緊急事態宣言延長から2週間 ラーメン店経営者のリアルな叫び
緊急事態宣言延長から2週間を超えた
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、1月8日から埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の1都3県で、14日からは栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の7府県の計11都府県に対して緊急事態宣言が発出された。当初は2月7日までの1ヶ月間の予定だったが、栃木県を除く10都府県に関しては解除が見送られて期間が延長され、今現在も緊急事態宣言下による緊急事態措置が取られている。
昨年4月に続く二度目の緊急事態宣言。特に今回は「飲食を伴うものを中心として対策を講じ」るとし、「飲食につながる人の流れを制限する、飲食店に対する営業時間短縮要請」がなされている。具体的には「飲食店やカラオケボックスなどへ、営業時間の短縮(営業は20時まで、酒類の提供は11時から19時まで)」が要請され、原則として要請に応じた飲食店などには1日6万円の協力金が支払われる。
さらに13日からは「新型コロナウイルス対策の改正特別措置法」も施行され、それに併せて新設された「まん延防止等重点措置」では、必要な対策として手指の消毒設備の設置、施設の消毒、店舗の従業員への検査勧奨、発熱した人やマスク着用などの対策を取らない人への入店禁止措置などを規定した。
長引くコロナ禍によって、飲食業界では閉店や廃業が相次ぎ、雇用も守れなくなっている。さらに食材の生産者をはじめとする取引業者や流通業者にもダメージを与えており、その経済的損失は膨大だ。この状況下において、飲食店経営者はどういう思いで日々の営業を行っているのか、1月に緊急事態宣言へ突入した時にリアルな声を聞いてこの場で公開したが(関連記事:緊急事態宣言再発令から3週間 飲食店経営者のリアルな叫び)、今回はその第2弾として、ラーメン店経営者に絞って率直な意見を聞いてみた。今、ラーメン店主たちは何を思い、何を考えて営業をしているのだろうか。
『らーめん一辰』:どんな状況でも選ばれる店にならなければ
東京亀有に2019年オープンした人気店『らーめん一辰』(東京都葛飾区亀有3-10-11)を営む赤澤俊治さんは、昨年の緊急事態宣言下においても今回も時短営業要請に従い、感染拡大防止への意識を高く持って営業を続けている。
「ラーメン店の場合は、マスクを外して長時間話したりするお客様はほぼいないので、他の飲食店と比べれば感染リスクは低いかと思いますが、感染のリスクはどこでもあるので可能性がある限り安全だとは言えません。当店では客席の数は通常の半数に減らして、席間を開けるようにしています。さらにより換気が出来るようにと、新しく換気口も作りました」
補償などにある一定の評価はしつつも、国や地方自治体への思いは複雑だ。
「全体を考えて決められたことなのでしょうから、基本的には従うまでです。飲食店への重点的な施策に関しても、感染が多いということなのであれば仕方がありません。しかしやるからにはしっかりと結果に繋げて欲しいと思っています。緊急事態宣言後、外食に対して「ランチも自粛を」と呼びかけるくらいならば、最初から「休業要請」を出してほしかったです。延長決定も正直中途半端に感じてしまいましたし、早く解除はして欲しいと思う反面、解除してダメで再宣言でもされてしまったらさらに苦しくなると思います。また、私たち飲食店は補償が少なからずありますが、取引業者さんは飲食店の休業や時短営業の影響をもろに受けているので、そちらもきちんと補償して欲しいです」
コロナ禍で客足が伸び悩む中で、それは自分にも責任があると赤澤さんは語る。
「こんな状況であっても流行っているお店はお客さんが来ています。お客さんが少なくなっているのは、自分の店に人気がないからとも言えます。商品を高めて美味しい物を美味しそうに、魅力をしっかりと伝える。デリバリーやテイクアウトを進めつつ、店内での飲食をさらに魅力のあるものにしていかなければいけないと思っています」
『麺家あくた川』:人は必ず人の温かみを求めてくる
2016年の創業以来、京都を中心に着実に店舗展開を続けている『麺家あくた川』(株式会社ARK HERO'S:京都府京都市上京区)。代表取締役の芥川英司さんは、国や地方自治体の補償については評価している。
