フィリーズ)を遊撃ゴロに討ち取った。黒田とチームメイトだった斎藤隆は、ディビジョンシリーズ第2戦の9回裏に登板。二塁打2本を含む3連打を浴びて1死も取れずに降板し、リーグ・チャンピオンシップシリーズはロースターから外された。田口は黒田と対戦した打席を含め、すべて代打で4打席とも凡退。前後のシリーズでもロースターに入っていたが、出番はなかった。

松坂大輔(ボストン・レッドソックス)はディビジョンシリーズ第2戦、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第1戦と第5戦に先発。最初と最後の登板は5イニング以下で3点以上を失ったが、2登板目は8回裏に無死一、二塁の場面で交代するまで無失点に抑え、白星を挙げた。3試合とも松坂に続く2番手として投げた岡島秀樹は、他にも5登板。2失点はあったものの、リードした場面で登板した4試合はすべてホールドを記録し、同点あるいはビハインドからの登板で点差を広げられることもなかった。

岩村明憲(タンパベイ・レイズ/現・福島ホープス選手兼監督)はチームのポストシーズン16試合すべてに「1番・二塁」として出場し、ディビジョンシリーズ第1戦からリーグ・チャンピオンシップシリーズ第3戦まで7試合連続安打。ディビジョンシリーズは第1戦にタイムリー三塁打、第2戦に逆転2ラン本塁打、第3戦に先制タイムリーヒットを放ち、リーグ・チャンピオンシップシリーズでは好守も披露。第7戦は9回2死からゴロを捕って自ら二塁を踏み、リーグ優勝を決めるウィニングボールを手にした。松坂との対戦は7打席で2安打、2四球。岡島とは1度だけ対戦して二塁ゴロ。岩村はワールドシリーズで、第1戦にタイムリー二塁打を含む3安打、第5戦に2安打を打ったが、その間の3試合は、12打席に立って四球で1度出塁したきりだった。

2009年/松井秀喜(ALDS,ALCS,WS)、黒田博樹(NLCS)、斎藤隆(ALDS)、岡島秀樹(ALDS)

ともにボストン・レッドソックスにいた斎藤隆と岡島秀樹は、ディビジョンシリーズでそれぞれ1登板。斎藤は第1戦の7回裏、無死満塁から登板し、最初の打者を5-2-5の併殺打に仕留めたものの、ケンドリス・モラレス(現カンザスシティ・ロイヤルズ)にタイムリーヒットを浴び、続く打者にもヒットを打たれた(モラレスが本塁でアウト)。岡島の登板は第3戦の9回表。ジョナサン・パペルボン(現ワシントン・ナショナルズ)が逆転を許し、なおも2死一、二塁の場面でマウンドに上がり、モラレスをレフトフライに討ち取った。黒田博樹(ロサンゼルス・ドジャース)はリーグ・チャンピオンシップシリーズ第3戦に先発。1回裏にジェイソン・ワース(現ナショナルズ)の2ラン本塁打を含む4安打を浴びて4点を失い、2回裏に二塁打、送りバント、二塁打で5点目を許したところで降板した。

松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)はディビジョンシリーズ第1戦に2ラン本塁打、リーグ・チャンピオンシップシリーズ第1戦にタイムリーヒットとタイムリー二塁打、第5戦にタイムリーヒット。ワールドシリーズでは、第2戦にペドロ・マルティネス(フィラデルフィア・フィリーズ)から勝ち越し本塁打を放ち、DHがないため代打出場となった第3~5戦は、本塁打、遊撃フライ、ヒット。王手をかけた第6戦に、再びペドロから先制2ラン本塁打とタイムリーヒットを打ち、さらにタイムリー二塁打も加え、ワールドシリーズの1試合最多記録に並ぶ6打点を挙げて、シリーズMVPを受賞した。

日本人メジャーリーガーのポストシーズン出場その1:1995~2004/初出場は野茂、野手初はイチロー

もしかすると、今年のポストシーズンに出場する日本人メジャーリーガーは皆無かもしれない

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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