「店舗の規模によって不公平感はあると思いますが、基本的には手厚い補償であると考えています。休業要請となると話は別ですが、現状一日6万円の補償があるので時短要請には応じています。大学生客が多いこともありますが、中休みを無くして通し営業にすることで、売り上げに関してもそこまでは落ちていない状況です。ただ、私たちラーメン屋は業者さんがいなければ成り立たない業種ですので、店舗同様に取引業者さんにも手厚い補償があれば良いと思います」
その一方で政府などの注意喚起に関しては気になるところもあるという。
「ラーメン屋の場合はカウンターが主体の店が多く感染リスクは低いと思いますし、長時間滞在もないので話しながら食べるような業態ではありません。飲食店をまとめるのではなく、業態によっては比較的安心であるなどのアナウンスをして頂けるとありがたいのですが」
芥川さんはコロナと共存する時代になっても、根本的なスタンスを変えることはないという。
「コロナと共存する時代になると、今までよりは人との距離が離れてしまうのではないかという懸念はあります。しかし僕自身は人は必ず人の温もりを求めるものだと思っていますので、今までやってきた接客やおもてなしをさらに継続して続けていきたいと考えています。同時に直接会わなくても人の温かみを感じられる新しい戦略も今後実行していきたいと思っています」
『焼きあご塩らー麺たかはし』:これからも変わらず攻め続けていく
2012年の創業以来、東京ではあまり馴染みのなかった高級食材「焼きあご(トビウオ)」をラーメンに使って一躍「あご出汁ブーム」を興し、東京や神奈川に出店攻勢を重ねている『焼きあご塩らー麺たかはし』(株式会社ヒカリッチ アソシエイツ:東京都中央区)。代表取締役の高橋夕佳さんは現状をこう語る。
「ラーメン店は保健所の濃厚接触の定義には当てはまらないので問題はないと考えています。政府の要請に関しては、シンプルに補償が出されるのであれば時短要請には応じますし、出されないのであれば営業せざるを得ません。中間業者へも支援があって良いと思いますが、全員に公平な補助は不可能なので、審査の工数を省いて機械的にばら撒くのも必要と思っています。過剰にもらったと認識している人は、困っている人に寄付するか、貯めずに使って経済を回しましょう。今後も変わらずに攻め続けていきます」
『麺屋武蔵』:キーワーカーの為にも飲食店の営業は必要
1996年の創業以来、店舗ごとに異なる味とコンセプトで15店舗を展開。25年ものあいだラーメン業界を牽引し続けている『麺屋武蔵』(株式会社麺屋武蔵:東京都新宿区)。代表取締役の矢都木二郎さんに現在の営業状況を聞いた。
「昨年4月の緊急事態宣言の時から、麺屋武蔵では国の要請に従い時短営業しております。今回の時短営業に関しましてはデリバリー、テイクアウトはOKとの事なので、20時以降もデリバリー、テイクアウトのみ営業しております」
国や地方自治体の補償に関しては、柔軟性のある対策があればと考えている。
「正直、個人店舗に関してはかなり手厚い補償だと思います。その反面、ある程度規模が大きいデカ箱のお店に関しては、家賃や人件費がかさむ為、1日6万円では足りないかと思います。飲食店からの感染が多いという専門家の見解なので、そこを重点的に抑制していくという対策は間違ってないのでしょう。しかしながら、ラーメン店の場合はカウンター、テーブルによって安全性はかなり変わるにせよ、1名様のご来店が多いので比較的安全な方では無いかと思いますし、『飲食店』を一括りにしない事が重要かと思います。例えば、カウンターのみのラーメン店や牛丼店などの1名様での利用が多い、比較的安全性の高いお店は営業をし、居酒屋などどうしても感染リスクが高い業態は時短ではなく休業を要請して、その分しっかりと補償する事が、個人的には一番有効で合理的ではないかと思っています」
矢都木さんは今回のコロナ禍で飲食店の必要性を改めて感じたと語る。
「20時以降に、タクシードライバーさんなどがテイクアウトでラーメン買って、車で食べているのを見ると、とても悲しい気持ちになります。そのようなキーワーカーの方々の為にも、飲食店が開いている事は重要なのではないかと思います」
東京、神奈川などの一都三県を除く地域に関しては、2月中にも緊急事態宣言が解除される動きも出てきた。しかしながら、飲食店への客足がすぐに戻るとは考えにくく、しばらくの間は厳しい状況が続いていくだろう。一日も早く新型コロナウイルスの感染が収まることを祈りつつ、今後も飲食店の取り組みを伝えていきたい。
※写真は筆者によるものです(出典があるものを除く)。
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